第4話 尻尾はモフモフに限る
時は流れ、夏のある日の休日。
太陽は燦々と光りを注ぎ且つクソ暑い熱を私達生物達に与えてくれるというありがた迷惑をうけつつ、私や美乃莉、母親はというと・・・
「「あつ~い・・・」」
「そうね~、暑いわね~、尻尾があるから余計に暑いわ~」
我が家のリビングにて、暑さでダウンしていた。尻尾のモフモフのフワフワなので毛布をずっと自分の身体についている感じで、その尻尾及び外の暑さで参ってしまう。邪魔だなぁこの尻尾。引きちぎったらどうなるんだろう?でも、怖いので止めておく・・・けど、やはりクソ暑い。
「く、胡桃ぃ~。た、助けてぇ~」
美乃莉は私に近寄り私を尻尾もろとも真正面から抱きついてきた。私はそんな訳の分からない行動をとった美乃莉に対して
「だ、抱きつくなぁーっ!暑苦しいっ」
抱きついてくる美乃莉を力一杯引き離そうとするけど、四歳の子供の力ではいくら子供といえども、その子供を引き離す事は不可能だ。
「え~・・・ダメぇ?」
美乃莉は私の目の前に顔を近づかせてから首をこてん、と傾げ且つ上目遣い且つ目をウルウルとさせて私を翻弄。か、可愛いっ!
「ちょ、ちょっとだけならいいよ?」
気を良くした私は思わず抱きしめても良いと答えた為、美乃莉は無邪気な笑顔を浮かべて、再び私に真正面から抱きついてきたのだ。
「にひひ~っ♪あつ~い♪」
「・・・暑苦し~い・・・」
美乃莉は私を抱きしめるのが嬉しいからか尻尾は左右にフリフリして、耳はピクピク動かしていた。私の尻尾はというと、暑苦しくて嬉しいとは思わなかったのかピクリともしなかったのだ。
「あらあら~、元気が良くていいわね~。あ、そうだ尻尾のお手入れはちゃんと自分でしないといけないわよ~」
母親からブラシを貰う私達姉妹。それを見てキョトンとする私達。何故尻尾のお手入れをしないといけないのか分からない・・・ま、まさか、尻尾までも女の子の嗜みとして綺麗にしないとモテないだの可愛くないだのと言われるのか?!
「まだ小さいし、手が届かないから、仲良くかわりばんこして尻尾を綺麗にしててね?」
母親はそれだけを伝えキッチンへと足を運び、リビングから姿を消した。父親は残った私達のお世話をするのでリビングにあるソファーに腰をかけて、ニヤニヤしながら私達を見守っていた。うわっ、気持ち悪っ。
「まずは胡桃からやってあげるね?」
私達はリビングの床に座り、美乃莉は父親の異変に気付かず、私の尻尾をブラッシングするのだが、今も尚父親は無邪気な笑みを浮かべていた。
「わぁ~・・・モフモフのフワフワだっ♪にひひ~っ。つんつんっ」
美乃莉は私の尻尾をブラッシングしつつ、私の尻尾をつんつん突っついてくる。くすぐりを受けたような刺激が来て、思わず笑ってしまう。
「ふふっ♪」
私の尻尾をいつまでもブラッシングしつつ、突っついていたので、私はこれ以上のブラッシングは不必要と察し、美乃莉が持っていたブラシを貰い、私に背を向ける。
「じゃっ、お手入れするね~。お姉ちゃん」
「うんっ♪」
私は美乃莉の尻尾をブラシでお手入れする。
あ、そうそう、尻尾は臀部と腰の境目に生えていて、ズボンやスカートを履く時には困るのだ。尻尾が邪魔をして、普通のズボンやスカートが穿けないのだ。ローライズという、パンツなどのボトムスにおいて股上が浅い、つまり股間からウエストまでの丈が短いデザインのモノを穿くしかないのだ。
それに、普通のTシャツ等も着るのも一苦労。普通のシャツを着たら、大きな尻尾でシャツが持ち上がり、背中の肌が多少丸出しになってしまうのだ。
亜人種専用の洋服も近所の洋服やにて、出回っているらしいのだが、私達のような大きな尻尾を持ち合わせたような亜人種専用の洋服は数少ないらしい。
「うわっ。フワフワっ」
背中の肌を丸出ししつつも、私は美乃莉の尻尾をブラシでお手入れしつつ、それが嬉しいのか美乃莉の尻尾は左右に忙しそうに振るから手で押さえて尻尾に直に触ってみたけど、それがフワフワのモコモコなのだ。ず、ずっと触っていたいなぁ~。
「むぅっ、胡桃ばっかりズルいっ!私も触るもんっ」
私が美乃莉の尻尾を触っていたら、美乃莉はむっとした表情を浮かべて、私の背に素早い行動で回り込み、私の尻尾を触ってきた。
「それそれ~♪」
「ふふふっ♪くすぐったいよぉ~」
美乃莉は無邪気な笑みを浮かべて楽しんでいるご様子。やられっぱなしはイヤなので私も身体をうつ伏せに寝かせ、手を精一杯伸ばし、美乃莉の背にある尻尾を触る事に成功。
「にひひっ♪やったなぁーっ。それそれぇ」
美乃莉も身体をうつ伏せに寝かせ、互いが尻尾を触れるように尻尾同士をくっつかせて、尻尾を自由自在に操って私の尻尾を攻撃してきた。けど、モフモフの尻尾なので無痛。イヤな気分にはならないのだ。むしろ、くすぐったい気分になってしまう。
「美乃莉、胡桃。ちょっとそのまましてろよ?」
父親は急に立ち上がり、私と美乃莉の間に寝転んでしまった。そんな父親の行動を見た私達姉妹はキョトンとしていた。な、なんなんだ?一体・・・
