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居眠り伯と万能の天才公爵  作者: 中里勇史
オルドナ戦線

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12/13

追撃

 途中までは敵を圧倒していたが、最後の最後にそれが覆された。

 ヌヴァロークノ兵たちは、王の撤退を守るというきっかけを得て反撃に転じた。

 その結果、もともと数が少ない皇帝軍とラフェルス・カーリルン軍は危うい形勢になっていた。両軍とも乱戦状態に陥っており、指揮も思うように届かない。

 その中で、フォロブロンは五〇騎ほどの騎兵を乱戦から引き抜くことに成功してクーデル三世の追撃に移った。


 岩陰で戦況を見ていたウィンも、アークラスムに出陣を命じた。

「ヌヴァロークノ王が逃げる。追うよ」

 ウィンとアークラスムは騎乗しているが、ウィンの護衛として残した兵は全て歩兵だ。位置関係としては、ウィンたちの方が南寄りであり、クーデル三世はウィンたちから見て北東に居る。だが、ウィンたちが東に全力で進出してもクーデル三世の前に出られるかどうかは微妙だった。

 クーデル三世の南下が早いか、ウィンたちの東進が早いか。それとも騎兵のみのフォロブロンがクーデル三世に追い付くか。

 ニレロティスやラゲルスもクーデル三世を追いたいが、ヌヴァロークノ兵の反撃が激しくてうかつに背中を見せられない。


 ウィンとアークラスムが率いていた歩兵たちは間に合わなかった。彼らの目の前をクーデル三世とわずかな取り巻きが通り過ぎていった。

 少し遅れて、フォロブロン隊がやって来た。

 ウィンとアークラスムは、歩兵たちに「後から付いてこい」と命じてフォロブロンらと共にクーデル三世を追った。

 追いつければ、勝てる。クーデル三世を捕らえるか討ち取ることができれば、この戦争は終わる。


 ここで終わらせる。


 だが、数千人はいるとみられる軍勢が前方に現れた。

 まだ遠くて正体が分からない。


 ヌヴァロークノ軍だった。


 トローフェイルから南下していたバンナーボブゾン麾下のヌヴァロークノ軍である。

 ポレンヌーゾンが各地に放った伝令と出合ったバンナーボブゾンは、クーデル三世の目的地を知ってミラロールに向かって反転していたのだ。

 クーデル三世がバンナーボブゾン隊と合流する前に、フォロブロン隊はクーデル三世に追いつけるだろう。だがすぐにバンナーボブゾン隊が到着してしまう。


アレス副伯(フォロブロン)、引こう。無理だ」

 ウィンはやる気が感じられない目でフォロブロンを制止した。フォロブロンは奥歯をギリリとかみしめると、無言で頷いて騎兵たちに停止を命じた。クーデル三世を倒すという目的は完全に失敗したのだ。

「なかなか勝たせてくれないね」

 ウィンはそう言うと、珍しく力なく笑った。

 握り締めた手のひらに手綱が食い込んでいた。



 二月一〇日、第二次ミラロール攻防戦は終結した。

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