第5話 クリスマス
時は流れ、十二月二十五日。所謂、クリスマスである。
外は雪がしんしんと降り注ぎ、雪が積もっていて、雪合戦とか雪だるま等出来る程なので、私と美乃莉はというと・・・
「「わぁい♪」」
我が家の玄関先に出て、無邪気な笑みを浮かべて雪を楽しんでいるのだ。私は美乃莉と雪だるまを作っていた。
ちなみに、エゾシマリスは冬眠する動物なのだが、私は人間ので、冬眠はしないらしい。ってか、人間が冬眠したらどうなるんだろう?誰か実際にやってみてくれ。
「胡桃っ、雪だるまさんにも尻尾つけようよっ」
モフモフしたリスの尻尾を左右に忙しそうに振っている美乃莉。ピンク色のジャンパーを着こなし、ピンク色のミトン、それにピンク色のニット帽やピンク色のマフラーを身に纏い、寒さを凌ぐ・・・のだが、リスだからなのか、寒さはあんまり感じない。大きなモフモフの尻尾により、防寒具よりも寒さを凌げるというのだ。暑さには弱いが、寒さには強いという小動物らしい私達だ。
私の服装もだいたい美乃莉と同じで、端から見たらドッペルゲンガーの現象に遭っている少女と思われるだろう。見た目は、まるで双子みたいだからな。
「お~♪」
そんな美乃莉に似ている私は、雪だるまに私達と同じように、大きな尻尾の部分を作り、雪だるまの後ろ側に合体させ、目や口には木炭をつけ、耳の部分も雪で作成し、リス系雪だるまの完成だ。うーむ、完成度高いなぁ。
「わぁい♪出来たー♪」
美乃莉はリス系雪だるまを完成させた喜びで、おおはしゃぎ。その顔には無邪気な笑み、そして大きな尻尾を左右に元気よく、ぶんぶんと振り回すのだ。まるで、ヘリコプターが離陸するようなプロペラのように・・・いや、言い過ぎだな。犬のように、と言っておこう。
「良かったねっ、お姉ちゃんっ」
私は美乃莉に絶賛の言葉を送り、美乃莉は恥ずかしそうに顔に朱を浮かばせて、私に抱きついてしまう。いや、なんでだよっ!いや、いいけども!
「にひひーっ♪もっと、ほめてー」
美乃莉の可愛さに翻弄された私。私の尻尾も犬のように左右にフリフリと忙しそうに動いている・・・はぁ、私は子供が好きなのか?まぁ、女の子はだいたい子供好きだからなぁ~・・・私に母性本能が芽生えたとか?そんな感じだろうか?
「はいはい。よしよし、いい子いい子~っ、お姉ちゃんっ」
私は笑顔を浮かべつつ美乃莉の頭を撫でて、美乃莉は尻尾を未だに振り回し、ご機嫌がよろしいようだ。うむ、犬みたいなリスだな。ってか、リスも犬のように嬉しいと感じたら尻尾を振るのだろうか?リスが尻尾を振る時の原因は、何かしらの警告を表す時、つまり威嚇の時だ。あとは、好物の食べ物を食べる時ぐらいだと言われていた気がしたのだが・・・新しい発見ができたものだな。
更に、尻尾がだらん、と下向き方向に下がった事は今まで無い。もちろん、母親もだ。リスは尻尾をだらんと下向き方向に向かせる事が多々あるのだが、私達がそれが無いのだ。それは何故か分からないが、人間と動物の血が混ざりあった亜人種という生き物として特徴的なものではないか?という事を、父親からほのめかさせてやったのだ。
「じゃあ私は、胡桃に抱きつくっ」
「うにゃあ?!」
美乃莉は突然、私に真正面から抱きついたのだ。そんな突然の行動を予知出来なかった私は、美乃莉からぎゅっと抱きしめられるのだ。う、う~ん、温かいなぁ~。ってか、私、さっき変な声出さなかった?言ってないよな?聞いていないよな?お願いだから、言っていないと言えよ?美乃莉よ。
「にひひ~っ♪さっき、うにゃあって言った~っ。かわいいっ」
私の願いは神に届かず、美乃莉は無邪気な笑みを浮かべ、俺の顔を真正面から見つめてくる・・・か、かわいいなぁ~・・・目の色が栗色でその目がクリクリしてて可愛いんだから・・・栗だけにね!ここ、笑う所だぞ?ガマンしなくてもいいんだぞ?
