第2話 白竜 冒険者になる
案内された部屋はカーテンが締め切られており、天井に備え付けられているシャンデリアの蝋燭が明るく照らしてくれる。
カレンダーの日付は1205年の4月3日。
情報を得る為にここに来たのだが、なぜ部屋へと案内されたのか意味が分からない。
足音と共に木製の扉をノックして、二人の女性が入って来た。
「失礼します。私はカリゴと言います。こっちは後輩のヴンシュです」
『ん?そこにいるのはカリゴか?随分と久しぶりだな』
「随分って、9年しか経っていないですよ?」
二人で他愛ある会話をしていると、ヴンシュが話しかけてきた。
「あの...先輩、なんでこんな布切れを呼んだんですか?」
「よく見て、白い鱗があるでしょ」
「ん...?あっ、け、憲兵の人に連絡しないと!」
「ダメよ。連絡してはダメ」
「ですが!」
近くに来て布を取ると、人間の女性は驚く。
「ひっ!?ド、ドラゴン!?なんでこんな所に!?」
「落ち着きなさい。竜様には何かあるのよ。」
『その耳、エルフか』
「ええ、今日は何をしにここへ?」
『...同族を救おうとな、だが聖剣が無いと破壊できない』
「なるほど、ギルドに来て、冒険者になりたいと」
『心が読めるのだな』
「いえ、顔に書いてありました。それから、登録書と食事をお持ちします」
しばらくして、ワゴンが運ばれて来た。何も手をつけていない魚だが、匂いに涎が止まらなくなる。
机に羽根ペンと羊皮紙が置かれる。それにしても名前か...種族名でいいか。
すらすらと書き、ペンを置く。
彼女はダガーナイフを取り出し、前足の人差し指に切れ込みを入れる。
羊皮紙に押し付けると、手に取った。
「ありがとうございます。これで登録は完了しましたので、タグをお持ちしますので、ゆっくりしてください。それでは失礼いたします」
「...そこの竜、ここに来た事を後悔するでしょうね」
カリゴはもう一人を連れて部屋を後にした。
傷を治し、皿の上に乗せてる魚に口をつける。
ふむ....脂身があって美味い。同族の話では、大きいければ大きい程、脂身があるのだと言う。
中くらいの魚を完食し、次は大きいサイズの魚に口をつける。一口噛んで、また一口噛む。....美味い、二週間ぶりの食事だ、じっくりと味わって食べよう。
30分かけて食べ尽くし、満腹になった腹を撫でる。これでしばらくは何も食わなくても大丈夫だな。
ノックする音が聞こえ、カリゴが戻ってきた。
机に置いたのは六角形の金属に名前が彫られている。
それを手に取って、前足の二の腕に蝶結びにして結んだ。
説明によるとランクがあり、銅は初心者、銀は一人前、そして金は達人、そしてベテランはプラチナだという。初心者なので最初は簡単な依頼をこなしていって、慣れたらゴブリン退治や、スライム退治が出来る様になるという。
「お似合いでございます」
『...ああ』
「それにしても白竜様、あの最高難易度のクエストに挑まれるとは...本当に大丈夫ですか?」
『大丈夫だ。それに、あいつは雑魚だ。しかし2年前はまだまだ未熟だったな。あの時お前に助けられなかったら...これで借りを返せる』
「冒険者達もやらないような事を...」
『あいつらが弱過ぎるからだな、行ってくる』
「気をつけて行ってらっしゃいませ」
そしてこの後、白竜は一夜で終わらせることになるとはカリゴには知る由もなかった。




