11話 The Soft End After the Mine of Love
シゲルは口を開いた。
「俺は、この300年程人を殺し続けて生きている。」
「お前らみたいなシェルターから出てくる人間を、、。」
重い沈黙が続いた。
キョウヘイが重い空気の中確認をした。
「なぜレイコちゃんを殺さなかったの?」
「・・・・・・・」
シゲルは申し訳なさそうに目を伏せた。
「レイコさんを殺そうと気絶させた。いつも薬で眠らせてから殺す様にしている。」
「バットでとどめを刺そうとした時に突然、レイコさんの持つラジオから音が流れたんだよ、、。」
「いつもの民間放送をキャッチしたのかと思ったが、普段の音とは違った、、。」
「でも聴いた事のある音だった、。」
「父がいつも歌ってくれていた歌だった、、。その音に反応したレイコさんがハミングをしはじめた。」
「レイコさんが眠りながら呟いたメロディーが、遠い昔の母の歌声が聴こえた気がしたんだ、、、。」
「その歌声を聴いていたら自分が今までしてきた事に対して、父からのメッセージの様な気がした。」
「しばらく何も出来ず動けなかった、、。気がついたらレイコさんは自分の前から消えていた、、。」
シゲルは涙を流し出した。
涙を流すシゲルにモーリはゆっくりと確認する。
「俺らには気づかなかったのか?」
シゲルは何も言わず首を振った。
「気づいていない訳ではなかったが、レイコさんを探していたんだ。」
「レイコさんが消えてから、ずっと、レイコさんを探していた。」
「もう一度会いたい。歌声を聴きたいって気持ちと、、、。」
シゲルは困惑し暫く無言になり、ゆっくり感情を吐き出した。。
「自分にも資料で見た父と同じ様に障害が発生したのかも知れない。」
「彼女の歌声を聴きたい気持ちと同時に、、」
「今までのようにシェルターから出てきた彼女を殺さなきゃとも思った。」
「俺に障害が発生している。」
シゲルは頭を掻き毟る。
「もう一度父の、、母の歌を聴きたかったのかもしれない。」
罪悪感と復讐心との葛藤を長い年月続けた結果、人間だったシゲルの脳は感情や思考を停止していた。
だが、レイコの歌声でシゲルは人間の感情を取り戻しつつあった。
「俺にはもう何もわからない、、。」
座り込むシゲルを見て誰も声を出せずに時間だけが過ぎていった。
シェルターの先祖達は、
世界を救ったMCY-9002とシゲルや生き残った人々をシェルターの中に入れず
上流階級の人間たちで独占した。
シェルターの先祖達は、安全と言う名の牢獄に入り世界の終わりを待っていたのかも知れない。
安全を得られず、自分達で道を切り開いた人間たちの証がこの町だった。
今からシェルターの人間たちと町の人間が共存出来るのか。
安全を奪った自分たちが安全になったからと言って外に出て来る事が許されるのだろうか。
誰も答えを出せなかった。
重い沈黙の中、音楽が流れてきた。
キョウヘイがシェルターの楽器を手に取り死者への曲を演奏し始めた。
レイコに向けた曲と同じ曲だ。
世界に答えがあるのか、歴史に答えがあるのか。
答えは誰も分からないが、その音は、空間を彩り、愛を溢れさせた。
旋律が優しく時代を駆け巡り、答えの無い世界へと解き放たれ、
その音は無意味で答えが無い何かを表しながら彷徨い、混沌とした心を癒したのだ。
答えが無い何か。
音楽とは”何か”、その答えがわからないまま音楽を愛し必要とする。
音楽に価値があるのか、無いのかもわからない。
答えの無い美しい”何か”を、世界は必要としているのかも知れない。
キョウヘイの演奏が終わり
シェルターの4人とミロクはシゲルの側から一旦離れ、町へと歩き出した。
キャバレーメチルへ着くと、メチルに町を離れる旨を伝えた。
メチルは一瞬驚いたが、芸人たちが移りゆく人種なのを理解している。
寂しそうな表情をし笑顔で松田達を抱きしめた。
レコード会社のヨウヘイは彼等と作品を作る為の用意をしている。