いや、それよりもだ。今さっき、可愛いと言ったよな?私は、これまで可愛いだの綺麗だの言われた事は・・・まぁ、お世辞として多々あったのだが、真正面で無邪気な子供に言われた事は初めてなのだ。嬉しいけど、恥ずかしい・・・
「ぅぅ・・・お姉ちゃん、私にあんまりかわいいって、言わないで~」
「どおして?胡桃、かわいいのに?」
「あぅっ?!」
美乃莉はまだ無邪気な子供なので、私の心中は分からずじまい。それはそうだろう、可愛いと褒めているのに、イヤがる理由なんて皆目見当もつかないだろう。いや、それよりもだ。
「そっ、それより、早く家に帰ろう?お姉ちゃん。風邪引いちゃうかもよ?」
私は家に帰って、こたつに入りたいのだ。尻尾や防寒具で寒さを凌いでいるとはいえ、長い間外に出ていたら、私や美乃莉が風邪を引くかもしれないので、美乃莉をなんとか説得して、美乃莉は私と手をつないで、仲良く我が家へと入っていったのであった。
ーーーーーーーーーーーーー
「今日は、クリスマスだよね?サンタさんに何をお願いしたのかな?」
私達姉妹はリビングに設置したこたつに潜り込み、無邪気な笑みを浮かべのほほんとしていた。
だが、そんな姉妹にサンタの存在を肯定した上で、母親は今回の話題を放り込むが・・・いや、サンタはいるさ。うん、サンタはいい子にしていた子供にプレゼントしてくれる筈さ。
「えっ?!サンタさん、来てくれるの?!やったー♪」
美乃莉は、おおはしゃぎ。両手を万歳して、その顔には無邪気な笑みを浮かんでいた。私も、今日はサンタを信じるので、美乃莉と同じように、嬉しがる演技をする・・・が。
「わ、わあいっ。サンタだ~ぁ」
棒読みだ。まるで、サンタという存在を信じないという事が分かりきれる事が分かる・・・だから
「あれ?胡桃ちゃん、もしかして来てくれないって思っているの?」
母親は私の反応に眉をひそめ、尻尾をふりふりと左右に動かし、私を疑う。私は、とっさに思いついた言葉を発してしまう。
「う、ううんっ。さ、サンタは来るよっ!ね?お姉ちゃんっ」
「そうだよ!きっとサンタさんは来るよ!」
美乃莉と意見を同調させ、サンタがいるという事を信じきっている子供にしか見えない訳だ。
「そおなの。さ、ご飯が出来ているから、食べましょうか」
「「はーい」」
私達は食卓へと足を運び、一家団欒の一時をすごしていったのであったーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
夜。
私達家族は、和室にベッドを敷いて、眠っていた。
私は、寒さによってお手洗いに行きたくなったので、皆を起こさないように、慎重に身体を起し、立ち上がったら・・・
「「「・・・・・・・」」」
サンタだ。サンタクロースの格好をした真っ白いヒゲを口元に蓄えて、体型はすらっとしているデカい白い袋を持ったオッサン。
あと、トナカイっぽいオッサン。
頭にはトナカイのような角が頭に一対生えていて、後ろにはトナカイの尻尾が生えていた。体型はサンタと同じすらっとしているオッサンなのだが・・・ま、まさか、亜人種なのか?!このトナカイのオッサンは?!
「「メリークリスマス」」
二人のオッサンは私を見て、にっこりと笑い、挨拶してくれる。私は、深々と頭を下げて
「め、メリークリスマス」
サンタとトナカイに挨拶する。
まさかまさかのサンタがいて、トナカイは亜人種という事実が判明してしまったのを私は夢だと思った。でも、違う。現実なのだ。
「じゃあ、プレゼントを・・・」
サンタは持っていた袋から二つピンク色の包装に包まれたプレゼントを一つは美乃莉の枕元に置き、一つは私に直接渡してくれたのだ。
「ふふふっ。じゃあね、かわいいリスのお嬢ちゃん」
サンタとトナカイは微笑み、我が家を出ていったのであった・・・のだが、一体、どうやって我が家に侵入したのだろう?戸締まりは、ちゃんとした筈なのに・・・
「・・・そっとしておこう・・・あ、それより、お手洗いっ!も、もれるっ」
私は考えるのをやめて、お手洗いを済ませていたのであったーー。
あ、そうそう、翌日プレゼントが枕元に置いてあったのを見た美乃莉は、大はしゃぎで喜び、私もプレゼントを貰った事を知り、いつまでも喜びを分かち合っていたのである。
ちなみに、プレゼントの内容は・・・リスの人形だったのだ。何かしらの意図が絡んでいると思ったのだが・・・そっとしておく事にしたのだ。
子供の夢は壊さないようにしましょうね。
サンタは、実在します。いや、本当に。