(6)
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真夏の日差し。
雨季を乗り越えた日本に降り注ぐ強い光たちが今日もアスファルトの温度をバカみたいに上げまくっている。
そんな中を一人歩いている俺はポケットに片手を突っ込み、もう片方でシャツの胸元を仰いでいた。
八月の町は既に夏休みムードであり、学業が停止している少年少女たちの姿をちらほら見かける。
かくいう俺も夏休みであり、大学最初の夏を満喫・・・・満喫というほどいいものではないが、まあしていた。
シノが外国にいってから二年。 俺は地元の大学に進学していた。
自動販売機でジュースを買って一気に飲み干す。
蒼い空を白い雲が流れていく。 少しだけ風が強い今日はまだマシで汗ばんだ肌に風が心地よい。
大学の近くにアパートを借りた俺はコンビニで買い物を終えて帰宅する。
部屋に戻ると何故かサンダルが玄関にあり、顔を上げるとそこにはテレビを見ているイオリの姿があった。
「あ、やほ〜! アイスかってきてくれた?」
「バカじゃねえの・・・・これは俺のアイスだどう考えても」
「けちー」
イオリは俺と同じ大学に進んでいる。 理由はまあ、察して欲しい。
そう、俺は未だに何の答えも出せないままイオリとの関係をずるずる続けていたのである。
ああ、笑ってくれ。 俺も笑いと変な汁が目から出てきそうだ。
一緒にテーブルを囲んでたたみの上に座って扇風機の風に打たれている。
本当は色々と執筆しなければならない小説があるのだが、こんなに暑いとはっきりいって書く気なんか起きない。
そう、俺は小説の執筆を続けていた。 今ではそれなりに実力も上達したと思っている。
大学ではそういうサークルに所属し、今ではそれなりに充実した毎日を送っているところだ。
けらけらと変わらない人懐っこい笑顔。
それにつられて俺も笑ってしまう。
しばらくそうして下らないやり取りを続けているとチャイムが鳴り、イオリ同様俺の許可を得ず立ち入ってくる不届きモノが現れた。
そいつは笑顔を浮かべながら両手にコンビニのビニール袋をぶら下げている。
「あれ? タイミング悪かったかな」
「瀬戸・・・・・ウチに来るときはせめて俺の許可をだなあ・・・」
「アイスー! 気が利くなあ、やっぱりアイダとは違うよ!」
「それはどうも。 で、イオリはなにがいいの?」
「俺の話を聞け!!!」
こいつは瀬戸。 さて、なんでまたこいつまでこの部屋に出入りしているのかというのを説明すると長くなる。
時は二年前、クリスマスの翌日にさかのぼる。
「アイダ」
翌日、何も考えられないまま無気力に町をさまよっていると背後から声をかけられた。
聞き覚えのある声。 しかし振り返るとそこにいたのは瀬戸である。 思わずため息が出た。
「随分と失礼な反応だね」
「一体何の用だ・・・・俺は今猛烈に落ち込んでるから声をかけないほうが身のためだぞ」
さっさと会話を切り上げて立ち去ろうとする俺の腕を掴み、その手に一冊の本を握らせた。
それは金色のハードカバーの本・・・・そう、かつて一度だけ、こいつが手にしているのを見た本だった。
何故かずっと印象に残っていたそれの作者の名は榎本コウジ。 シノの父親の名前だった。
「どうしてこれを・・・・・・・・」
「この本はまだ未完成なんだ。 彼が書き終えるより前に、彼はこの世から去ってしまったからね・・・・・」
本の表紙を愛しむようにそっと撫でながら顔を上げ、まっすぐな瞳で俺を見つめる。
「君の手で完成させてみない? 彼女の父である彼が書き上げたくても書き上げる事の出来なかった本を」
「・・・・・・・・・・・・どうして瀬戸が・・・・・それを・・・・?」
俺の真剣な表情に同じく真剣な表情を浮かべていた瀬戸は思いっきり吹き出し、その場で大笑いし始めたではないか。
何がおきたのかさっぱりな俺はただ困りながら周りの目を気にすることしかできない。
「アイダ・・・・・まだ気づかないの・・・・?」
「な、なにがだ・・・・・?」
「『私』が、ユウだよ?」
「え・・・・・? あ・・・・・っ!!!!」
思いっきり今度こそ空いた口がふさがらなかった。
髪の毛を目の前ですこし弄り、微笑んだその顔はどう見てもユウではないか。
いや、しかしでもユウはもうちょっとかわいかったような・・・・?
