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カンナ  作者: Gardenia
第二章
31/36

2-31

書きかけの文章が途中でアップされてしまいました。

長く気が付かずに申し訳ございません。


追加して再アップします。

さっそく午後のワイドショーでこの事件の報道が始まった。

あれを目撃したホテル利用客がツイッターなどに流したのだろう。かなり詳細にキャスターやコメンテーターが見てきたように喋っている。


メディアにリリースする文章や取引先への応答準備を整えると同時に

社内に向けての対応メニュアルを送信したと報告がきたのでカンナは一息ついた。


急に予定をキャンセルした各方面からはお見舞いの花が届き始めている。

カンナの携帯電話にも着信が増える。

ワイドショーを見てカンナが怪我をしたことを知り母が慌てて電話してきた。珍しいことに兄からも連絡があった。

それぞれにたいしたことはないと安心させ、一段落したら帰省することを伝えた。

数少ないカンナの女友達も何人かが連絡してきた。

電話だったりメールだったりするので、捻挫した足をソファーに投げ出した格好で携帯とノートパソコンを交互に操っていたところ、琢磨から携帯にメッセージが届いた。

『大丈夫か?都合のいいとき連絡くれ』

たったそれだけの短い文章にカンナは少し考えてから元気印のアイコンだけ返信しておいた。

何も送らないと電話がかかってきそうだ。そういう時の琢磨のリアクションを想像するだけで可笑しくなった。

夜でも電話してみるかなと思っていると、田所が打ち合わせに到着した。



田所はもう一人の弁護士とアシスタントを同行していた。

「一階は報道陣が来てるよ」そういいながら田所は上着を脱ぎ椅子に掛けた。

「兄が担当しようかと言ったんだけど、僕は兄じゃないほうがいいと思うんだ。どうだろうか」

カンナは少し考えたうえで、「そうね、金額が大きいから話題性はあるけど彼女は実際には支払えないだろうし。そうなると地味な案件になると思う」


「先生はそれでもいいですか?」とカンナは同行の弁護士に聞いた。

「はい。もちろんですよ。興味のある事件ですからやりがいもあります。

普通この手のことは示談にしてしまう場合が多いのですが、今回は示談は無いと思っていいですか?」

「はい。告訴できるんですよね?出来るものは全部提出してください。それから後のことは裁判所に任せましょう。」

「わかりました。私のほうはその確認をしたかったもので...」


「君の元旦那にも連絡をとるつもりだけど、かまいませんか?」田所が口を挟む。

「ええ。その必要はあるでしょう。彼も騙されたのだから何か考えていると思うし。弁護士同士で調整できるかもしれないですね」とカンナは頷いた。


それからさらに細かな打ち合わせを終え、カンナが直接連絡が必要なところに電話を終えたのはもう日付が変わるころだった。

遅くまで残っている秘書に労いの言葉をかけるとそれを合図に秘書がカンナに新しい携帯電話を手渡した。

「ではこれは置いてお行くからよろしくね」といつも愛用の電話をコーヒーテーブルに置くとカンナは立ち上がった。


新しい携帯電話には必要な連絡先のコピーやアプリがすでに搭載されていてそれを持って別のホテルに移動する。

古い電話のGPS機能はONにしたままこの部屋に残しスタッフ管理となる。


地下の従業員出入り口に待たせた車に乗り込み、同系列のホテルにカンナと個人用秘書が移るだけで他の機能は今まで同様となる。

あくまでカンナはこれまでと同じホテルに滞在しているように見せようと細心の注意を払っている。


その日カンナがベッドに入ったのは午前2時をいくらか過ぎた時間だった。





翌日はゆっくり休んでくださいと言われてはいたものの、いつもの時間に目が覚める。

カンナはぱっちりと目は開けたものの頭の芯がひどく疲れていた。

もう一度目を閉じたものの眠れそうにないので、起き上がって部屋を見渡した。

バスルームを確認してから続き部屋に入るとそこは小さなリビングになっており、ソファーの他にダイニングテーブルもある。

ルームサービスを躊躇って部屋にある電気ポットでお湯を沸かしコーヒーを淹れた。


カフェインの力を借りながら少しずつ覚醒していく。

バスローブを羽織ったままソファーに足を投げ出して座り、昨日用意してもらった携帯電話に手を伸ばした。


琢磨に短いメッセージを送る。

前の電話に彼が連絡を入れる前に・・・と。

次に隣に居るはずの秘書にもメッセージを送っておいて、カンナはシャワーを浴びることにした。




カンナが身支度を終えてリビングに戻ると、携帯画面にメッセージ着信の知らせがポップアップされている。

案の定琢磨からのメッセージが届いている。

時計を見るともう10時近くになっていたので、カンナは迷わず電話をかけた。



『おはようございます、カンナです』

『おお、大丈夫か?』

『ご心配おかけして。たいしたことないんですよ』

『捻挫だって?』

『そうなのよ。大げさに包帯巻いてもらってる』

『テレビ観たか?』

『今朝はまだ・・・です』

『足を切断したような勢いだよ』と、琢磨は笑った。


『テレビ観たくない・・・』

『観なくてもいいんじゃないか?』

『まぁ、そういうわけにもいかないでしょう』

『結局観るんだな』

それにはカンナはため息で答えた。


『電話変えたんだな』

『これは臨時なの。また変えるかもしれないし』

『たいへんだな』

『当分、たいへんですわ』

『しばらくこっちのほうには?』

『当分行けないわ』

『わかった』

『工事のほうはよろしくお願いします』

『わかった』

『じゃ、そろそろ切るね』

『おお。また連絡くれよ。こっちからはあまりしないほうがいいだろうから』

『電話は落ち着かないからメッセする』

『しっかり食べるんだぞ』

『はい、お父さん』

『こら、誰がお父さんだっ』

『だって・・・昨日実家に電話したらパパにも同じこと言われた』

『エネルギーがないと戦えないからな』

『うん、ありがと。それも同じこと言われた』

カンナがくすくす笑うと琢磨の声も明るくなって、

『ちっ。笑うなよ。じゃ、またな』と電話を終えた。


スマートフォンの画面は初期の待ち受け画面だ、

琢磨との会話は少しだけ楽しかったのに、なぜか急につまらない気分になった。

そして、そろそろ戦場の様子をみましょうかとカンナは秘書を呼んだ。











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