第8話 追いかけて来たのは
15匹のワイバーンは分散し、5匹になった。
目の前にいる人物は甲冑を着込んでおり、腰にある鞘から剣を引き抜く。
鉄製のゴーレムは5体。我に見向きもせず真っ直ぐ村の方に歩いて行く。
『誰だ貴様は』
「名前なんて気にする必要はない。おいドラゴン、この村が全滅してほしくなかったらその女を渡せ」
『黙れ、下等な人間め』
「なるほど、交渉は決裂だな」
後ろに下がっているシュラークはエルフに連れ出される。
その時何か言っていたが、後で聞いてやろう。
翼を前に持っていき、斬激を受け流す。後ろに下がり、男はニヤリと笑った。
取り出したのは杖だ。なるほど魔法勝負か、面白い。
赤い魔法陣が現れ、火球が男の頭上で展開していた。
「この威力はドラゴンを倒せるんだ。お前はどうする!降参なら今のうちだが?」
...降参だと?人間に?馬鹿馬鹿しいな。
即座に水魔法を強化した氷魔法を尻尾に集中させる。
ワイバーンはとてつもない魔力量に怯えた。
地面を蹴ったと同時、火球を飛ばした。
飛び上がり、一回転と同時に尻尾を真下に振り下ろす。触れた瞬間に凍り付き、粉々に砕け散った。地面に着地し次は男の方へと突っ込む。相手側も矢を放つがジグザグにステップして回避する。
断末魔を上げる隙も与えず、騎士の一人に噛み付く。
尻尾で薙ぎ払い、吹き飛ばす。
団長らしき人はデタラメに魔法を放っている。ゆっくりとこちらに歩き距離を詰めていく。
ゴーレムは同族達によって撃破され、ワイバーンに至ってはエルフ達に捕獲されていた、まぁ後で食材として美味しくいただくか。
尻餅をついた男は顔を真っ青にしながら我を見つめていた。
「なっ、何なんだ!こんなに強いだなんて聞いてない!普通やられるだろ!こんな事があっていいはずがない!ドラゴンは黙って殺されるのがオチだろ!」
...何だこいつは。竜が弱い?黙って殺される?何を言ってるんだこの人間は、我ら竜種を侮辱する気か。
『そんなに死にたいのなら貴様の望み通りにしてやろう』
「ひっ!やめろ!来るなっ!」
男を前脚で掴み、地面に叩きつける。何度も叩きつけ、血だらけになった男を足でつつき、確かめる。まぁ、もう動かないだろう。
数人のエルフが来て、布の上に乗せてどこかに運び、生き残った兵士達は両手をあげて投降したのだった。
その夜、森の中で大きめの薪を並べて弱めの火炎で火を入れる。ワイバーンを頭から齧り、咀嚼する。
後ろから気配がしたが気にせず食べ続ける。
『カリゴか』
「ご報告を。兵士達を尋問したところ、彼らは空中要塞から来たと。その高度は15000Kmだと判明しました。」
『成層圏か、厄介だな』
「ええ、並の竜種ではすぐに酸欠に至るでしょう」
『....その要塞とやら、移動はしているのか?』
「はい、定期的に高度を下げているようで、12000Kmまで下がっているようです」
『そうか。それより例の剣について何か情報は無いのか』
「はい、ありませんでした。口が堅いのか、それとも魔術による契約でも設けているのか...。私からの情報は以上です』
『そうか、下がっていい』
一礼した後、移動魔法で村に戻った。
◇◇◇
騒動が終わり、ご飯の時間になった。それにしてもなんでバレたんだろう...。後から考えるか!広場に集まって、木のボウルに野菜たっぷりのスープと、小さい肉が小皿にあった。空いている机に座り、スプーンで掬って口に入れる。
美味い!スープの体に染み渡る!小皿に乗っけてあるフォークで肉を刺して、口に入れる。....うん、微妙な塩加減で調整されていて、これまた美味い。
完食して、部屋に行こうとした時、女性のエルフに呼ばれる。
患者服を渡された。
薄暗い廊下に案内されて、まずは隣の部屋で着替えてくださいとのこと。
着替え終えると暖簾をくぐった先は手術室のような感じだった。
何やらオイルと甘い匂いが部屋中に漂っていた。
「...あの....私何か粗相をしましたのでしょうか...。何やら手術道具があるんですけど、私、とうとう解剖ですか!?」
目の前にいるのは10代後半の感じであるエルフが木製の椅子に座っていた。
「落ち着いてください。調べた所、貴方の身体の中に発信機が埋め込まれていると分かりましたので」
「ん...?発信機?え?」
「恐らく、きっと気付かぬうちに埋め込まれたのでしょう。」
「....あの、どうなるんでしょうか」
「取り除かない限り、ずっと狙われます」
「あっ、あの!是非お願いします!!」
「それではその同意書に名前を入れてください」
スラスラと書き、そのまま横たわった。部屋に炊かれてある匂いに耐えられる訳もなく、数秒もしないうちに瞼が重くなって来て、意識を落とした。
◇◇◇
朝になり、目を覚ます。背伸びをして首に手を置くと包帯が巻かれていた。
暖簾をくぐって来たのはカリゴだった。
「おはようございます。あれからよく眠れました?」
「ええバッチリですよ!体も軽くなった感じです!」
「それはよかったです。抜糸まで一週間は安静にしてください。お食事は部屋でされますか?」
「あ、はい。...あの、白竜、それからエルフ達に迷惑をかけた事、申し訳なかったです!」
頭を下げると、カリゴは慌てていた様子で私を見た。
「頭を上げてください!私達も気にしていません!」
「ほ、本当か...?」
「ええ、シュラークさんは一人で抱えている事が多いですから。みんなで支えましょう」
「....はい!本当にありがとうございます!本当に感謝しきれません!」
もう一度頭を下げてと彼女は再び慌てていた。