「あの時はお化粧してたからね。 それに服はおねえちゃんのを着てたし。 でも本当にひっかかるなんて、アイダは面白いなあ」
「ちょ、ちょっとまて・・・・まてまてまてまて、まて・・・・・? じゃあユウは・・・・瀬戸?」
「僕のフルネームは、瀬戸ユウだよ」
唖然である。 この少年がお化粧するとあんなふうになるんですね。 あら、お化粧っておそろしいわ。
そう考えてみるとあのユウは可愛すぎて逆に気持ちが悪い。 間接キスとかしちゃったよオイ。
あまりの出来事にその場に膝を着きがっくりとうなだれる俺。
「ああ、気にしなくていいよ? 僕ね、アイダのことホントに結構好きだから」
「不気味なことをいわないでくれえええええ!!! そして男にときめいてしまった俺は・・・・俺はああああーーーーーッ!!!!!」
壁にがしがし頭を叩きつけながら叫ぶ。 なんだか人としておかしな方向に進んでしまった気がしてならない。
しかし落ち着いて考えてみればどうかんがえてもそうじゃないか。 声だって聞き覚えがあったし、だとすれば俺たちのことに詳しくても・・・ああ・・・・。
「お前・・・・・・・・・案外性格悪いな」
「かもしれないね」
そうしてユウの時と同じ笑顔を浮かべる瀬戸と共に町外れにある小さな公園にやってきていた。
ベンチに腰掛けると瀬戸は今までのあらましを話してくれた。
まず、俺がユウにメールを送った事は完全な偶然だという。 全ての偶然の始まりは俺が作ったというのだから驚きだ。
そこから先はユウ、つまり瀬戸は全部俺のことはお見通しのまま反応していたというわけだ。
つまり瀬戸は俺の師匠であり、いつも俺の相談にのってくれたYOUそのものでもあるということになる。
そして瀬戸は生前からシノ、そしてシノの父親であるコウジさんと親しく、コウジさんの弟子のような関係だったのだという。
「強いて言うなら、今の君と僕みたいな関係だね」
ということらしい。 なんともわかりやすい。
そして彼は死んでしまう前、書きかけの小説を瀬戸に託した。
それがこの金色の本であり、タイトルは決まっておらずまだその内容も半分ほどしか埋められていない。
これをどうか執筆し娘に渡して欲しいと頼まれたらしい瀬戸だったが、結局執筆することは出来ないままだったという。
「何せもう随分前のことになるしね。 そのころの僕にはそれを書く技量がなかったし、今の僕にはあの頃の情熱がなくなってしまった。 偉大な師匠を乗り越えようと手を出すことを恐れてしまっているのさ」
「そんなの俺も同じだろ? ユウにかけねーもんが俺に書けるわけねえだろ」
「でも、それはやっぱり君がどうにかすべきだと思う。 本当は弟子である僕がどうにかすべきなんだけど、僕よりも君の方がよほどシノの事を見ているからね」
本を開き、ページを捲っていく。
それは、一人の父親と娘の物語。 離れ離れになった親子が再びめぐり合うまでの出来事をつづった本だった。
それはきっと、榎本コウジという一人の父親が娘に向けて託した想いの全て。
しかしシノはもう居ない。 いないのでは届ける事も出来ない・・・・・。
「さてと、この物語における僕の役割はこれで終了だね。 それじゃアイダ、これからは君の物語だ」
「何言ってんだ? 俺の物語ならお前は当分登場人物続行だぜ?」
立ち去ろうとするユウが目をぱちくりさせ、それから本当に可笑しそうに口元に手をあて笑った。
「なら、師匠はもう少し弟子の頑張りを見守ることにするよ」
そうして手にした彼女に伝えるべき彼女の父親からの想い。 しかし届ける手段はもう無いと思われた。
その、翌日までは。
『相田君、久しぶりね・・・・』
