3話 Synchronicity or ill
町に帰ると、ちょっとした騒ぎになった。
倒れていた女性は外傷など無く無傷で気を失っているだけだった。
キシモトは警察やナッキの父と話し
春先のちょっとした冒険は終わりを向かえた。
女性の意識は中々戻らず1週間ほど過ぎているが
ミロク達はその事を気にもせずに学校の授業を受けていた。
一枚の写真を見るまでは。
小学校のチャイムが鳴りいつもの会議が始まる。
「ねえねえ。」
「前の牛時山の写真が出来たから一緒に見ようよ」
ナッキは目を爛々とさせてミロクとマナコに声を掛けた。
自分達の偉大な冒険を写真を見ながら語り合う寸法だ。
「みたい!みたい!」
ミロクもマナコも目を爛々と輝かせてナッキの机の前に集まってきた。
基本は風景の写真だがみんなで歩いた道やうめぇ棒を食べている写真など、
少女たちが大冒険を語るにふさわしい写真の数々だ。
だが、女性の倒れている写真から一度手を止める事になる。
洞穴が映っていないのだ。
「ねえ」
ナッキとマナコが顔を見合わせている。
「うん」
「確か洞穴があったはずだよね。」
背筋が冷たい。
ナッキは1枚の写真をみて震えてる。
「この写真、、。人が映ってる、。」
女の遠くに3人の人影が写真に写っている。
ミロクはその写真の何かに気がつき唖然とした。
「ミロクちゃん?大丈夫?」
マナコが心配そうにミロクを見ている。
「大丈夫だよ、。」
ミロクは心配するマナコとナッキを見てニッと笑う。
「帰りにうめぇ棒買って帰ろうよ」
「ミロク、、。」
ナッキは心配そうにミロクを見ていた。
夕暮れ時にミロクはランドセル沢山にうめぇ棒を入れて家に帰ってきた。
ランドセルから家の鍵を出し家の中に入る。机の上にはいつもの食事が用意されていた。
空腹を忘れるほどミロクは放課後に見た写真が目に焼き付いていた。
「ナッキとマナコには言えなかったけど、あの写真に写っていた3人の人影の1人は父ちゃんだった。」
夕食を食べた後ミロクは家族が寝た事を確認し夜の世界へと駆け出した。
牛時山へ向かう為にミロクはマナコに借りた懐中電灯とランドセル一杯のうめぇ棒と水筒を持っている。
普段は怖がりでナッキの怖い話で寝れなくなるミロクが夜の山に入る事はありえない。
だが今は写真に写った父の影が本物か確かめたい一心で山の中を歩いている。
家族に心配をさせてはいけないので朝になる前に確認をしたい。
前回と同じように夜の山道を歩いていると気配を感じ歩くのを止めた。
夜の月明かりに梟の鳴き声や虫の羽音がミロクを現実へと戻した。
突然の恐怖から我に返り自分の現状の危険さに気づき歩けなくなっている。
「父ちゃん、、怖いよ、、。」
涙が出そうになりながら家に帰る方法を必死に模索している。
ツンっと腐敗臭がしてきた。
何かが潜んでいる、。
肌寒い春先の夜風なのに脂汗が止まらない。
臭いに顔をしかめると暗闇の草が動き人影が見えた。
「ひっ!」
声に気がつき人影が近づいて来た。
「だれだ、、?子供、、??」
気を失う前にミロクが見た光景は、恐怖の為か何故か三つ編みおさげ姿の父だった。
フッと気がつくとそこには3人の男が立っていた。
帽子をかぶったやさしそうな男がゆっくりと声を掛けてきた。
「脅かしてごめんね。大丈夫かな?」
ミロクは無言で頷いた。
「ほら、モーリお前も謝るんだ。」
「申し訳ない、、。」
三つ編みおさげ姿の男は申し訳なさそうに謝っている。
「父ちゃんだよね??」
ミロクはおさげの男に問いただした。
三つ編みおさげ姿モーリは驚き声を荒げた。
「父ちゃん??!!」
ガタイの良い男が動揺しあたふたしている。
「俺は結婚してねえぞ!未婚だ!」
「ウソ!絶対父ちゃんだよ!」
ミロクは父の写真を帽子姿の男に見せる。
帽子の男は写真をマジマジと見て言葉を詰まらせている。
「に、似ているな。」
写真には坊主姿のモーリが映っている。
「松田~、。そんなまさかよ、。」
モーリは恐る恐る写真を見る。
「俺、、?似ているな、、。確かに。」
松田と呼ばれた男ともう1人の顔の綺麗な男は笑ってる。
「嬢ちゃん、申し訳ないが俺は父親じゃ無いよ。」
「ここがどこかもわかってない男だしな~、。」
「どういう事?」
ミロクはモーリに質問した。
「んー、、。なんて説明したら良んだ、?」
モーリが困惑している。
話しが苦手なモーリ。
ふーっとため息をつき、
帽子の松田が自分たちがどこから来たかを説明しはじめた。
シェルター世界の話を