第1話 「二人の出会い」
森林の多いこの世界、城や町が点在し、その周りには高い壁がある。ヴァンパイアが侵入してこないようにするためだ。森林には数多くのヴァンパイアが存在する。そのため、「ハンター」という職業が出てきたのである。ハンターというのは、特殊な訓練を受け、ヴァンパイアとの戦闘を専門に扱う、言わば対ヴァンパイアのスペシャリストだ。主に、ヴァンパイアを狩って、ハンターオフィスというヴァンパイアを引き取るところで賞金をもらう。その額は症状の進度状況によって違う。もちろん、進んでいるほど高くもらえる。
「プリスト」という国の首都「シャナル」というところに「ミクリ」という若い男のハンターがいる。「シャナル」は国王がいる城があり、その城下町の家にミクリは住んでいる。彼は小さい頃にハンター育成所に通い、昨年に卒業してハンターになった。現在は、期待の若手として活動をしている。
そのミクリは今はヴァンパイアを狩るために森の中にいた。ヴァンパイア用に作られた剣を片手に周囲を警戒しながら歩いていた。夜が明ける朝方、ヴァンパイアの活動が最も鈍くなる時間帯だ。基本的に、ヴァンパイアは夜に最も盛んに活動をする。そして、昼間は日差しから避けるように過ごす。だが、症状が末期でなければ、昼間は人間の状態、つまり理性がある状態に戻る。
未だに薄暗い森の中、ミクリは五感の全てを研ぎ澄ましながら歩く。その時、ミクリの左の方にバキバキという音がした。ミクリは剣を音のした方向に向けて構えた。音の正体は木の上から人が落ちてきたのだった。すると、ミクリは一種の衝撃を受けた。落ちてきた人の正体はちょっと髪の長い華奢な女性だった。それは何とも可憐で瞳が少し青みがかかっていて透き通っていた。
年は自分とさほど変わらないようだ。だが、ヴァンパイアになってしまっているようだ。幸いにも、肌の色とかから見てまだ初期症状だろう。なんとか、助けたい。ミクリは不意にそう思った。いわゆる、ミクリは一目惚れをしたのだ。
女性はミクリを見るなり、一目散に逃げ出した。
「あ、ちょっと待ってくれ。」
ミクリの声は届くはずもなく、ミクリの視界から彼女が消えた。
「はぁ、はぁ、はぁ……逃げなきゃ、殺される……。」
ヴァンパイアの彼女は息を切らしながらも必死に走った。ハンターから逃げるために、ひたすら。
「はぁ、はぁ……きゃあ」
元々、運動は得意ではなく、ヴァンパイア病の恩恵をまだあまり受けてない彼女がよろけついたときに、別のヴァンパイアとぶつかって転んだ。そのヴァンパイアは彼女に気がついた時、声を荒げながら襲いかかった。ヴァンパイア同士、襲うことも珍しくはない。
「走れない……もうダメ……。」
彼女が諦めかけた時、彼女の後ろから突然、人が飛び出してきて、そして彼女に襲いかけたヴァンパイアを真っ二つにした。その人は、ミクリだった。
「大丈夫か?」
彼女はきょとんとしているようだった。ミクリは彼女に手を差し伸べて「僕の名前はミクリ。君のヴァンパイア病を治したいと思ってるんだ。」と言った。彼女は彼のまっすぐな目を見て安心をした表情をした。
「ありがとうございます。うれしいです。私は『ユカリ』です。」
そして、彼の手をとった。
次話は諸事情により来年以降になります。