1話-1
「うーわマジかよお前もかよ!」
一気に沈んだ俺はクラスの扉を開けるなり第一声そんな言葉をかけられた。
ぐ、と言葉に詰まり気分とともに下がっていた目線を上げると
「…よ、陸、お前も変人D組か」
「知り合いいてマジで助かったわー」
「そりゃよかったな」
「今年もよろしくな、りょーちゃん!」
「おーよろしく」
肩を組んでお互いニヤリとあいさつする。
この爽やかな短髪で人懐こそうなのは去年も同じクラスだった小川陸。
背がでかいから方にかかる腕の負荷が痛い痛い腕攣りそう!
「あぁごめん!」
「いや大丈夫…ほかに知りあいいた?」
「名前は覚えてないけどちらほら…まだ全員来てないみたいだしなんとも言えないな」
「そっか」
いろんなことを企んだ仲だから正直すごく心強い。
「いい生徒演じ切る!とかいって勉強してたくせにお前全然できてなかったよな」
「はい黙れお前もできてなかったくせに」
「オレは最初から諦める気満々でしたーどや!」
別に渾身のドヤ顔をされてもすごいとも言えない、この人は俺に何て言ってほしいんだ。
「ちょっとなんかつっこんでくんね?俺寂しいんだけど」
「え、あ、ごめん今のツッコミ待機?」
「ボケの生きがいはツッコミをもらうことなんだから!」
わけのわからないことを叫んでいると陸の背後に人影が。
「あ、陸後ろ」
「え?わっ」
呼びかけるも遅く、どうやらぶつかっちゃったみたいだ。
「ご、ごめんなさい!」
「あ、あぁいいんです、私の前方不注意で…!」
分厚い眼鏡の暗そうな女の子。なんかめっちゃ鞄重そう。
「痛くない?大丈夫?」
女の子にはとこトンやさしい陸は何かと心配の言葉をかける。オレとか男子にぶつかったって一言で終わらすくせに。
「は、はい、大丈夫ですので」
そそくさと離れていく女の子。ちょっと感じ悪いなぁ…いや、でも。
「お前はちょっと大きいから威圧感じで引いたのかもな」
「えっ嘘それはショック!」
ぎゃいのぎゃいのと会話をしているともう一人の人影が陸の背後に。
しー、と人差し指を口に当てる動作をしておちゃめに笑う。
そんな彼にニヤリと笑い返し、見なかったことにする。
「どりゃあ!!」
「うおぉお!?」
その人影は勢いよく陸へタックルをかました。
突然の衝撃に耐えられなかった陸はふらりと足をもたつかせ転びかける。
「あっはははは!まさか二人も同じクラスなんてびっくりー!」
「おはよう!オレは出会ってそうそう全力のタックルにびくりしたな!」
「よっ玲!」
「やっほーい!」
小柄な割に大柄な陸をふらつかせるなんてすごいと思う。
この一見女子の平均と同じくらいの身長の友達は岡本玲。名前のせいもあってかよく女に間違えられることが多い。
そんな玲はどこにそんなパワーをひそめてるんだろう。
「いやー遅刻するところだったよ~」
「新学期そうそうそれはまずいもんな」
「レイレイ遅刻魔だしね、不良こーわーいー」
「はい?先輩とことごとく問題起こしてる人の方がよっぽどこわいけど?」
女子生徒の口調をまねてクネクネする陸に冷たく言い放つ玲。
陸は部活でいろいろあって辞めたみたいだ。…女の先輩と。
「あれはオレ悪くない!」
「そうやって悔い改めないし自分の非も認めないからここにいるんだって、男と女の立場の力とか考えたら当然だって」
「はー…あんのやろー一生恨んでやる!」
「はーいはいはいはい席に着くーそんな教壇で物騒な誓いを立てない!」
感極まって大きな声を出した陸に静止の声をかける先生…校門で会った去年の担任、慎也先生だ。
「大友ちゃーんまた会ったね!よろしく~!」
「ゲッ岡本!?…もいるのか…」
「先生そんな露骨に溜息つかないで傷つく」
「お前ら今までしてきた所業を振り返って反省してからものを言おうな、ほらさっさと座る」
はいはい、と気の抜けた返事をして座席表通りの席に座るとちょうどよく鐘が鳴った。
周りを見ると1、2席ほど空席があるがほぼ全員集まったたみたい。
可愛い女の子もいるし…D組、なかなか悪くない。
「えー…今日からこのクラスの担任を受け持つ大友慎也だ、以後よろしく。固い中は望んでない、敬語を使うのは他の先生がいるときだけで結構…先生はつけてほしい」
挨拶は以上、とそっけなく終わった。
続いて各自自己紹介。
ここで印象と話しやすさが決まる…!
「じゃあ相沢から」
面白さ、気さくさ、明るさすべてを兼ね備えた自己紹介を考えよう。インパクトが強くてもいいよね。
そうだ、インパクトだ!!
「俺様は相沢浩太、穢れし血の流るる忌み子…好きなものは我が僕、欠損のケルベロス…あまり近寄るな…怪我をするぞ」
インパクトは諦めよう、あれには勝てる自信がない。