俺の目は完全に醒めていた。 深夜三時、寝ぼけ眼で手にした枕元の携帯電話。 こんな夜中に電話をかけるバカはどいつだと思いながら出るとこれである。
慌ててベッドから飛び起き、くそ寒い室内に驚き毛布を引き寄せ慌てて答える。
「し、シノ・・・・・!? どうして・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・今、相田君の家の近くまで来てるんだけど・・・・・・出てこられる?』
「いける! いけるからそこを動くなよ! いいな!?」
慌てて着替えを済ませ全力で階段を飛ばして駆け下り、玄関から外へと飛び出した。
ついこの間降った雪。 しかしいつの間にか深夜に振り出していた冷たい雨。 飛び出したはいいものの傘を持ってくるのをわすれ、気にもせず雨の中飛び込んだ。
シノがいる。 シノに会える。 まだ終わりじゃない。 それがあまりに嬉しくて全力疾走した。
駅前でシノは傘を差して俺を待っていた。 ずぶぬれな俺の姿に苦笑しながらハンカチで濡れた顔を拭ってくれる。
「こんなハンカチじゃ意味なしってところかしら」
「シノ・・・・・! あの、俺・・・・・」
傘に俺を入れるとシノは首を横に振って微笑んだ。
「うちまで来てくれたんでしょ? 話は全部聞いたから・・・・・・小説、読んだよ」
「でも、オーストラリアに行くって・・・・」
「電話もらったのよ。 執事の彼から。 だから慌てて戻ってきちゃった」
「は・・・・はああああ〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・驚かすなよ・・・・・お前なあ・・・・どれだけ俺が・・・・バッカ・・・・っ」
安堵のあまり涙まで出てきてしまった。 でも仕方ない。 シノが目の前に居る。 本当に居る。 それがとにかくうれしかった。
涙を零す俺にシノは申し訳なさそうに顔を赤らめていた。
真っ暗で誰も居ない駅の前、雨宿りできる屋根のある場所で俺たちは雨を眺めていた。
「何も泣かなくてもいいでしょ・・・・ばかなんだから」
「仕方ないだろ・・・・あれは仕方ないって・・・・今でも泣きそうだし」
「・・・・・・・・・・・手、つないでもいい・・・?」
俺は無言で頷き、シノの手を取った。
冷え切った今の自分の手からしてみればシノの手はとんでもなく暖かい。
「ごめんなさい・・・・・急に呼び出したりして。 でも、こっちに戻ってすぐに相田君に謝りたくて・・・・」
「もういいんだ・・・・・・・お前には悪いけど、お前の話、色々聞いたんだ・・・・瀬戸に」
「・・・・・・ユウ君に? そう、そうなのね・・・」
お互い気まずく目を逸らした俺たちの視線は当然雨の景色に向けられることになった。
そんな中、シノはまるで自らの罪を懺悔するかのようにぼそりと語り始めた。
「パパが居なくなって、すごく寂しかった。 でもママはすぐに新しい男の人と付き合い始めたりするし、わたし、男の人ってすごく苦手だったの」
「・・・・・・・・」
「人と関わるのもなんだか難しくなっちゃって、どうしても最初から諦めてるっていうか、距離を置いてしまうから・・・・」
黙って聞くことにした。 俺は静かにシノの手を握る力をわずかに強める。
「初めて相田君に会った時、あの時はね・・・・実はしつこく告白してくる人をまくためだったの」
ああ、あの時か・・・・俺が勘違いしてしまった事件だ。 突然シノにひっぱられ、抱きつかれた。
そんな理由があったとは学校のアイドルは大変である。 まあシノなら仕方ない気もしないでもないが。
「だから本当に相田君のことはどうでもよかったしはっきりいって気持ち悪いと思った・・・・さ、最初はよ?」
ああ、泣きそうだ。