「ほら、今さっきの尻尾同士でつつき合いしてたでしょ?オレごとやってくれ」
父親の目的は私達の尻尾のようだ。尻尾のモフモフを独り占めするという気持ちがイヤと分かってしまう。美乃莉はまだ無邪気な子供なので、父親ごと私の尻尾を尻尾で攻撃してきたのだ。
「うりうりぃ~♪」
「ぬふふふっ♪ぬふふふっ♪」
美乃莉の尻尾と私の尻尾は父親の身体にまとわりついて、父親は気持ち悪い声をあげて満面の笑み。
美乃莉は私と遊ぶのが楽しいからか、いつまでも父親ごと私の尻尾を尻尾で攻撃していると・・・
「・・・あなた、何やってるの?」
母親はドン引きした表情を浮かばせて、父親を見つめていたのだ。ドン引きされた父親はというと・・・
「娘達とじゃれ合っているんだよ?分かんない?あ、お前にもじゃれてあげようか?」
キョトンとした表情を浮かべて、母親にも弄ぶ気持ちがあるようで、母親に手招きしてハーレム気分になりたいご様子な父親。
そんな気分になりたいとは分かってない母親はというと・・・
「うぅっ。す、少しだけだよ?はい、尻尾」
父親に近寄り、父親に背を向けて尻尾を差し出す。父親は私達姉妹と母親の尻尾を弄ぶのだ。
「うふふっ♪うふふっ♪」
「にひひ~♪」
「ふふふ~♪」
私達女性軍は尻尾が弱点となり、くすぐりの刺激を受けて無邪気な笑い声をあげてしまう。そんな笑い声を聞いた父親は・・・泣いた。なんでだよっ!い、いや、ま、まさか!
「・・・幸せだっ。うぅっ、どうせくしゃみが出そうで出ない呪いがかかるんだ!うぅっ」
そのまさかのネガティブモード突入。もう、勝手にしてろよ・・・
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そして時は流れ、風呂の時間となった。
私達姉妹と母親のみで風呂場へと移動し、服を全て脱ぎ捨て、風呂に突入。
私達は耳及び頭から洗い、肩、腕、背中・・・と上から順に洗っていく。そして、尻尾も亜人種専用のリンスインシャンプーでわしゃわしゃと洗い、泡を湯で洗い流し、湯船に浸かる。
こうした工程で湯船に浸かっても尻尾の毛はあまり湯船に浮いてこない。少々浮くが、別に困らない。
「気持ちいいわね~」
「「うん~」」
母親との入浴に私達は幸せを感じ、無邪気な笑みを浮かばせて、耳や尻尾をピクピクと動かしてしまう。
「こぉらっ。そんなに尻尾を動かしたらお湯が少なくなっちゃうでしょ?まぁ、私も勝手に動いちゃうけどねっ。うふふっ♪」
母親も無邪気な笑みを浮かばせて、自分の尻尾を指差して、その尻尾が勝手に動いてしまう事を私達に伝える。もちろん、母親の頭部のリス耳もピクピクと動いている。か、可愛いなぁ~。
私は、そんな可愛らしい母親とまだ幼くて可愛い美乃莉との入浴を心ゆくまで堪能したのであったーー。
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時は流れ、就寝の時間となった。
私達は和室に家族全員分のマットレスを敷き、シーツや薄い布団等を敷き、私はそのまま布団の中へダイブ。
「にひひ~。く~るみっ♪そりゃっ」
美乃莉は私がダイブした布団に入り込み、私に抱きついてきたのだ。
「お、お姉ちゃん?」
おっかなびっくりの表情を浮かべる私。ちゃんと人数分布団は敷いた筈なのに・・・いや、多分、私とじゃれ合っていたいのかな?可愛いヤツめ!
「このこの~♪」
私も美乃莉に抱きつき、両手で美乃莉の身体を包み込み、さり気なく尻尾を触ってみた。や、やはり、モフモフで気持ちいいっ!
「にひひっ♪やったなぁ~?このぉ♪」
美乃莉もすかさず反撃。美乃莉は両腕で私の身体を包み込み、手で私の尻尾を触ってきた。その攻撃でくすぐりの刺激を受けた私は笑ってしまう。でも、その反撃に屈しないで、美乃莉の尻尾をいつまでも触っていたのだ。
「にひひっ♪にひひっ♪」
「ふふふっ♪ふふふっ♪」
両者は尻尾を触るのを止められずに、いつまでも触り合っていたのであったーー。
一方、両親はというと・・・
「よしよし、怖い夢を見たらオレの布団の中に入れよ?絶対だよ?」
「う、うんっ♪」
父親は母親の頭と尻尾を撫でて、ムカつく程の仲の良い夫婦関係を私は見て見ぬフリをしていた。
「すぅ・・・すぅ・・・」
美乃莉は私とじゃれ合って、疲れたのかいつの間にか静かに寝息を立て、微笑みを浮かべて眠っていた。しかも、私に抱きついたままだ。美乃莉を引き離すのも可哀想なので、私はそのまま眠る事にした・・・けど、美乃莉は眠ったまま私の尻尾を触ってきたのだ。
「あふっ」
変な声を出してしまった私。は、恥ずかしいっ!そんな辱めを受けた私はウトウトとし、夢の世界へと誘われたのだったーー。
「にゃふっ、にひひっ」
「ふっ、あふっ」
私達は夢の世界に行っても互いの尻尾を触っていたのであったーー。
うーむ、私も尻尾さわりたくなるっ。
よし、動物園へ行こうっ。