一人目:ノートパソコン
嫌いな学校から開放された帰り道。ふと視線を上げると、ひっそりと雑貨屋さんがあった。
『木村 紗枝』は気まぐれに、その中へと入っていった。
カランカラーン
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「あっこんにちは。えっと、特に何も」
店の主だろうか。20代後半といった様子の好青年がレジでくつろいでいる。
店を見渡すと、いろんなものが並んでいる。その中で紗枝は、小型のノートパソコンに目が止まった。銀色のボディで学生用の学生用の鞄にでも簡単に入りそうだ。
紗枝はそれがとても欲しくなった。しかし、小さくてもパソコンである。高校生である紗枝にとっては、とても買えそうも無い。
「そちらが気に入りましたか」
店の主はそれを手に取り、紗枝の前に持って来た。近くで見ると、ますます魅力的である。使いやすさを一番に考えてあるようなシャープな形といい、色といい全てが紗枝好みである。
「ええ、まぁ。でも、私はまだ高校生ですから。パソコンはちょっと・・・」
「これは当店オリジナルですから。少し協力下されば安くしておきますよ」
そう言って店主は一枚の紙を渡した。
『会社や学校でも嫌な事・物・人を消してみませんか?クリック一つで貴方の楽しい日々が待っています』
「これって一体なんですか?」
紗枝が訝しげに問うと、店主は声を潜めて答えた。
「このパソコンの性能を試したいんです。そこで貴方にこのパソコンをたった1万円でお譲りしましょう。但し返品不可ですけど・・・」
「これが1万円!?それで何をすればいいんですか?」
「自分の消したいものを消してくれればいいんです。そうすれば自動的に私に分かるようにしてありますから。あぁお金は後日で結構ですよ」
店主は説明しながら、ノートパソコンを綺麗に箱詰めして、紗枝に手渡した。
紗枝はその箱をなんともいえない表情で見ている。
「一つだけ注意点が、・・・・・・・は決してしないようにしてください」
「はい。分かりました」
紗枝は上の空で店主の話を聞き、店を後にした。