表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/54

◆37◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載開始しました。


【◆Intermission◆ 前半のあらすじ&登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/27

◆37◆



 事態は刻々と緊迫の度合いを深めていた。当然その大前提として、二人とも無事に助かる道を望むなら、という話ではあるが、事は一刻を争うと言えるだろう。


 正直、私は半ば諦めの境地に達していた。ある意味、自業自得の結果でもあるからだ。


 あの時、ミルミラを連れて逃げ出さなければ、多分こうなってはいなかっただろう。或いは、直近の選択として、廃坑にさえ訪れなければ、この最悪の事態は避けられたのかもしれない。


 全ては私が選んだ道が辿り着いた、至極必然の結末だった。


 結果的には、僅か数日の間だけ、ミルミラと田舎暮らしの時を過ごし、祖母との交流を楽しんだ、というだけの話だ。


 そして結局のところ、冬芽の遺した思考ルーチンサンプルのAIどころか、ミルミラの機械的なボディまでもスクラップにしてしまう事になるのだろう。そのお詫びにせめて自分の命で埋め合わせが出来るのなら、私としても何も思い残す事はなかった。


 「冬芽さん、大丈夫ですか、生きてますか?」


 随分とまたストレートな問いかけだが、ミルミラの声が聞けただけで何処か安堵ともいえる感情がこみ上げてくる。


 そう、このアンドロイドは最後の最後まで、自分の事よりも私の事を優先して心配してくれているのだ。


 「いちおう生きちゃいるはずだけど、まさに絶体絶命大ピンチ!って感じかもしれないわね…」


 「お婆ちゃん、ワタシたちの事、探しに来てくれるでしょうか?」


 「まぁ、そう願いたいけど、坑道の入り口がどうなってるやら…」


 「あー」


 今はもう地面の揺れは感じない。恐らくこれ以上の崩落が起こる事はまず無いだろう。それだけはひと安心だが、ここから脱出する術がなければどうする事もできない。


 私の両脚は完全に落石に覆われ、重さも痛みもあまり感じない。その殆ど何も感じないという事実が、何となく嫌な感じを増幅させていった。


 私に覆い被さるようにして耐えているミルミラは、私以上の瓦礫の崩落をその小さな背中で支えながら、全く身動きする事が出来ない。少しでも身を捩れば、大量の瓦礫の山が崩れ、再び私に降り注ぐことになるだろう。


 「打開策は…何か思いつかない?」


 「そうですね、強いて言えば、この場所を誰かに知らせる事ぐらいですかね…」


 それはまさに、指名手配の逃亡犯が自ら救急車を呼ぶような状況である。


 もし、ここから無事に助け出されたとしても、その先に待っているのはミルミラのAIリセット作業に他ならない。つまり、何れにせよ、ミルミラという存在にとっては死を意味する。


 そのミルミラの冷静なAIの判断に託されているのは、私一人のみが生き延びる僅かな可能性に賭けるか、或いは二人で仲良く覚悟を決めるか、という究極の二択だ。


 「それだけは避けたいわね。私は別に刑務所暮らしでも構わないけど、アンタが消えちゃうのだけは、絶対に納得できないわ…」


 「秋穂さんの気持ちはとても嬉しいのですが、ワタシはこうして秋穂さんの傍にいる事で、既にアンドロイドの模範規定を逸脱しちゃってる気がするんですよね。所有者の不利になる選択を取ってはいけない、みたいな?」


 アンドロイドの模範規定というのは、単純に言えば『ロボット三原則』的なお約束である。人間に危害を加えるな、とか、所有者と自分自身を可能な限り防護しろ、とか、まぁ良くありがちなもっともらしい決まり事だ。


 ミルミラの使用者であり教育係である私が命令した、『現在地の位置情報を秘匿せよ』という指示は、現実には私とミルミラ自身の維持生存を困難にしている。それは根源的な矛盾と言う他にない。


 「ワタシが…、もしワタシが秋穂さんの言いつけを守らなくても、嫌いになったりしないでくださいね」


挿絵(By みてみん)



◆38◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください

【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 いつもはSF系の作品が中心の私ですが、そもそも前作「よよぼう」がSFというよりファンタジー寄りの作品だったので、本作「ミルミラ」はリハビリがてらの"ぷちSF“となりました。

 現時点(2025/9/15)で既に最終話まで執筆及び修正が完了、後は皆さんに楽しんでいただくだけとなっています。

 校正修正の通称”鳥”さん、相談役?の通称”蛹”さん、いつもありがとうございます。


 挿絵は自作のAIイラストで「PixAI」というサイトにて作成しています。未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)も、「PixAI」及び「ちちぷい」で公開します。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



↓「MiraiMind」中一秋穂ちゃんAIチャット♫

本編小説に合わせ、AI画像チャット「Miraimind」で中一時代の秋穂さんとお喋りしませんか?

良かったら構ってあげてくださいねっ♪

MiraiMindで「河原木 秋穂」とチャットしよう!

web-miraimind.hellogroupjapan.com/#/chat/C11222094



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