松田はヨウヘイの契約書にサインをしアルバムを創る約束をした。
キョウヘイは、ヌクと遊ぶレイコを見ながら作曲をしている。
自分達が今からするべき事は決まっている。
シェルターの4人はすべき事を使命や仕事と言い表したくなかった。
自由に生き抜く事。すべき事は”遊び”と表現する事に決めていた。
レイコはヌクを追いかけながらこれから沢山、旅をする事に興奮し美しい日々を愛しく抱きしめた。
4人の最初の遊びは決まっている。
モーリは落ち込むミロクと話していた。
「父ちゃん、、。シェルターに帰っちゃうの?」
モーリはミロクの顔を見れず足元を見ている。
少しの沈黙の後、モーリはミロクを見つめた。
「父ちゃんな、、、。」
「ずっと葬儀屋になりたかった。でも、才能が足りなくて死体を運ぶ人間になっていたんだよ。」
モーリは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「自分が本当にやりたい事から逃げてな、何かと戦う事も出来なかった。」
「でもな、自分の命を捨てて、外の世界に出て広い世界を見たらよ。」
「楽器を演奏する事が出来た。沢山の人に喜んでもらったんだよ。」
モーリは思い出した様に語った。
「今までは、ずっと人に言われた自分で生きてきたんだ。」
「社会の中では間違ってないのかも知れないが」
「でも俺は、生きる意味がわからないまま、息をする事さえ辛い日々を過ごしていた。」
「安全に生きれる天国は、社会を守っても、人間らしく生きる日々を守ってくれなかったんだよ。」
「父ちゃんは、これからの人生は愛を探す日々を選んで生きたい。」
「じゃあ、、じゃあ、こっちで探せば良いじゃん!!」
鼻水でグジュグジュになったミロクをそっと抱きしめて肩車する。
モーリは、ミロクを肩車したまま走る。
「ふー、、。」汗をびっしょりかきミロクを降ろした。
汗でグジュグジュになったモーリはニッと笑う。
「シェルターは死者の集まりさ。」
「俺の元々の夢は葬儀屋で、死者に向けて音を弾く事だ。」
いつか、シェルターの世界と外の世界の音が交わることを信じて。
「でも、夢を叶えたら、、、。新しい夢を見ないとな、、、。」
蒸し暑い日々が続く。
蝉が鳴き、子供達はアイスを捜して走り回る。
町の隅々からほんのり香るスイカのにおいが心地よい。
「ミロクちゃん、レコード会社のヨウヘイさんからLPが届いたよ」
ナッキとマナコが走っている。
ミロクは2人と一緒に喜びキャバレーメチルに走り出した。
音楽を聴くのはキャバレーメチルと3人は決めていた。
ねえ知ってる??
牛時山の話し。
なに、??
牛時山を歩いていると突然大きな叫び声や歓声が聴こえて来るんだって
なにそれ!
山が揺れてるって思う程すごい歓声で
すごく良い香りがするんだって、、。
その香りに誘われて歩いて行くとバットを持った変なおじさんが踊ってるんだって
ホームレス的な、、???
そうかもね(笑)
その仲間の中に驚くほど綺麗な女の子とイケメンが2人いて
三つ編みの変な髪形した男がお酒飲んでいるらしいよ。
そこで3人の美少女も一緒に遊んでるんだって、、!!
美少女って(笑)
おわり
ここまで読んで頂き心から感謝します。
2018年2月頃にDay and Buffaloの
最新のアルバムが発売されます。
LPです。タイトルはThe Soft End After the Mine of Loveです。
2曲が先行発売
違う世界の平日
https://itunes.apple.com/jp/album/id1304793905?app=itunes
海を見たい
https://itunes.apple.com/jp/album/%E6%B5%B7%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%81%9F%E3%81%84/id1304796405?i=1304796411
いつまでも、遊びの時間が続きますように