VOL.8国際日付変更線が見える?
1970年代はファーストクラスでは国際日付変更線通過記念証を配布していた。
当初は立派な扇子だったがこれが色紙になりその内、経費節減で無くなってしまったが。
国際日付変更線を通過する頃を見計らって、機内で「只今、国際日付変更線を通過しました」と案内していたのです。
日本からの行きの便では日付が1日戻るわけで、これがお客さんにはなかなか理解できなかったようでした。
実は私自身も、理屈では何となくわかるのですが、イマイチ納得できなかったのが正直なところでした(笑)
通常の生活では時差という概念が無いので当然ですが、先の戦争で真珠湾攻撃に向かっていた日本艦隊が作戦会議の中で
「国際日付変更線を通過すると日付が1日戻るとしたら、今日この艦からハワイを砲撃しても日付が昨日に戻るのだから砲弾は届かないのではないか?」
という真面目な質問が交わされたという笑い話があったほどで、現在でも大半のお客さんは納得してはいないと思います。
なぜなら、この手の質問が依然としてあるというのが現実だから。
成田を1日の夜出発したのに、ホノルルには1日の朝到着するのですから・・・やっぱり
なんか納得出来ないのです。
さて、当時も今も、国際日付変更線は教科書の地図上では太平洋の真ん中に線がチャンと引かれています。
そこで実際にそんな線があるのだろうと信じているお客さんもいたのです。
ホノルル行きの便で、ある地方の団体客に後部客室担当責任者の男性パーサーが
「もう直ぐ国際日付変更線の上空を通過します。良く見ていてください」
と冗談のつもりで言ったのですが、
「ヘーッ、これは土産話になるな。写真を撮らなきゃ」
と言うお客さんがいて、それにつられて我も我もとカメラを取り出しこの記念すべき
一瞬をカメラに収めようと窓外に目を凝らしていたので、当のパーサー、実は私は
冗談ですよと言おうとしたら、何とその団体客の添乗員までもがこの冗談を信じて
「皆さーん、もう直ぐ国際日付変更線が見えますから、シャッターチャンスを
逃さないように!」
と団体客に声を掛け始めたのです。
しかも、「どんな線なんだ?」とのお客の質問に「紅白の線だそうですよ」
「しかし、船がその線を通る時はどうやって通るんだ?」
「紅白のブイで間隔を空けてあるので、その間を航行するそうです」
なんて、私の言に悪乗りして言ったものですから、困ったのは当のパーサーの私で、
まさか添乗員にまで本気にされるとは思っても見なかったのですから。
やがて、くだんの団体客から「どれだ?見えたか?」
「イヤー、わかんなかったなー」
「そっちは見えたか?」
「いいや」10分程経過して、「なんか見えなかったなー」と言う彼等からの
落胆した声に、私は「生憎丁度雲がかかっていてチョット見えませんでしたねー」と
言ってごまかしたのですが、添乗員の「残念でしたが、帰りにもチャンスはあるので!」
の言葉に今更冗談だと言えなくなってしまたのです。
さて帰りの便で彼等に国際日付変更線が見えたかどうか?
また質問された帰りの便のスチュワーデスはどう対処したのか、今もって気になっています。
次回 VOL 9.ハネムーナーのホノルル症候群