「でも・・・・相田君が毎日頑張ってるのを見て・・・・凄く申し訳ないんだけど・・・・パパのことを思い出したの」
「え・・・・親父さんのこと?」
口を挟むまいと思っていたがその意外な言葉に思わず口を挟んでしまった。
「パパが執務室で一晩中一生懸命本を書いている後姿が一番よく記憶に残っているの。 相田君もそうなんだと思ったら、重ねてしまって・・・・」
「そっか・・・・・・・・」
「だからわたしも本と向き合えた気がする。 でもきっと、相田君に甘えていたのね・・・・何を言っても許されるって、そう信じてしまっていたから」
それを俺が責めることができるのだろうか? 俺も心の底から信じているイオリには弱音を吐いてしまう。 それは甘えに他ならない。
俺はそんなシノを受け止めてやる事が出来なかったのだろう。 まあだからってありゃ言いすぎだと思うが。
カっとなりやすいというか子供っぽいということはさんざ理解していたつもりだったが、やはり俺も子供ということらしい。
「でも、本当に怖かった・・・・相田君まで居なくなってしまったらわたし、どうしたらいいのかわからないから・・・・・・・だから、本当にごめんなさい・・・」
シノの手は震えていた。 どこにもいかないでと、強すぎるほどに俺の手を握り締めていた。
俺はそれを強く握り返し、頷く。
「いいんだ、もう・・・・・」
シノと向き合う。 迷子になって親とはぐれてしまった子供のように、シノは不安そうな顔をしていた。
その髪を撫でてもう一度頷いた。
「もういいんだ・・・・・・・・俺は、シノのことが好きだから・・・・・だからいなくなったりしない」
「相田君・・・・・っ」
っておわー! こんなお約束な展開でいいのだろうか? ずぶぬれの服の上から抱きついてきたシノの体温を感じる。
しかしなんというか、こういう終わり方は俺の望むものではない気がする。
いや、この物語を見ている人間の多くが殺意を抱きそうなことをほざいているということはわかっている。
だがどうか、誰に語っているのかわからないまま語り続けてきた俺の最後のわがままを許して欲しい。
俺はシノを抱き返すでもなく、その肩を掴むとシノをゆっくりと引き離した。
「シノ。 俺、これからも頑張る。 これからも俺、小説を書くよ。 だからシノも、諦めないでくれ」
「諦めないわ・・・・相田君が一緒にいてくれるなら、わたし何でもできるから! だからもうオーストラリアとかそんなのどうでもいいの! 一緒に、」
「だめだ」
首を横に振る。 唇に人差し指を押し当て、そっと言葉を遮った。
シノは理解出来ないという目で俺を見つめている。 俺は深呼吸して言葉を吐き出した。
「俺はシノのことが好きだ。 だけどシノはまだやらなきゃいけないことがいっぱい残ってる。 俺もそうだ。 だから、一緒にいるのはそれからだ」
「どういうこと・・・・?」
「お母さんのことも、お父さんのことも、ちゃんと受け入れて認めるしかない。 俺の好きな榎本シノは、そんな弱い目していない。 毅然としていて、ムカツクくらい俺の前じゃクソ生意気なんだ」
「む・・・・・どういう意味なのか詳しく説明・・・・しなくてもいいわ・・・・・わかってるもの、これでも・・・・」
涙ぐむシノの頬に手を沿え、微笑む。
「ちゃんと、頑張ろう? 逃げないで、最後まで変わらなくたって無駄だって頑張るんだ。 俺は書くよ。 君も書いて欲しい。 そして出来ればまたお互いの事をちゃんと見詰め合えるようになったら・・・・もう一度俺、君に好きだって言うから。 君が帰ってくるの待ってるから、だから・・・・・それまで頑張ろうよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シノは泣いていた。 俺の胸に顔を押し当て、弱弱しい力で胸を叩きながら。
