グデナーメルトの惨劇 その二
グデナーメルトの城壁の一部を破壊したといっても、投射した無数の石や崩れた城壁の残骸に阻まれて容易には突入できない。グデナーメルトの守備兵たちも集まりつつあった。だが守備兵はわずか一〇〇〇人。突入のために待機していた傭兵は四〇〇〇人。
ピスナー山から石を運んでいた五〇〇〇人の傭兵も集まってきた。エルレゾンド麾下の五〇〇人も突入に参加していた。石や瓦礫をどかす者、弓矢で作業を援護する者に分かれて突入口を広げ、徐々に守備兵を押していった。
程なく、ニークリット公国軍は突入に成功した。
ソルドマイエ二世は、古来のしきたり、つまり「三日間の略奪」を許可した。
遠い昔、貴族や騎士が「戦士階級」だった頃のこと。王が戦いの報酬として戦士たちに与えたのが「三日間の略奪」の許可だった。金目の物を奪い、女を犯し、殺し、捕らえて奴隷として使役したり売り払ったりした。王にとっては懐が痛まず、戦士たちは欲望を解放することができた。
しかしいいことずくめとはいかない。略奪によって街は荒廃し、利用価値が著しく低下する。土地に根付き、土地を支配する体制が固まるにつれて、「三日間の略奪」は禁じられるようになった。街はなるべく無傷で手に入れて経済的に活用する方が多くの富を生むからである。
欲望をたぎらせた傭兵どもがあの街の中で何をするのか。セルツァマイエは考えただけで気分が悪くなった。
ソルドマイエ二世は涼しい顔をしてグデナーメルトを眺めている。
傭兵隊長のヘゲデイン・ブロレードは、狡猾な男だった。卑怯で卑劣で残忍だった。品性の下劣さが内面からにじみ出ていた。ベルウェンとは全く異なる種類の傭兵隊長だった。
こんな男だったが、なぜか人望があった。金が好き。女が好き。暴力が好き。殺戮が好き。そんな人間にとって、ベルウェンは眩し過ぎた。まっとうな社会からはじき出されたクズのような人間たちは、ベルウェンの下でも居場所を見つけることができなかった。そんな彼らにとって、ヘゲデインの周りは居心地が良かったのである。
ヘゲデインは何も否定しない。人間の汚さを自ら体現していた。女がいれば犯し、小金持ちから金をだまし取った。老人を殴り殺して金目の物を奪った。ありとあらゆる手段で悪事を働いていた。
それでも、手下は大事にした。底辺で貶まれながら生きてきたため、何かの拍子にできた手下に慕われたことが卑しい自尊心を刺激したのである。さらに人望を得るため、手下には鷹揚で気前よく振る舞った。こうして、傭兵にでもなるしかなかったはみ出し者たちのうち、ベルウェンの下からもはじき出された連中がヘゲデインのところに集まってきた。
本来なら小悪党として捕らえられて斬首されてしかるべき男が、傭兵隊長などという身分に祭り上げられて、ちょっとした勢力を誇るまでになってしまったのである。
グデナーメルトに攻め込んだヘゲデインは、自分の幸運に酔いしれていた。この街では、「何をしてもいい」のだ。
第三者には、ヘゲデインはやりたい放題やっていたように見える。当人に言わせれば、これまでは遠慮していたし、それなりにコソコソとしていた。
だが、ここでは遠慮は無用なのだ。取りあえず女だ。嫌がる女を無理やり犯すのが特によい。今までのように、路地裏の暗がりに引きずり込む必要はない。明るい場所で、苦痛に歪む女の顔をじっくり拝むことができるのだ。せっかくだから、白昼堂々、街の往来で犯してやろう。衆人環視の前で辱めてやったらどんな顔をするだろうか。
ヘゲデインの手下たちは、こんな男を祭り上げるような連中である。思考も嗜好も大差がない。街中に散らばって、思い思いに無抵抗の者を殺し、奪い、犯した。
そして地獄が現出した。




