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◆47◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~土曜日の朝6:00に更新の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載開始しました。全52話の予定。


【◆Intermission◆ 前半のあらすじ&登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/27

◆47◆



 もしかしたら、という淡い期待が私の頭の中にはあった。だからその可能性に賭けて、私は小学生たちをミルミラに会わせる事を決意した。


 私と望月研究員の二人で大膳教授に掛け合って、どうにか施設見学の許可を取り付けると、数人の小学生たちを伴って、ミルミラの眠る研究棟のハンガーデッキへと向かう。


 今のミルミラは、人間でいう意識不明の昏睡状態といった感じで、自ら進んで何かをする事はない。ただ無言で眠り続けるだけの存在だ。


 以前の冬芽脳AIの思考ルーチンは、その後に全く別のもので上書きされたとはいえ、機械的な基本構造上は、アンドロイドとして問題なく機能するはずである。しかし未だに、眠りから覚める兆候は見られないままだった。


 そのボディ構造は、ミルミラとカテリナの予備部品で継ぎ接ぎ的に修復されており、あたかも少しだけ年齢的に成長したような外観にはなっているものの、見た目の印象はあまり大きく変化もしていない。あくまで愛らしいあのミルミラのままといった雰囲気だ。


 「ほら、ミルミラ、お友達が大勢お見舞いに来てくれたわよ。早く起きなさい」


 私がそう静かに語りかけるが、格納エリアの点検用ハンガーに直立したまま立ち尽くしているミルミラは、一切の反応を示さない。


 「ミルミル、早く元気になって、また一緒に皆で遊ぼうぜ! アキ姉連れて遊園地とか行こうぜ!」


 「ロボは死なないんでしょ? 無敵なんでしょ? ミルミルも負けちゃダメだよ!」


 「みるみー、またお姉ちゃんみたいに『こらっ!』って私たちを怒ってよ…」


 小学生たちがそれぞれの言葉で、口々にミルミラを励ましてくれる。まるでついこの前までの、冬芽を見舞うミルミラ自身と重なるような光景だ。


 「ミルミラは、随分と幸せなアンドロイドですね。ここまで皆に慕われているアンドロイドも珍しいですよ」


 望月研究員が感慨深げにそう感想を呟く。その言葉に、私も心の中で同意する。


 「アキ姉…と、そこの兄ちゃん! 頼むからミルミルを直してくれよ! お願いだよ! オレさ、まだ言ってないんだよ、ミルミルに…。その、お前の事、大好きだ、って…」


 「えー、それってロリコンじゃなくて、ロボコンじゃん! このあたしよりミルミルのが良いって、それ本気ぃ?」


 「悪いかよ! 好きなもんは好きなんだから、どうしようもないじゃんか!」


 小学生たちは話題が少々脱線しつつも、ミルミラを真剣に慕って、気遣ってくれていた。研究者として、また教育係として、何よりミルミラの姉として、私は深く感謝の気持ちに包まれていた。


 そんな小学生たちの傍らで、カテリナはあくまで無機質な瞳で無言のまま、ミルミラの眠るハンガーを見つめていた。


 「大丈夫、僕も秋穂さんもミルミラの復活を目指して頑張るからね。でも、コンピュータゲームのリセットと同じで、ミルミラは記憶が無くなっちゃうかもしれないんだ。もしそうなっても、その時は君たちがまた、改めてミルミラの友達になってくれるかな?」


 望月研究員がそう遠回しに否定的な未来像を示すと、小学生たちは我先に手を上げて『ミル友』の立候補を始める。


 「任しといてっ! あたしたち、皆、ミルミル大好きだもん! 何度生まれ変わっても、ずっとずーっと友達だよっ!」


 「オレもオレも! 誰が何て言ったって、友達止めたりしないよ!」


 そんな小学生たちの言葉を聞きながら、私は知らず知らずのうちにぽろぽろと涙を零していた。


 ミルミラがこの世に誕生してから、まだほんの僅かな時間しか経っていないというのに、ここまで皆に親しまれて愛されているなんて、私の想像を遥かに超えた幸福感溢れる光景だった。


 まるで今、この目の前のハンガーで眠っている少女が、私の本当の娘であるかの如く、誇らしくもあり、嬉しくもあり、そして未だ目覚めない現状を、心底もどかしくも感じていた。


 その場にいた誰もが、ミルミラの一刻も早い復活に期待を抱いている一方で、冷静かつ現実的なもう一つの視線が、眠り続けるミルミラに注がれていた。


挿絵(By みてみん)



◆48◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください

【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~土曜日の朝6:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 いつもはSF系の作品が中心の私ですが、そもそも前作「よよぼう」がSFというよりファンタジー寄りの作品だったので、本作「ミルミラ」はリハビリがてらの"ぷちSF“となりました。

 現時点(2025/10/3)で既に最終話まで執筆及び修正が完了、後は皆さんに楽しんでいただくだけとなっています。

 校正修正の通称”鳥”さん、相談役?の通称”蛹”さん、いつもありがとうございます。


 挿絵は自作のAIイラストで「PixAI」というサイトにて作成しています。未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)も、「PixAI」及び「ちちぷい」で公開します。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



↓「MiraiMind」中一秋穂ちゃんAIチャット♫

本編小説に合わせ、AI画像チャット「Miraimind」で中一時代の秋穂さんとお喋りしませんか?

良かったら構ってあげてくださいねっ♪

MiraiMindで「河原木 秋穂」とチャットしよう!

web-miraimind.hellogroupjapan.com/#/chat/C11222094



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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