でもそうするのがいいと思う。 彼女の中で全てのことがまだわだかまったままだ。 それは俺と居れば溶けていくのかもしれない。
けれど俺は多くのものや人や想いを受け継ぎ支えられここまでたどり着けた。 その幸せと苦労を彼女にも知ってもらいたい。
彼女は確かになんでもできた。 しかし努力することも何かを変えたいと強く願う事もなかったのだろう。
彼女に強く願って欲しいと思った。 変えたいという気持ちは何よりも本人が、そしてその大きな力が他を変えていくのだ。
だから俺はイオリや瀬戸に教えてもらったすべてを彼女に伝えたい。
これだけは忘れないようにと、カバンにつっこんできた金色のハードカバーを取り出す。
「これ・・・・・・シノの親父さんが書いている途中だった本なんだ」
「パパが・・・・・・・?」
「ちょっと濡れちゃったけど・・・・・でも、読んでみて欲しい。 これは、まだ・・・・いや、このままじゃずっと完結しないんだ」
シノが本を開く。 文章を食い入るように眺め、やがて徐々に表情を変え、ぽろぽろと涙を零し始めた。
そしてそれを閉じると胸に抱きしめ、消え入りそうな声で『パパ』と呟いた。
「親父さんの気持ち、ちゃんと受けとめてやってくれ。 そして出来れば、その続きは・・・・・・シノが書いて欲しい」
「わたしが・・・・?」
「本当は俺が託されたもんだけど、こういう使い方もアリだと思うんだ。 それに、その本は君のためだけにあるこの世に一つだけのテキストだ。 だから君に読んで欲しい。 君が納得の行く結末をつけて欲しいから」
「・・・・・・・・・・・・・・・書くよ、わたし・・・・・・頑張るから・・・っ・・・・相田君・・・・・・待ってて・・・・っ」
「待ってるよ」
「・・・・・・・・イオリちゃんに・・・とられちゃやだよ・・・・っ」
「浮気しちゃうかもな? イオリかわいいし」
「・・・・・・・・・・」
「OKすいません。 でもだったら、早く帰って来いよな」
「待っててね・・・・・待っててね。 ずっと待っててね。 絶対、絶対に・・・・・わたし、戻ってくるから・・・・・・・」
寄りかかる体温と重さが少し心地よい。
今度こそ、そっとシノを抱き寄せた。
今はこんな距離。 俺たちの恋はまだきっと始まっても居ない。
でもここから始めよう。 お互いにきっと、いつか未来で笑いあえる、認め合える日が来ることを信じて。
キスをせがむシノの額に軽くデコピンをして笑う。
シノも笑った。 俺はもっと嬉しくなった。 楽しくなった。
「雨女だったよな、シノ」
「うん」
「でもほら・・・・・晴れたな」
いつの間にか雲の切れ間から月明かりが差し込んでいた。
やんでしまった雨、散ってしまった雲は星明りを露にし、新しい世界が彼女を歓迎しているようだった。
少なくとも、少女漫画読みすぎな俺には、そう感じられたのだった。
そうして二年の月日が過ぎ、未だにシノとは連絡を取り合っていない。
でもきっとシノは元気にやっているだろうと思う。 だらだら遅くたっていい。 だらしがなくても中途半端だっていい。
それでも俺たちは歩いていける。 未来へ進んでいく。 夢や希望や悲しみや苦痛を抱いたまま、俺たちは歩む。
それはまるでよくできた一つのシナリオのようで、不出来なテキストは人生の全てを彩っている。
「ったく、あいつらマジで何様だ・・・・・」
部屋にいついた二人はさらにお菓子と酒を要求したので結局俺が再びコンビニに向かうことになった。
真夏の太陽に手を翳すと手のひらが少しだけ透けて見える。
この太陽の光の届く場所で、シノは頑張っているのだろうか?
