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夜明けを告げる魔法使い  作者: 雲居瑞香
第2章 踊る人形
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12.動く人形について

しつこいですが、タイトルを変更します。


現タイトル『魔術師たちの黙示録』→『夜明けを告げる魔法使い』に変更予定です。

変更の理由は、2月7日の活動報告をご覧ください。

ご迷惑をおかけします。


それと、ブックマーク登録数が90件となりました。登録してくださった皆さん、読んで下さっているみなさん、本当にありがとうございます!


あと、この話はフェデーレ視点です。









「……」


「……」






 ルクレツィアが去った後、フェデーレとリベラートの間には沈黙が流れていた。しばらく間を置いてから、リベラートが一言。


「ヘタレ」


 全くその通りである。


 別に愛をささやくわけでもなんでもない。ただ、一緒に観劇に行かないかと誘いたかっただけなのだ。だけど、言えなかった。


「まあ、今は忙しいからな。誘ったところで『何言ってんの』くらいは言われるだろうけど」


 頬杖をついたままリベラートが言うと、フェデーレはテーブルに突っ伏した。その可能性はフェデーレも考えていた。突っ伏した彼の肩をリベラートがたたいた。最近、よく慰めるように肩をたたかれることが多い気がする……。


「また暇なときに誘ってみろよ。暇だったら一緒に行ってくれるかもしれないぞ」

「……そうする」


 フェデーレはため息をついた。リベラートは立ち上がったかと思うと、すぐに戻ってきた。目の前に差し出されたのはマグカップに入ったカフェ・ラッテだ。

「まあ、甘いものでも飲んで元気出せ」

「……ありがとう」

「テンション低っ」

 ヘタレかつメンタルの弱いフェデーレは、落ち込むときはやたらと落ち込む。ちなみに、落ち込むときはルクレツィアが関係していることが多い。


「でも、まあ、あれだな。お前がルーチェを好きだってこと、『騎士団』のほぼ全員が知ってるのに、きれいに本人にだけ伝わってないな」

「……やっぱりみんな知ってるのか……」

「ホントにお前、テンション低いよ? 大丈夫か?」

「大丈夫……」


 以前ヴェロニカに『「騎士団」で生暖かく見守っている』と言われてから、そんなような気がしていたのだが、本当にフェデーレは『夜明けの騎士団』に見守られているらしい。


 そんなことするな! と言いたい気持ちもあるが、言ったところで結局、フェデーレたちから見えないところで見守られるだけのような気もした。


 フェデーレはカフェ・ラッテをすする。温かいそれは程よく甘かった。
















 気を取り直して2日後。フォンターナ侯爵から色よい返事が来たので、フェデーレはリベラートと共に彼の侯爵の屋敷を訪れていた。屋敷の外ではルクレツィアとヴェロニカが異常がないか見守っている。


「フォンターナ侯爵、このたびは我らの捜査にご協力くださり、感謝いたします」


 フェデーレが外向きの笑みを浮かべて頭を下げる。品の良い初老の男性、つまりフォンターナ侯爵は口元に笑みを浮かべる。

「いやいや。依頼を出したのはこちらだからな。私にできることがあれば、協力させていただくよ」

「ありがとうございます」

 笑みを返しながら、すごい人だ、とフェデーレは思う。貴族の鏡である。誠に遺憾ながら、デアンジェリスの貴族全てがフォンターナ侯爵のような人ではない。見た目や噂で相手を判断するものも多いのだ。


 フェデーレの後ろで、リベラートも感謝をこめて頭を下げている。フォンターナ侯爵は、平民である彼を屋敷にあげると言っても嫌な顔をしなかった。どうしても『夜明けの騎士団』の魔術師、魔法使いは平民が多いのだが、平民を連れて行くと嫌な顔をする貴族もいるのだ。そう言う場合は、面倒だが貴族に引っかかっているものを探して連れて行く。一番効果的なのは、アルバ・ローザクローチェかグランデ・マエストロをぶつけることだ。まあ、マエストロは今王都にいないが。


 侯爵の屋敷には夕刻にお邪魔させていただいた。正確に人形が動き出す時間がわからない以上、早めに到着しておくべきだと考えたのだ。


「この部屋だ」


 侯爵が案内してくれた部屋には、なるほど。多くの人形が飾られていた。


「私の母や妻が集めたものなのだが……人形が動くようになってから、近づこうともせん」

「……まあ、普通はそうですよね」


 そう言ってフェデーレは苦笑した。普通は、動く人形などは不気味で近づきたくないだろう。嬉々として近づくのは、『夜明けの騎士団』の変人魔法研究家たちくらいだ。

 ひそかに変人魔法研究家だと思われているリベラートは、そんなことはつゆ知らずに侯爵に人形に触れていいか尋ねていた。晴れて許可をもらった彼だが、念のため手袋越しに触ることにしたようだ。

