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◆6◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆6◆



 あっという間に真新しい深紅のワンピースに衣装替えしたミルミラは、本物の人間の少女そのものの仕種で、自慢げに私の前で軽やかに踊ってみせる。


 「はいはい、似合ってる似合ってる…。そんなにはしゃいで転ばないでよ?」


 「平衡感覚センサーに異常はありませんので、そうそう転んだりしませんよ、秋穂さんじゃないんですから…」


 屈託のない笑顔で無慈悲に毒を吐く。恐らく、いつぞやの酔っ払い千鳥足帰宅事件の事を言っているのだろう。変に記憶が良すぎるアンドロイドも困りものだ。


 「あれは、お酒のせいだから仕方ないし…」


 「人間はやっぱり不便ですね。アルコール摂取でバグが出るなんて…」


 「いや、意図的な摂取だし、っていうか、摂取自体が目的ではないというか?」


 「バグを自ら出しに行く、っていう思考は謎すぎますね…」


 まさにああ言えばこう言うといった状況だが、あながち間違ってはいない、寧ろ正論すぎてこちらの心が痛くなってくる。


 「ほら、さくさく帰るわよ? 帰りにリオンモール寄ってくからね」


 「確かに食料素材の備蓄が心許ないですね。冷蔵庫はビールとプリンばっかりですし…」


 さも当然のように、我が家の冷蔵庫の中身まで詳らかに公開していくミルミラである。勿論、そこには悪意も何もない。悪意がないだけに恨みようもない。


 「では、皆さんありがとうございました。失礼します」


 ミルミラは研究施設の皆にぺこりと愛らしいお辞儀を披露すると、私の背中をずんずんと押すようにして退出する。


 「また明日参ります」


 私の声は締まりつつある研究施設の扉に辛うじて吸い込まれていった。






 研究施設を出た私は、再び車を走らせて、近隣の大規模ショッピングセンター、リオンモールに移動する。


 この辺りでは一番の賑わいスポットであり、日々の買い出しからちょっとした家族サービスまで、ここだけで十分事足りる。テナントも多種多様、私には全く縁のないような高級ブランドの店舗すら幾つか入っていた。


 とりあえず毎度のルーチンというやつで、私はフードコートの一角にあるカフェに腰を落ち着けた。お洒落とは程遠い、シンプルでリーズナブルな店である。


 目の前のミルミラはというと、無心にイチゴのケーキを頬張っているところだ。


 アンドロイドが何故スイーツを味わっているのだろうか、という疑問ももっともな話ではあるが、これも人間性を突き詰めた結果の、自然なお付き合い機能の一部であるらしい。


 こうしていると、本当の親子、いや、姉妹がカフェで寛いでいるようにしか思えないだろう。


 「あー、ミルミル、何食ってんだ? 美味そうだな―」


 そう声をかけてきたのは、大きなランドセルを背負った小学生の一団だった。


 ここが通学路のショートカットルートなのだろう。時折私たちに出会っては、ミルミラを仲間のように思って接してくれる。ある意味、ミルミラの『人格形成』に貢献してくれている貴重な存在だ。


 「ねぇ、ロボが何か食べて大丈夫なの? お腹壊さない?」


 少年に続いて少女が声をかける。まぁ、小学生でなくとも普通はそう思う事だろう当然の疑問だ。


 「はい、大丈夫ですよ。内部に採りこんだ物質は、十分に攪拌して、水分と圧縮可能な固形成分に分離しますから、それぞれ化学反応で電気に変換させて、内部バッテリーに蓄電しますよ」


 胸を張って自身の機能を解説するミルミラだが、流石にこの説明では小学生相手には辛いだろう。


 「ウンコ、出んのか?」


 「ウンコ? あー、廃棄物はさらに圧縮して捨てますけど、匂いとかは特にない感じですかね…」


 フードコートの真ん中で、小学生らしい身も蓋もない表現の疑問に淡々と答えるミルミラは何処か自慢げに誇らしい表情だった。


挿絵(By みてみん)



◆7◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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