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第8話 唯ちゃんと美仁香ちゃんの正体

時は流れ、ある日の金曜日。

とある小学校のとある体育館でまだまだ小さな子供達が体育の授業で一生懸命縄跳びを挑戦していた。

普通の人間や、可愛らしい猫系亜人種の女の子や犬系亜人種の男の子も一緒に仲良く体育の授業を行っていた。


「うわっ!」

「し、失敗した~」


まだまだ縄跳びに慣れていないのか、たくさんの子供達は目をうるうると涙を溜め、失敗した事によって少々内気になってしまった。それを見かねた体育教員である男教師は


「大丈夫だからね、ゆっくりでいいから焦らず飛ぶんだよ?」


優しい声で生徒達に語り、それを聞いた生徒はその応援が嬉しいのか縄跳びに挑戦。


「あっ、飛べたっ!やったー!」

「わ、私も飛べたよ~!せんせ~!」

「すごいっ!よくやった!上手だね!」


生徒が縄跳びに成功したのか弾ける笑顔で男教師は生徒達を褒め称えた。

傍から見たら微笑ましい光景だろう。小さな子供が知らない事に挑戦して、それに成功したおかげでその顔には輝く笑顔が浮かんでいた。無邪気な子供の笑顔を見た私は、きゅんと心躍る乙女になった訳なんだけど、本当に子供が可愛いんだ!犬系亜人種は尻尾をふりふりとして喜んでいるんだ!

それに、猫系亜人種の可愛い女の子は、尻尾を垂直に立てて、毛先を左右に動かして、喜んでいるっぽい!


ちなみに、猫が尻尾をピンと垂直に立てているのは、嬉しい時や甘えてる時の仕草らしい。ご飯が欲しかったり、撫でたり遊んだりしてかまってもらいたいという気持ちを表している。また、尻尾の先をやや前向きにすると、あいさつの表現。ここ、雑学ね。


閑話休題。

私も縄跳びに挑戦し、簡単にクリアー。美仁香や唯や和や荒神も簡単にクリアーしたらしい。縄跳びは、簡単だし誰でも飛べるだろう。


「よ、よしっ。じゃ、じゃあ開始っ!」


突然、体育教員の声がした。何事かと声がした方向を見ると、体育教員は両腕を大きく開き、その体育教員の正面には、美仁香だ!教師が女子児童に、セクハラなのか?!捕まるぞ!


連環腿れんかんたい!」


美仁香は、最初に思い切りつま先を振り上げて相手の頭部を 狙った上段の蹴り上げをくりだし、その足を下げる時にその反動でもう一方の足を振り上げてもう一度上段の蹴り上げを出す技?を体育教員に向かって攻撃!?い、いや、体育教員には当たってないし、間合いが遠いから、美仁香は体育教員に技を見せたという事は分かるけど・・・美仁香は空手を習っているのかな?


「・・・す、すごっ。本当に小学生なの?」


私の隣に唯がいきなり現れて、信じられないモノを見るかのように美仁香を見つめていた。小学生なのに、小学生なのか?という疑問が出るなんて・・・やっぱり、何かおかしいよ唯は・・・ちょっとカマをかけようかな?


「う、うんっ。そうみたいだね?まるで、大人の空手家か何かの人がそのまま子供になったような・・・」


「あ、ああ。まるで、私のように・・・あっ」


「?!!!!」


唯は、はっとして両手を口に当てて、おっかなびっくりの表情を浮かべて、私を見つめた。唯は、私の疑問にさっき何と答えた?『まるで私のように』と、ずっと前までは大人だったのに、今は子供という状況だという事を言ってしまった。


しかも、ちょっと男口調。私も男勝りだし、人の事は言えないけど、やっぱり、おかしい。私は、唯に質問した。


「ね、ねぇ、さっきのどういう事?唯」


「へ?!え、えーと、な、な、何か言ってたっけ?わ、私、分かんな~いっ。えへへ~」


唯は、目を泳がせながら、頭をポリポリと掻き、冷や汗をダラダラ流す・・・嘘が下手な女の子だなぁ~。可愛いっ!でも、私みたいな前世の記憶持ちはいるかもしれないので、私は、本当の事を話す事にした。


「あのね、唯。私、前世の記憶持ちなんだ。私は、元・高校生だよ?」


「えっ、えぇぇ?!ま、マジでか?!」


唯は驚いて口が開きっぱなし。ていうか、素?が出ているよ?唯。

 そんな唯は、頭をポリポリと掻きながら、うーんと唸って、しばらくすると、私の顔を見て微笑みかける。


「じ、実は、私もそうなんだよね~。私の場合は、元・大学生なんだよ~。えへへ~」


「えっ、えぇぇ?!だ、大学生ぇ~っ?!」


唯は自分の正体を暴露するけど、元・大学生なんて・・・それはそれはツラいんじゃないかな?

