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居眠り伯と万能の天才公爵  作者: 中里勇史
オルドナ戦線

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撤退

 皇帝軍とラフェルス・カーリルン軍は、トローフェイルの攻囲を解いて北上を開始した。

 歩兵たちを先行させ、騎兵がトローフェイルに睨みを利かせつつ後退する。トローフェイル駐留軍が突出してきたら、騎兵でその鼻先をたたいて時間を稼ぐという態勢である。


「帝国の連中が撤退しているだと?」

 トローフェイル駐留軍を任されたストヴェン・バンナーボブゾン伯爵は、報告を聞いて怪訝な顔をした。彼らは圧倒的に有利だったではないか。バンナーボブゾンは首をかしげつつ北側の城壁に上って辺りを見回した。

 帝国の歩兵たちが北に向かって後退しているのが見えた。騎兵たちは歩兵たちの両側に展開して、背後を警戒している。

「後を追うべきではないか」

 副将のグンテレール・カルヴァデゾン伯爵が近づいてきた。敵が背中を見せている今が好機ではないか、とカルヴァデゾンは続けた。

「カルヴァデゾン伯爵の言はもっともだが、それよりも王に合流すべきではないだろうか。ナインバッフ公(ケルヴァーロ)はくせ者と聞く。戦力は多いに越したことはなかろう」

「バンナーボブゾン伯爵、しかし合流命令は三日以上前のこと。既に勝敗は決したであろう。主戦場に向かうことに意味があるとは思えぬ」

「確かにその通りだが……」

「僭越ながら……」

 バンナーボブゾンの家臣のカールニューエン・ベンデンフォンゾンが進み出た。

「敵の撤退は、まさに王とナインバッフ公の戦いに決着がついたからではございますまいか。皇帝軍らはナインバッフ公が敗退したことを知って陣を引いたと思われます」

 バンナーボブゾンは目を細めて空を見上げた。

「すると、王はこちらに向かっているということか」

「私はそう推測致します。それに、騎兵戦力を持たない我々が皇帝軍を追ったとしても追い付けますまい。街の周囲に構築された逆茂木や堀を避けながらでは勢いを削がれます」

「なるほど、ベンデンフォンゾンの言う通りだな」

 カルヴァデゾンは、皇帝軍を追う案を取り下げた。

「ナインバッフ公と戦ったからには、王の本隊も無傷では済むまい。王に合流してお守りする必要があるやもしれぬ」

 バンナーボブゾンとカルヴァデゾンは顔を見合わせてうなずき合うと、出陣の準備を始めた。

 土地勘のない彼らは、本隊の侵攻経路だったラデル街道を南下してポルセアルを目指し、そこからゲルペソルを目指すことにした。これはナインバッフ公の後背を取るために以前から取り決められた経路でもある。


「追ってくる気配はなさそうだな」

 ベルウェンはトローフェイル方面を眺めた。カーリルン公軍のヴァル・ポロウェス・ラーエンも、緊張をやや緩めた。逃げ切れるとは思っていたが、万が一ということもある。トローフェイル駐留軍に「騎兵はいない」というのも、根拠のない希望的観測に過ぎない。

「それはそれで、敵の主力とトローフェイル駐留軍が合流してさらに大兵力で北上してくるということだろう」

 ヴァル・バルエイン・ウーゼンが暗い未来を予想した。

「そのときはそのときだ」

 トローフェイル駐留軍への警戒のために最後尾に回っていたポロウェス隊は、馬の速度を上げて歩兵たちに追い付くことにした。今後の作戦のために、早めにミラロールに到着して馬を休めておかなければならない。


「冬の海風はキツいんだよな」

 ベルウェンは襟を閉じながらつぶやいた。

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