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◆31◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載開始しました。


【◆Intermission◆ 前半のあらすじ&登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/27

◆31◆



 その晩、私はミルミラを伴って、久しぶりの夜の散歩を楽しんだ。


 とはいえ、何もない田舎の風景である。見上げる夜空には満天の、それこそ都会の生活では絶対に拝む事の出来ない、満天の星空が広がっていた。


 「うわぁー、何だかワタシたち、まるで別の世界に来ちゃったみたいですね」


 そう感激の言葉を口にしながら、ミルミラは首が痛くなってしまいそうな勢いで星空を見つめていた。


 勿論、アンドロイドには肩凝りも腰痛もない。ましてや首が痛くなる事すらないのだから、恵まれていると言うべきかもしれない。


 「そうね、昔々、私が丁度ミルミラくらいの年頃には、毎年夏になると必ずこの場所に来て、小さな妹と一緒にここから星を眺めていたのよね。とても懐かしいわ」


 「冬芽さんと、ですか…」


 夜空から目を逸らさずに、ミルミラは何かを考えながら言葉を紡ぐ。


 「ま、アンタとも同じ景色を見られたんだから、きっとそれも良い思い出になるわね」


 祖母の家の裏手から少しばかり山の中へと入った場所である。私たち以外に誰も山道を通る者などいるはずもなく、眼下の僅かな町場の明かりすら遥かに遠く、頼りなげに揺れて見え隠れしていた。


 「うーん…」


 ミルミラが呻くように小さな呟きを漏らして首を傾げる。


 「どうしたのよ?」


 「人間は亡くなると星になる、とか言うじゃないですか…。つまり、この星空の輝きは皆、過去に亡くなっていった人たちのタマシイの輝き?って事になるんですよねぇ…」


 唐突に哲学論と幻想譚が混在するような話を始めるミルミラを、私はただ黙って見つめていた。


 「もしアンドロイドが、っていうか、もしAIのデータが綺麗さっぱり消えちゃったら、ワタシたちも星になれるんですかね…」


 「さぁ、どうなんだろうね。ただ、この国では『万物に魂は宿る』って言うくらいだから、案外そうなのかもね…。ミルミラはどう思う?」


 八百万の神というからには、アンドロイドの神様だっているはずだ、と好意的な意見を述べても良いだろう。そのアンドロイドの神様とやらに、消えゆく小さな願いを叶えるという気まぐれな神心ならぬ仏心のひとつもあるとしたら、星にだってなれるのかもしれない。


 もし、ミルミラ自身が、強く心の底からそれを望むのならば…。


 「ワタシは…そうですねぇ、きっと冬芽さんも一足先にお星様になっているはずですから、独りぼっちで寂しくないように、その隣で一緒に並んで輝いて、空からずっと二人で秋穂さんを見守って過ごしたい、ですかね…」


 真顔でそんな夢を語るミルミラの横顔を眺めていた私は、思わず言葉に詰まって慌てて視線を逸らせた。


 「あ、それって何? アンタはお星様になってからも、毎日毎晩、私にダメ出しする気なの?」


 「そうですね、秋穂さんが『困ったお母さん』を卒業して、ちゃんと『本物のお母さん』になるまでは、毎日ビシビシ行くんじゃないですかね」


 「勘弁してよ…。でもまぁ、アンタの場合、もし星になれなくても、毎晩化けて出そうではあるけど」


 思いがけず涙目になってしまう私は、必死にそれを隠すように、取り繕った軽口でその場を誤魔化しにかかる。


 「うーん、『本物のお母さん』かぁ…。ワタシ、出来る事なら、もしも願いが叶うのなら、次は秋穂さんの本当の娘として生まれ変わりたい、って、これって贅沢過ぎる願い事かもしれませんね…」


 そう寂し気に呟くミルミラの小さな身体を、私は無言のまま強引に抱き寄せ、力の限り抱き締めた。


 「あはは…、痛いですよ、秋穂さん…。ホントに困ったお母さんですね…」


挿絵(By みてみん)



◆32◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください

【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 いつもはSF系の作品が中心の私ですが、そもそも前作「よよぼう」がSFというよりファンタジー寄りの作品だったので、本作「ミルミラ」はリハビリがてらの"ぷちSF“となりました。

 現時点(2025/9/15)で既に最終話まで執筆及び修正が完了、後は皆さんに楽しんでいただくだけとなっています。

 校正修正の通称”鳥”さん、相談役?の通称”蛹”さん、いつもありがとうございます。


 挿絵は自作のAIイラストで「PixAI」というサイトにて作成しています。未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)も、「PixAI」及び「ちちぷい」で公開します。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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