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居眠り伯と万能の天才公爵  作者: 中里勇史
ニークリット公国軍

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ワルヴァソン公

 帝国西方の大国フェンエルス王国と隣接するワルヴァソン公国にとって、帝国の動揺は好ましい状態ではない。

 ワルヴァソン公国は、一〇万を超える兵を擁するといわれるフェンエルス王国と単独で対峙している。

 帝国が安定状態であればフェンエルス王国とておとなしくしているしかないが、帝国にワルヴァソン公国を支援する力がないとみれば必ずフェンエルス王国は攻めてくる。現王フェルノフェシス五世はそういう男である。

 彼は狡猾な陰謀家で、機を見るに敏でもある。厄介なことに、優秀だった。ワルヴァソン公インゼルロフト四世はフェルノフェシス五世が心の底から嫌いだったが、能力は認めていた。隙を見せたら寝首をかかれる。

 無論、インゼルロフト四世はだからといって乙女のように震えているわけではない。彼は彼で、フェルノフェシス五世の寝首をかいてやろうと隙を窺っている。

 一方で、インゼルロフト四世はフェルノフェシス五世の弟ダルボーズ公の娘マルリーセネトを妻に迎えている。表面上は同盟関係にあった。この関係を使って相手の力を自分のために利用してやろうとインゼルロフト四世とフェルノフェシス五世は考えている。フェルノフェシス五世の軍事力とインゼルロフト四世の帝国内での影響力。両者の結合は非常に強大だった。

 これが政治というものだ。


 だが、インゼルロフト四世の頭をいま占めているのは、帝国内のこと、ティーレントゥム家のことであった。

 ロレンフスの覇気のなさがまず不審だった。大公時代の面影は全くなくなってしまった。ティーレントゥム家の現当主があの体たらくでは楽しめない。

 ロレンフスがああなった原因の一つは、あの平民の娘の息子だろう。あれは予想外の行動に出ることがある。意外性という面では実に愉快な男だ。

 ロレンフスの思考と行動は、論理的に考えれば読める。論理的であるがゆえに、周囲の環境を設定すれば何をするか予想できてしまうのだ。敵が居て、鉄の剣と木の剣があれば、ロレンフスは迷うことなく鉄の剣を取って相手を切り伏せる。その手に金貨があり、目の前に貧民がいれば金貨を投げ与える。


 逆に、状況証拠から何をしたのかも想像できる。

 インゼルロフト四世はアートルザース三世の葬儀の日を思い浮かべた。

 葬儀のときに見たアートルザース三世の顔。そう、顔だ。誰も不審に思わなかったようだが、幼少期からアートルザース三世の顔を見てきたインゼルロフト四世は気付いた。


 鼻が曲がっていた。


 こう表現するのははなはだ不本意だが、アートルザース三世は非の打ちどころがない美男だった。彼の鼻筋は、それは見事に通っていた。その鼻が、わずかに曲がっていた。あれは、何かを強く押し付けられて折れたのだろう。顔には他に目立った傷もなかった。とすれば……。


 枕を顔に押し付けられた……か。


 誰にやられたのか?

 居たではないか。あからさまに不審な人物が。

 計画的な犯行ではない。衝動的なものだろう。感情の制御がこれまでは完璧だったがゆえに、自らの感情的な行動に衝撃を受けたか。

 あの小僧の感情がそこまで振り切れた原因は何か。自分には制御できない存在。父と兄、だろう。


「アートルザースよ、だからマーセン公の娘を大事にしろと言ったのだ」

 インゼルロフト四世は、不快そうに鼻を鳴らした。

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