六日目
六日目
今日も爽やかな目覚めである。そして暑い。とにかく暑い。
まあ、仕方がない。なにせ、明後日から八月なのだ。夏真っ盛り。暑くないわけがない。
「はあ、暑い」
「樹、いい若者が朝からため息つかないでよ。ため息つくと幸せが逃げるんだよ」
「……ナニソレ」
そんなこと、聞いたこともないわ。だが、たしかに朝からため息つくと暗くなるよね!気を付けよう。
今日は朝はおばあちゃんとおつけものを漬けるのだ。おばあちゃんの漬物は売っているものより美味しいから私は大好きだ。料理も和食ばかりだけど、美味しいし。お母さんはあんまり上手じゃなかったからなあ。
お昼からはとなり町の図書館に行く予定。明日は山(?)に行くわけだし、ついでに図書館の近くにあるらしいホームセンターでものぞいてみよう。なにかしら必要なものがあるかもだし。でも山登りなんかしたことないけど、何が必要なんだろう。……本でも探してみるかな。
おばあちゃんと楽しく話をしながら、おつけものを漬けていると、ちょっと面白い話をきいた。
「抜け穴?」
「そうよ。今はもう通れないけどねえ」
その抜け穴は昔からあるのだという。町中に入り口があり、坂の上の八幡さんのところまで続いているのだとか。その話を聞いたとき、なにかとても大切なことを忘れているような気がした。……なんだろう?気のせいかな。
結局なにも思い出せないし、まあ、気のせいだろう。なんだかもやもやするけど、思い出せないなら大したことではないのだろう、とちょっとした違和感など忘れることにしたのだった。
お昼過ぎ、私は図書館に向かった。今日は電車である。うん、やっぱり車ないって不便。都会にいたときは特に不便とか思わなかったけど、ここって電車もバスも全然本数ないからなあ。一時間に一本あるかないかなんて……。まあ、たとえ車があってもまだ免許とれないけどね。
それはそれとして、駅から徒歩五分で図書館についた。意外と、といってはなんだが、本格的な図書館である。小さな町の図書館にしてはかなり蔵書数があるし、CDやDVDなんかもおいている。更には絵本にマンガ、木のオモチャ。畳敷きの遊べるスペースもあるし、テラス席のようなものまであり、コーヒーも飲めるらしい。もちろん視聴覚コーナーもある。
「うわー、読みたかった本がいっぱいある」
まずい、毎日でも通いたい。
とりあえず、何冊借りてもいいと言う夢のような図書館だったので、読みたかった本を片っ端から積み上げていく。
「うはははははは」
本好きとしては笑いが止まりませんなあ!
ついでに、おじいちゃんの家のある町の史書もあったので、パラパラめくってみる。
「へえ、あんな小さな町なのに、結構色々あるんだなあ」
「歴史は古いからね!戦国時代から続いてる家とかいっぱいあるし」
なぜか誇らしげに言うハン。なぜお前が誇らしげなんだ、ビー玉のくせに。
ともあれ、非常に有意義な一日であったことは間違いない。
ちなみに、帰りに寄ったホームセンターで鈴を買っておきました。うん、熊がでるらしいのよ。マジで。聞いたときは本気で都会に帰りたくなったわー。
ないわ、熊。