あ、ちなみに私達はこの話を体育館の隅でしている。でも、大声で驚きの声を上げているので、皆の耳に届いているんだ。しかし、大声で大学生だの高校生だのという単語を発しているので、皆には何のことなのかよく分かってないらしいから、助かった訳なのだ。


「・・・ついでに伝えるけど、元・男です・・・ハイ」


「?!!!」


更に唯からとんでもない情報を耳にした私。唯が元・男の子だったなんて、想像出来なかった!で、でも、不良達を追っ払ったあの威嚇とか喋り方を耳にした私にとっては、どこか『やっぱりな』という納得が生じてしまったんだ。

 

「こ、この事は内緒という事で手を打ちましょうっ。色々、めんどくさそうな事が起きるかもしれないからっ」


「そ、そだね~。うん、そうしましょう~。胡桃ちゃんっ」

 

私は唯と固い握手をして、結託した。前世記憶持ち同士として、仲良く助けたりしようと。あ、そうそう、唯は、元・男の子だったね?私は、唯に少し警告をしよう。


「唯。分かっていると思うけど、自分が女の子だからって、自分の身体をベタベタ触ったり、他の女の子の身体を触ったりするのは禁止ね?分かってるよね?」


「・・・善処します・・・」


唯は肩をガックリと落とし、落ち込む。可愛い顔が落ち込んでいるのを見た私は、ちょっとドキッとときめいた事は内緒にしておこう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昼休み。

私と唯は、美仁香の正体を探る為に、美仁香をグランドにあるジャングルジムへと連れて行き、周りに人は居るけど、話す内容はグランドにいる子供達の楽しむ声によって消されるし、私や唯、美仁香が聞ければいいので、安心なんだ。


「え、えっと、何?僕に話があるの?」


美仁香は姫カットに切られた長くて黒い美しい髪をなびかせて、首を傾げる。うぅっ!か、可愛いっ!顔は整っていて、体型はすらっと細いし、将来アイドルになれそうな可愛さだ!い、いやいや、そんな場合ではないっ!で、でも、あまりの可愛さに翻弄してしまう。


私は、唯にアイコンタクトを送り、唯から話せと指示してしまう。唯は、こくりと頭を頷かせて口を開く。


「美仁香ちゃんさ、前世の記憶持ってる?」


「にゅあ?!!」


唯の質問に、変な声を上げる美仁香。か、可愛いっ!私は思わず、美仁香に抱きついてしまった!


「うわぁ~っ。あたたか~い」

「うわぁ?!は、放して~っ」


私の尻尾は左右に動き、耳もピクピク動いてしまう。美仁香の暖かさと抱き心地がよろしいから放したくはなかった。


「美仁香、もう一度聞くね?あなたは、前世の記憶を持ってますか?ちゃんと答えないとぉ~?こちょこちょ~っ」


私は両手を使って美仁香を抱きしめていたので、尻尾を使って美仁香のわき腹や首元に尻尾を動かしてくすぐる拷問をしていた。けど・・・


「ちょ、ちょっ、にひひっ♪にひひっ♪」


「ふふふっ♪は、早く答えて~っ。くすぐったい~っ」


美仁香をくすぐらせるのは成功した。でも、私自身も尻尾が人肌に当たって、くすぐったくて本末転倒な拷問となったのだ。


「にひひっ♪あぅっ」「ふふふっ。あふっ」


私が拷問している筈なのに、傍から見たらいちゃついている女の子二人なのだ。

とりあえず、美仁香を開放してやり、美仁香は目をトローンとさせ、頬に朱を浮かばせ、自分の世界へトリップしたのか顔を俯かせる。恥ずかしがり屋さんなのは間違いなさそうだけど・・・


「え、え、えっと・・・まず、唯や胡桃の正体を言って?そしたら信じられるかも・・・」


美仁香はまだ顔を赤らませながらも、私達の顔を見て質問。私達は、本当の事を美仁香に伝えてあげた。


「そ、そうなんだ~・・・へぇ~・・・高校生に大学生・・・あ、皆には絶対に言わないでね?約束するなら僕の事を正直に言うよ」


美仁香の願いに私と唯は頭を縦にこくりと頷き、絶対に他言はしないと約束。美仁香は、ひとまず深呼吸して、私達をキッと見つめて、口を開く。


「ぼ、僕も前世の記憶を持っているよ・・・元・中学生・・・だよ?わ、分かってると思うけど、僕は、元・男なんだ・・・」


「「?!!」」


私と唯は驚きの表情を浮かべる。唯も美仁香も元・男の子らしい。こうやって何人も前世の記憶持ちを所有している人物と遭遇出来るのは、私みたいな亜人種がいるこのファンタジーの世界だからなのか?!はぁ・・・もう前世の記憶持ちの持ち主には会いたくもない・・・。


「こ、心の友よっ!」

「ふぇっ?!」


唯は目を輝かせ、美仁香の手を握り、固い握手。元・男の子同士だから何かを感じたのかもしれないけど、女の子である私には到底理解出来なかった・・・


「いや~・・・女の子になって、なんだか、つらかったよね~」

「うんうんっ!なんかイヤだったよねっ!仕方がないとはいえっ!」


唯と美仁香はすぐに意気投合し、無邪気な笑みを浮かべて雑談。たかだか女の子になっただけなのに、別に困る事はないと思うんだけどな。


「あ、それと、唯は、いつからその女の子みたいな口調になった?自然に話しているっぽいけど」


「え、え~と、両親の圧力とか友達の圧力とかを感じて普段でもこんなんなっちゃうんだよね~。えへへ~。参った参った~」


「にひひっ。その割には楽しそうだけどっ。あ、そろそろ昼休みが終わりそうだから、帰ろ?唯っ、胡桃っ」


私だけ蚊帳の外だ。話が弾んで楽しそうな唯と美仁香・・・うーん、私、この二人と仲良くなれるのか、心配するけど、いつか仲良くなれる日が来るまで待つ事にしたのであったーー。




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