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Shadow Heaven  作者: Day and Buffalo
2/12

2話 Downtown Hell

「ねえ。知ってる?」


「なになに~??」

小学校のチャイムの音が鳴り響く中、3人の女の子が噂話をしている。


「学校の裏にある、牛時山ぎゅうとやまがあるじゃん?」

「牛時山のどこかに洞穴があって、、」


「怖い話ならやめてよ??」

おかっぱ頭の女の子が不機嫌そうに伝えると

「え?違うよ!」

長い髪の女の子は大げさに首を振る。


一呼吸おいて、長い髪の女の子はおかっぱの髪の女の子に不機嫌そうに伝えた。

「ってかさ~、”ミロク”は怖がりすぎなんだよ~」


「だって”ナッキ”は、いつも怖い話ばかりするじゃん!」

長い髪の女の子”ナッキ”はフフンとミロクを見た。

「私は写真家になってお父さんの新聞に写真を渡すから、沢山のスクープを探しているのよ!」

「だから自然と怖い話も多くなるわよ。ね!マナコ。」

中分けの女の子”マナコ”にナッキは同意を求めた。


「ナッキちゃん、。」

マナコは困ったようにミロクを見た。


落ち込むミロクを見て、ナッキはしまったとミロクの肩を触る。

「ミロクごめん。」


「んー、平気だよ。」

「父ちゃんは子供を守る為に死んじゃったけど、みんな名誉ある事だって言ってた。」


放課後の井戸端会議の空気が暗くなりそうな前に、マナコがナッキに明るく話しかけた。


「で、、ナッキちゃん話の続きを教えてよ!」

3人は暗い空気を消すように話を盛り上げた。


「学校の裏にある、牛時山ぎゅうとやまのどこかに洞窟があってね。」




ー そこから願いを叶える歌が聴こえてくるんだって。 ー




「なにそれ?」っとミロクとマナコは笑った。



夕暮れの帰路からはカレーの香りや肉じゃがの香り

芋の香りは今の国を表している様なやさしい香りだ。


ミロクはぐ~っとお腹を鳴らして足を早めた。


ナッキが話していた、願いを叶える歌の事はミロクの頭をグルグルと駆け巡っているが

今はお腹の音を止める事が先決だった。


ランドセルについている鍵で家のドアを開け、机の上にはいつもの手紙と夜ご飯が置いてある。

ミロクは独りでご飯を食べると、願いを叶える歌を思いだしながら宿題をはじめた。



土曜日にナッキとマナコと探検に行こう。何もなくても良いじゃないか。

夏休みの自由研究の時に発表しても良い。無駄にはならない。

自分に言い聞かせ土曜日が来る事を心から待ちわびた。



土曜日になり、牛時山ぎゅうとやまへ3人の女の子とひょろっと背の高い男が顔合わせをしている。


マナコが恐縮しながら小声でナッキに質問する。

「この人誰なの??」

ナッキが呆れながら

「お父さんに今日の話をしたら、危ないからって取材名目で部下をおもりに呼んだの」


「うわぁ~」

マナコは公私混同しているナッキの父を思うと、なんとも言えぬ気持ちになった。


不穏な空気を読み取り背の高い男は笑顔で答えた。

「僕はナッキさんのお父さんの部下でキシモトって言います。」

「取材を兼ねて来ているので、みんなの邪魔をしない様にするから安心してね。」


「よろしくおねがいしま~す。」

3人は声をそろえた。


キシモトさんは感じの良い人だなっとミロクは思った。

「じゃあ、探検しようよ!」


ナッキは水筒とカメラを、マナコは懐中電灯と水筒、ミロクは駄菓子と水筒を持っていた。


春先の風は冷たいが心地よい。咽るような植物の匂いも風で飛ばされる。


4人は1時間ほど歩き回り、うめぇ棒と水筒でエネルギーを補給した。


「うわさの洞窟はどこらへんにあるって??」

キシモトがおしゃまな3人娘に世間話程度に聞いてみた。


ナッキは頭を傾け

「う~ん。ラジオだと腐った匂いがする場所に近づいて行くと洞窟があるって言っていたけどなー」


「へー。面白い放送があるね~。最近のラジオはビートルブの来日の事しか放送していないと思ったよ。ハハ」


ビートルブはヨーロップ国で大人気の4人組の音楽家で、世界を騒がせているグループだ。

日本の伝統興行しかしない筈の舞踏館で演奏をする事になり、日本で話題の中心になっている。


世間話をしていると突然の腐敗臭が

「臭い、、。何これ、、。」

ナッキが不機嫌そうに鼻をつまんだ。


ミロクはボーっと臭いの先を見ている。




「ちょっと、、」


「うそでしょ」


4人はバラバラのところを見つめている。

共通しているのは4人が驚き背筋が凍っている事だろう。


あんなところに洞穴なんてあったか?


そして、ひとつのところに視点が集まった。

洞穴の前に女性が倒れている。死んでいるのか。腐敗臭は女性からか。


混乱の中、キシモトが口を開く。

「みんな、しばらく後ろを見ていて。」


キシモトが女性のところへ駆け寄った。

この腐敗臭だ、子供に見せるべきでは無いと判断し、恐る恐る女性の顔を見た。


驚いた事に女性は腐敗していない。美しい状態でキシモトは一瞬心を奪われた。


口に手をあてると息はある。


女は生きている。


キシモトは女性に怪我が無いか確認すると、女性を背負い子供達に指示を出した。


「一度町に戻るよ!落ち着いて自分から離れないで!」


嫌な予感がする。女性が何故倒れている?

事件か?害獣かそれとも人間にやられたのか?

キシモトは混乱しながらも子供達を安全に町に返す為に試行錯誤し、


3人の女の子達は


ナッキは夢中で辺りの写真を撮り、マナコは真昼間から懐中電灯を照らし、ミロクは突然現れた洞穴から聞こえてきた懐かしい声に言葉を詰まらせていた。

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