はじめまして
同じ日々の繰り返し。
その日もぼくは、いつも通り、空腹を満たす為に食べ物を探していた。
側にあった茂みに、何か落ちていないかと、無造作に鼻を突っ込んだ時だった。
ガサリ、と思ったより大きな音が出てしまい、少し驚いていた時、更にぼくを驚かすような音が突然耳に突き刺さってきた。
「だぁれ?」
予想もしないような高い音…まるで、狩られる寸前の野兎のような…いや、例えが悪いな。とにかく、いきなりの高すぎる音に、とてつもなく驚いたぼくは、ほえることも出来ないままに、その音が聞こえてきた方向であろう茂みの向こう側に顔を出した。
そこには、世にも奇妙な生き物がいた。
しばらくの間、好奇心に駆られたぼくは、そいつをじっと観察していた。なんて不可思議な見た目をしてるんだろう。顔だと思われるところは肌部分が大きく露出していて真っ白だし、一方で頭部にある毛は異常に長くて、見たこともないような明るい茶色と白が風にゆらゆらゆれている。いやまて、顔部分だけじゃ無くて、体にも毛がほとんど無い!毛には見えないひらひらしたものが体を覆っているだけ…こんなに肌が出てしまっているこの生き物は、一体どうやって自分を守ってるんだろう?身体中を覆う毛こそが、怪我や寒さから自身を守ってくれるのに…本当に、こんな生き物は見たことがない!
ぼくがそいつを遠慮なく見ている間、そいつもまたぼくをじっくりみることができたと気付くには、ぼくはまだ若すぎた。
ぼくはそいつの奇天烈な見た目の次に、その瞳に酷く心惹かれた。まっすぐにぼくを見つめてくるこの青い瞳に。森の動物たちの中には、こんなに惹かれる色の瞳を持つものはいない。
きれい、だなぁ…
思わず魅入ってしまっていた時、
唐突に、そいつの相貌が歪んだように見えた。
『はじめまして、くまさん』
…その歪みが、笑顔というものだと知ったのは、その後の事。