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1.疎んで疎まれて
「疎まれた人間は人を疎むようになる」
御影は、本の頁を捲りながら独り言のように呟く。
実際、独り言だったのかもしれない。
けれど、彼は張り付いた笑みを浮かべたまま何も言わない。
「どういうことですか」
「そのままの意味さ」
例えば親、兄弟姉妹、親戚、教師。そういった大人から疎まれ差別され続ければ、子供はそれを学んでしまう。
「そういう生き方しか知らない大人になってしまう。俺にはそれが、酷く淋しいことのように思えるんだよ」
御影の視線は、依然手元の文庫本の頁に落とされている。
しか知ら意識は僕に向かっているように思うから不思議だ。
御影は決まって、廃病院の3階病棟にいた。
基本的にはひとつのベッドに腰かけて煙草を吸っている。321号室。3階の突き当たり、一番端の病室だ。
なにか患っていたのだろうか。昔この病院に入院していたとか?
321号室、と無機質に記された札の下には、かすれた名札があった。
随分昔のものらしく、かろうじて「山」と「夜」だけは読み取れた。
御影のことはよく分からない。よく本を読み、理屈的な話し方をするが、自分のことについては多くを語らないからだ。
なぜあの病室にずっといるのかも、なぜ髪が白いのかも。




