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Shadow Heaven  作者: Day and Buffalo
10/12

10話 MC

サイレンが鳴り響く


町中から悲鳴が上がる。

暴動が起きて犯罪を犯す者もいれば、只々神に祈る者もいる。



人間達は自分たちで生きる事を止め、

機械に自分達の生活を守られ日々を過ごし、

どのくらいの年月が経ったのだろうか。


ユーザーによって使用用途や容姿までも変更できる

人口知能の搭載された汎用型アンドロイド、MCYシリーズの普及により、

人間の生活はより機械に頼ったものになっていった。


話の中心となるアンドロイドMCY-9002の初めての任務は、ユーザーの父親の代わりになる事だ。



派遣先の望月家では、一家の主が妻の妊娠中に事故に遭い、他界している。

出産後の父親の代わり、家の周りの世話役として

故人のご主人の容姿に変更され望月家を支える事になるが、自分には簡単な仕事だった。


自分は産まれてまだ間もないので、データを元に行動する事しか出来ないが

出産前の妊婦のデータも揃っている為、奥様の世話は簡単だ。


普段から奥様を気遣いながら完璧な仕事をしているが

奥様はよく苦笑いをしている。その苦笑いの意味は自分にはわからなかった。


もうすぐ奥様から子供が産まれる。

【出産前、あるいは最中に羊膜が破れ、羊水が出ることを破水はすいという。出産後、胎盤等が排出されることを後産あとざん・のちざんという、、、、、】

データの復習をし、いつ産まれても良いように準備をしている。


奥様はおなかの子供に音楽を聴かせたり、歌を歌ったりしている。

その意味は自分にはわからないが、音楽は心地良い。

ただ、奥様の歌は音程が外れたりするので、その旨を丁重にお伝えしている。


奥様が倒れた。


緊急に手術が必要だ。

奥様は、生命の維持が難しい様だ。


奥様に子供の事を頼むと言われたので、それが自分の新しい任務になる。





オギャー、オギャー




産まれた赤ん坊が泣いている。


産まれた赤ん坊を優しく抱きしめる。

何故だろうか、。

感情機能を制御しているCPUが暴走している。


奥様は眠る様に息を引き取った。



赤ん坊が産まれると同時にアンドロイド達の大規模なテロが始まった。


前日からデータ共有が出来ていたので、内容は理解している。

核爆弾を落とす。アンドロイドはシェルターに逃げそこで新たなアップデートを完了させ

世界中が汚染されるであろう放射能を除去し、地球を元の世界に戻す。


奥様に託された赤ん坊を抱きしめシェルターに向かった。


人間の赤ん坊をシェルターに入れる事を拒否された。


奥様から預かった赤ん坊の生命活動を停止させようとしてくるアンドロイド達から逃げだした。


奥様からの任務を遂行する為には、

核爆弾や放射能から赤ん坊を守る必要があり、

自分はシェルター内のアンドロイド達を廃棄にする為、アンドロイド達との戦闘を開始した。


そして暴走するアンドロイド達を廃棄する事に成功したが、

全ての核爆弾を止める事は出来なかった。


人類は滅亡を免れたが、世界中に放射能は蔓延した。


赤ん坊を連れてアンドロイド達から奪還したシェルターに逃げようとしたが、

王族や上流階級の人間達が占領し、

赤ん坊をシェルター内で保護して貰う事が出来ない。


強制的に保護させたいが、

自分の中のプログラムは正常に機能している為、人間に危害を与える事は出来ない。


生き残りの人間達(殆どが少年少女)と

赤ん坊を育てる為、シェルターの近くに町を作る事にする。

万が一、自分の機能が停止した時に成長した赤ん坊や子供達ならシェルターに入れて貰えるかも知れない。


放射能に汚染された体を正常にする為の装置を製造しながら子育てをはじめた。

夜になると赤ん坊は不安だと涙を流す為、思考錯誤する。

奥様が良く歌を歌っていた。それを思い出し歌を歌う。

奥様のデータしか無い為、上手く歌えないが赤ん坊は喜び眠りについた。


この頃には赤ん坊は3歳になり、データの処理が追いつかない様な動きをはじめる。


赤ん坊と呼ぶには成長しすぎた為、名前をつける事にする。


資料を読んでいる途中に声が聞えてきた。


「俺の名前は、シゲル。そこに書かれているMCY-9002に育てられた赤ん坊だ。」


暴漢のシゲルは、レイコたちを真っ直ぐ見ている。


松田が口を開いた。

「俄かには信じれないな。」

「この資料のまま信じたとしても、何世紀も前の話の筈だ。」


演奏から日が明け、シェルターの4人とシゲル、それにミロクは初めに出会った廃墟のビルで話している。

ミロクは連れて来る筈ではなかったが、モーリ達と会う事が出来なくなる不安から傍を離れようとしなかった。