けれど自分で言っておいて二年は長かった。 さびしくてシノの声が聞きたくなる。
会いたくなる。 もう一度抱きしめたくなる。 もう一度、今度こそ、そしたらきっと・・・・・。
まぶしい太陽の日差しにくらくらする視界。
幻のようにそこには白いワンピースを着た少女の姿があった。
かつての真っ黒な彼女のイメージとは一転した、明るく太陽をはじいて輝くその色に思わず目を細める。
歩み寄ると少女はバッグから金色のハードカバーを取り出し、俺に差し出した。
それを受け取り、微笑んでページを捲る。
「物語のラストはどうなるんだ?」
少女は長い黒髪を掻き揚げながらあの頃と変わらない強気な、しかし穏やかな優しさに満ち溢れた瞳で笑う。
「きっと、わたしたちと同じだと思うわ」
笑顔で手を伸ばす。 その手をとって引き寄せた。
真夏の太陽の下、また俺たちの物語を始めよう。
不出来でも不器用でも無意味だっていい。 ただ俺たちは踊るように歌うように繰り返す。
物語の終わりはいつもハッピーとは限らない。 それでも俺たちは描いていく。 真っ白い原稿用紙にいくつもの夢や希望を。
真夏の太陽の下、金色のテキストは風に吹かれてぺらぺらと、ぺらぺらと・・・・・何度も捲られては穏やかな時間を記していた。
さて、このお話のサブタイトルが何故(1)だの数字なのかをお話せねばなりません。 あと一気に更新なのもなぜか。
この小説は元々短編として作られたものであり、長期連載作品の合間に作ろうと思っててきとーにやったものなのです。それが何故か文章量が多くなりすぎ時間もかかりすぎまとめるのに手間取りすぎ必死で文章を削りに削り色々削りまくりそれでも結局収まりきらなくて最終的には連載にしなければならなくなったという次第でございます。本当に申し訳ございません。
もう短編はこりごりです・・・だめだこりゃ。
『また帰ってくるエンドかよ!』とツッコみをいれてくれる方がいらっしゃったらありがとうございます。本当にすいませんこういうエンドしか思いつかないんです俺。
『あんま小説関係ないじゃん!』 という方。はいすいませんあんまり関係ないですねー。
まあそんな本作ですが一番の見所はアイダ×ユウのBLシーンです。ウソですごめんなさい。
一気に書いてつかれきっているのでもうねます。おやすみなさい。ありがとうございました。
というわけで、恒例のあとがき追記。
勿論この作品はこのサイトを見て思いついたものであり、ある意味みんなも小説を書こうよ!的なものをテーマとしたものでした。 ただ色々と詰め込みすぎたせいでわけがわからなくなってきている気がします。
結局この作品が終わるところではこの物語は全く完結していないわけですが、文章量をこれ以上増やさないようにと必死で書いたのでこんなふうになったんだろうなーと今更笑えます。
短編としてまとめて書くというのはかなりむずかしかったです。六万文字までしかこのサイトでは短編として投稿できないわけですが、まあ当然ですよねー・・・。
一応、内容も展開も最大公約数的なところを狙ったつもりなんですがぜんぜんわけわかんないですね。 個人的に一番好きなキャラが瀬戸君なのってほんとどうなんでしょう。
実は俺は主人公を書くのが一番苦労します。 他の作品でも主人公にはひどく苦労しました。 脇役を書いている分には楽しいのですが、なかなかそうはいきません。
この主人公は中途半端とかダメとかバカとかをテーマに書きましたが思ったよりそうでもなくなってしまった気がします。
元々この作品は全体を通してもっとばかばかしい話にするつもりだったのですが、どうにもオチをつけられる気がしなくなり路線変更した次第です。
まあ、こんなところでしょうか・・・。 本当に心残りなのは、結局分けてUPするなら色々消さなきゃよかったなあ、ということです・・・まあなくてもいいところを消したつもりですが、せっかく色々書いたわけで・・・・・。
俺がダメだからだって?
ですよねー。
あとがきおまけまんが
〜こんなAIDAは嫌だ〜
シノ「相田君・・・っ」
アイダ「おっと、いけないぜシノ。 俺には心に決めた人がいるんだ・・・」
シノ「心に決めた人・・・?」
アイダ「ああ・・・・・こいつだ」
ユウ「やあ、シノちゃん」
アイダ「俺はシノやイオリを選ばない・・・中途半端な俺は終わりだ! ユウ! 俺と一緒に同姓でも結婚できる国に行こう!!!」
ユウ「アイダ・・・・・君ってやつは」