「どこか変なところはあるか?」

「……いや。普通に見えますね」

 普段は砕けた口調で話す中だが、ここには侯爵の眼があるので、平民のリベラートはセレーニ伯爵であるフェデーレに敬語を使っている。


「だが、何か魔力を受け取るところがなければ動いたりしないんじゃないのか?」

「そう……なんですけどねぇ」


 リベラートが首をかしげている。やはり、ヴェロニカの方を連れてきた方がよかったのだろうか。


 ちなみに、『夜明けの騎士団』にも制服は存在する。夜に行動することが多いので、制服は黒く、通常の軍服とちょっと似ている。違うのは、パンツにスカート、ハーフパンツと様々な種類があることか。もちろん、紋章である薔薇の徽章もついている。


 しかし、魔術師や魔法使いたちは指定のマントの下は通常の服であることが多かった。リベラートはまじめなので、ちゃんと制服を着ていたが。ヴェロニカなんかは白衣の上からそのまま着ていることもある。


 そして、夜7時を過ぎたころ。


 それは唐突に起こった。


 椅子の上や棚に飾られていた人形たちが、一斉に動き出した。いや、中には動いていないものもあるが……ほぼすべての人形が、ぎこちないしぐさで踊りだした。その様子は異様で、奇妙なものを見慣れているはずのフェデーレですら、ちょっと怖かった。


「ちょっと失礼」


 リベラートは踊っている人形を一体つかんだ。彼に捕まれても、人形の足は動き続けている……すごい執念だ。


「これは……」

「何か分かったのか?」


 フェデーレが意気込んで尋ねると、リベラートは苦笑した。


「何かに操られている、と言うより、何かと同期している、と言った感じだな~と思っただけですよ」


 と、リベラートはそう言いながら持っていた人形を床に置き直した。再びぎこちなく踊りだす人形。


 この場には、フェデーレでも感じられるくらいの魔力が集まってきている。その魔力によって、人形は動いているから、てっきり魔法で誰かが動かしているのだと思ったのだが、少し違うらしい。


「同期してるって、どういうことだ?」


 いまいちピンと来なくて尋ねると、リベラートは眉をひそめて少し考えた。

「えーっと。例えばの話しですが、小さい子供が一人泣き出すと、連鎖してほかの子供たちも泣き出すことがありますよね。これが、魔法で言う同期なんです」

「……そうか。続けて」

「つまり、同期ってのは感情で左右されるんですね。この人形たちは、誰かが魔法で操っているわけではなく、誰かの思いに呼応して踊っているだけなんですよ」

「な、なるほど……」


 何となくわかった。魔法は奥が深いな……。


「じゃあ、誰かが踊りたい、と思っているから、大量の人形が踊っているのか?」

「……その辺は、俺にはよくわからないですね」

 なんだそれは。外にヴェロニカとルクレツィアがいるはずなので、彼女らにも話を聞きに行くことになった。その前に、屋敷に結界を張って、人形たちが魔法によって動かないように、外からの干渉を遮断しておいた。すると、人形たちはぱったり動かなくなった。


 外に出ると、何故かルクレツィアはいなかった。ヴェロニカだけが身の丈より長い杖を持ち、腕組みして仁王立ちしていた。どこにいてもこの女はこんな感じである。


「ルーチェは? どこに行った?」


 仕事を放りだしてどこかに行ってしまうような少女ではない。彼女は責任感が強く、だからこそこの仕事が成り立っている。少々短気なのがたまに傷だが。

「あの子なら、魔力の元を調べてくる、とか言って走って行った」

「止めろよ!」

 思わず突っ込みを入れると、「何かあったら魔法の照明弾を打ち上げることになっている。打ちあがってないから大丈夫だ」とヴェロニカはのたまった。そう言う問題じゃないと思うんだが。


「フェディ。ルーチェが心配なのはわかるが、ちょっと落ち着け。あの子をどうにかできる人間がそうそういるとは思えないだろ」

「……確かに」


 リベラートの言うとおりである。ヴェロニカも大概強力な魔法を行使する魔女であるが、ルクレツィアも変わった魔法を行使する。彼女の『領域』に入ってしまえば、抜け出すことはほぼ不可能である。


 ただ、彼女の魔法は奇襲に弱いという弱点があるのだが……。


「どうかしたの?」


 たん、と軽い音を立てて近くに着地したルクレツィアの声に、フェデーレは驚いた。いつの間に……。











ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


フェデーレ視点だと、彼のちょっと残念な感じが出ている……かな?

彼はデートに誘いたくても誘えないヘタレです。嫌味は言えるのに、何故だろうね。




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