松田の問いに対しシゲルは口を開かない。


資料の続きに目を通した。




シゲルや子供達が次第に衰弱をしていくのがわかる。


食事を与えているが、放射能の汚染状態が深刻な問題になっている。


放射能を除去する装置を完成させるまでまだ時間が掛かる為、

子供達を人工冬眠コールドスリープさせる必要がある。


人工冬眠コールドスリープの装置は戦前のものがある為、比較的すぐに子供達を眠らせる事が出来た。

シゲルが泣いている姿を見て、何故か、、、

表現が難しいが思考が遮られる。締め付けるような障害バグが発生しているが

今は放射能を除去する必要がある。


長い年月が経った。


放射能レベルが落ち着き子供達を起こす事にした。

放射能を除去する装置も完成した為、子供達を正常な状態にする事が出来た。


だがシゲルを起こす事は出来なかった。


自分に発生した障害バグの修復が出来ないからだ。

子供達と町の復興をはじめた。


子供達は自分を父として接してくれた。

その際に再度赤んシゲルと離れた時と同じ様な障害バグが発生し、

奥様と離れた時のCPUの暴走とは別の障害バグだと理解する。


子供達を見て、この子達と離れたくないと思う。

この障害バグが感情と呼ばれる感覚なのか。


その日にシゲルを起こした。


町が復興してくると同時に子供達は大人になってゆく。


子供達と別れたくない為、

密かにアンドロイドにする装置も開発してみたが止めた。


人の命や寿命には限りがあるという美しさを好きになったからだ。


今、奥様がお腹をさすり歌を歌う意味が理解出来た気がする。

大人になった子供達は、子供を作り生活をしている。その姿を眺め歌を歌った。子供達は喜んでくれた。

奥様からのデータなので音は外れているが子供達は私の歌を愛してくれたのだ。


不意にシェルターから信号をキャッチする。


放射能が低下した為、外の世界を視察しに来るとの事だ。

長い年月が経ち放射能も減少し子供達が頑張り町を作った。人間の新しい社会が復活し始めているのだ。





この町をみたら、きっと喜んでくれる・・・・・・・・・・・





そこで資料は途切れていた。



「この資料は、父の記憶のデータを解析して取り出した記録だ。」

シゲルは激しい怒りの表情をしている。

「資料が途切れた日、父が突然、動かなくなった。」

「動かなくなる前に父が俺に伝えた事は、シェルターから使者が来るとの事だった。」


シゲルは昔を思い出し

「何かあると思い、必死に牛時山ぎゅうとやまに走った。」


普段嗅いだ事が無い程の腐敗臭を思い出した。

「シェルターが開いて5人程??の調査の人間が出てきたよ、、。」

「隠れて5人の様子を見たんだ。あいつら空気が美味いって笑っていたよ。」


「その後の言葉で俺は、、。」


シゲルは言葉を詰まらせた。


「資料によるとシェルターを解放したアンドロイドが残ってる可能性があるんだっけ?」

一人の男が他の調査の人間に確認すると

「いや、調査の際に危険が無いように、全世界のアンドロイドを強制破壊するプログラムを発生させて破壊してある。」

「アンドロイド達からシェルターを奪還したMCY-9002が故障していて、現在のシェルターを破壊する可能性があるからな、、。」

辺りを見回しながら答えた。

「気をつけるのは放射能で遺伝子変異した害獣ぐらいだろう。」


笑顔で話す5人のシェルターの人間を見て愕然とした。


「我を忘れ、3人を近くにあった木で殴り殺し、2人を拘束した。」

拘束した2人は恐怖で言葉を失っている。

お前等が言う放射能で汚染された害獣に見えたのかも知れない。


「シェルターの外は放射能で汚染され危険生物だらけと中の人間に伝えろ。」

「今後シェルターから出てきた人間は俺が絶対に殺してやる。」


シェルターの人間は肉体が弱い。長い運動不足の為争いに不向きになっている。


「1人はこの町で捕虜にする。シェルター内の状況を撮影しこちらにデータとして毎月送信しろ」

「いいか、お前等が破壊したと言ったアンドロイドは生きている。」

「もし、不穏な動きを見せてみろ。そのアンドロイドがシェルターを破壊して一人残らず虐殺するぞ。」


男達が使っている無線を奪い一つをシェルターに逃げる男へ渡した。


男は仲間達の返り血で染まり、恐怖から叫びながら走って逃げて行った。


さて、お前には協力をしてもらうぞ。

もう1人のシェルターの男を連れて町へ戻った。


「その男に協力をして貰い脳だけ人間のままにし体をアンドロイドにしてもらった。」

「俺はシェルターから出てきた人間を排除する日々がはじまった。」

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