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Shadow Heaven  作者: Day and Buffalo
6/12

6話 Noisey Rabbit

キョウヘイたちはマナコに連れられキャバレーに着いていた。


夕暮れのキャバレーは1日の始まりを連想させていた。


看板にはメチルと書かれている。


「ここがお母さんのお店だよ」


マナコが自慢そうにキョウヘイを見た。


3人娘はいつもの様に店に入っていった。


キョウヘイ達は互いに顔を見合わせ

深呼吸し店に入った。

大人の男3人が恐縮しながら店の中に入ると


店は居心地の良い作りになっていた。

木のカウンターは余裕を持ってお酒が置けるサイズで、木の色を残したまま自然の色味に床も木製だ。

何度もお酒を溢している為か木の床からは甘い香りがする。

基本は立ち飲みらしく胸より少し低い高さのテーブルが6つ程ある。

女うでひとつと言っていたがお店のサイズは中々大きく200名ぐらいは入りそうだ。


「マナコ~?」

奥の部屋から女性が忙しそうに顔を出しキョウヘイ達を見て眉をしかめた。


「マナコ、どちら様?」


マナコの母を前にして6人は問題に気づいてしまった。

自分達をどう説明をしたら良いのかがわからない。


子供達は松田の話を疑わずに信じてくれたが、普通は信じない。

ましてや音楽家として雇用を希望する人間がシェルターから来たと意味のわからない事を言う。そんな人間を雇う筈が無い。


「お母さんあのね、。」

マナコは緊張し言葉を捜していると

ミロクが口を開いた。

「おばさんお久しぶりです!」

「父ちゃんの弟達が旅をしながら音楽家していて、仕事を探しているのですが雇って頂けませんか?」


マナコの母はモーリを見て驚き

「タツキ君、、!?いや、、ちがうか、、。もしかして双子とか??」


モーリは突然ミロクに話をふられ脂汗を流している。

「あ、、いや、、双子って言うか、、なんと言うか、、。昔から離れて暮らしていたんですがね~」

「兄の訃報を聞いてこの町に来たん、、ですよ!」

「来たら素敵な町だったので仕事探しはじめまして~。」


モーリを見てマナコの母は懐かしそうにフフっと笑い

「随分ハイカラな髪型してるわね、、。よく見るとタツキ君とは違うわ。」

うれしそうにモーリに話しかけた。


「この紙に名前と何が出来るか記入してね、。私の名前はメチルよ。」

「この店、(キャバレーメチル)の社長、オーナーよ」

そう伝えると3人に軽くウィンクをして紙を渡した。


キョウヘイは紙を書くとマナコの母に渡しながら伝えた。

「僕はギターを演奏するのですがギターが壊れてしまいまして、、。」


メチルはキョウヘイのギターを見ている

「新品みたいじゃない。どうしたのよ?」


「音が出るんですが、音が出なくて、、」

キョウヘイがギターを弾くとシャランと小さく音が鳴る。


「ップ」

キョウヘイの困った顔を見るとメチルは噴き出した。


「キョウちゃん、あなた本当にギターリストなの??フフ。からかってるのね。」

メチルは店の奥から小型の箱を持ってきた。

「アンプはあるから使って良いわよ」


キョウヘイが驚いていると


「アンプは高価だから持ってない音楽家多いのよね。」

「一応、ドラムもベースアンプもあるわよ。」


6人は何を言ってるか理解はしていないが雇用して貰えそうな流れなので

ギターをケーブルでアンプという物に繋ぎ音を鳴らしてみた。


アンプのスイッチを入れると  ブンッ  とノイズ音が走り

アンプから空気の圧力を感じる。


危険な事をしている様な気分だ。


が、その緊張感は心地良く、キョウヘイの意識を殺し、

キョウヘイはギターを叩きだした。


この音は危険だ。この音は人の自由の到達地点だ。

感情の渦を制御しながら指を動かす。

夜道を走りだす様な感覚は、

その場にいる全ての人間を高揚させ圧倒させた。


「いい、、。」


メチルは、 ほぅっとため息をつき


モーリと松田に振り返った。

「早くバンドサウンドを聴かせて。」


「バンドサウンド、、?」

メチルが首をかしげる前に松田がまずいと気がつき

「ああ、久々の演奏で少し練習が必要なのでバンドサウンドは後日で」


「そう、、」

メチルは残念そうに呟いた。


「どっちがベースでどちらがドラム?」


聞きたれない単語だらけだが挙動不審になるわけにはいかない。


ベースという名前のサウンドからするに力仕事みたいだと思いモーリが口を開く

「俺がベースです。」

ドラムは名前的に気真面目な作業な気がするとモーリは直感で感じていた。

松田が勝手なモーリを見ている。


「モーリ君がベースで松田君がドラムね、、。楽しみだわ」


「朝なら練習で使って良いわよ。音量は気をつけて。」


「合格よ。」

「雇うわ。1回3000ロン食事と寝床つきでよいわね?」


その言葉に6人はパァっと笑顔になった。


同時に松田は不安になる。

バンドサウンドが分からない。ドラムとは?


松田は気づかれないようにナッキに

「バンドの事で話があるんだけど、」

ナッキは、松田の不安を察していた様で

ヒソヒソと

「今日テレビで放送する歌謡番組を一緒に見よう」

と松田に伝えた。



日が落ちるにつれて、バタバタとメチルは忙しそうに店の中を歩き回っている。


本日の演目は、漫才。特別出演にギターの流し


残念な事にミロク、ナッキ、マナコは家に帰される。

此処はキャバレー大人の遊び場だ。


ナッキたちは渋々と家に帰り、明日松田とテレビを見る約束をした。


モーリと松田の前にはお酒が出されている。

シェルターでも酒は飲めるが少量でアルコール度数3パーセントまでのお酒以外は認められない。


松田は上手そうにビールを飲む。

モーリは酒は好きではないので不味そうにチビチビ飲み、ミロクから貰ったうめぇ棒を旨そうに食べている。


その二人を恨めしそうにキョウヘイは見ていた。

初めての演奏を失敗するわけにはいかない。


死者では無い人間に音を聴かせる事は殆ど無い。

キョウヘイは緊張していた。


漫才が終盤に差し掛かると客はほろ酔いになり

テーブルのお酒がどんどん進んでいる。


キョウヘイは緊張しアンプのスイッチを入れアンプの空気の圧力を楽しんだ。


ガヤガヤと店がにぎわっている中、キョウヘイは一人音と向き合っている。


アンプからギターの音が鳴ると周囲の音が消え

キョウヘイの音をお客が見ている。



客たちは、しばらくすると興味を無くし酒と会話を楽しみだした。


その光景が信じられずモーリは歯を食いしばっていた。


シェルター世界でキョウヘイの演奏は選ばれた人間しか聴く事が出来ず、演奏を聴ける事は名誉な事だ。

その音を客たちは、味見をするかの様に聴き、すぐに酒の味に戻っている。


松田はだいぶ酔いがまわったみたいで座り込んでいる。


「歌を歌えよ!!つまんねーぞ!!」

客席から野次が飛び


モーリの怒りが限界に達した瞬間、

キョウヘイの前に酔っ払いの女がフラフラと突っ込んで行き

叫びだした。


キャバレーはパニックになるがキョウヘイはその状況を気にもせず演奏を続け


酔っ払いの女はその演奏に合わせて意味のない言葉をならべ、フラフラ踊っている。



その光景に客は野次や酒を忘れ魅入っている。


女の仲間達が女がステージに乱入している事に気づき女を客席に連れ戻した。


ハプニングはあったが客は最後までキョウヘイの演奏に魅入り

拍手をした。


酔っ払いの女は演奏が終わるとキョウヘイの元へ走りハイタッチをした。


そして、二人は顔を見合わせ叫んだ。


「あーーー!!!!!!」


酔っ払いはシェルターの女、レイコだった。

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