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◆2◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆2◆



 『絶対に忘れないでください…記憶は宝物だから…』


 夢の中で幼い少女がそう語りかけていた。私はその言葉に大きく頷きながら、涙で溢れかえった顔を必死で笑顔に取り繕う。


 ―これは門出なんだ。だから、笑って送り出してあげなくちゃいけない―


 私の頭の中に、そんな考えが走馬灯のように駆け抜けていく。


 おかしな話だ…。


 何で私が、今になってこんな幻の記憶を振り返っているのだろう。今更のように後悔を始めたところで、時間の流れを遡る事など不可能だとわかりきっているはずなのに…。


 私だって、とりあえず端くれとはいえ、科学者の一人だ。それが理論的に不可能な現実だというのなら、そこは割り切って別の道を模索しなければならない。そうやって人類は日々の進歩というものを手に入れてきたのだから。


 『それでも、忘れないでください。いつか宝物はその真価を取り戻す日が来るから…』


 夢の中の少女は儚げな、そして切なげな微笑みを浮かべながら、私に再び語りかけてくる。


 できる事ならこの幻の時間を永遠に封印して、この少女と二人で過ごしていきたいと、私は心の底から願った。勿論、叶わぬ夢である。


 「はい、秋穂さん、そろそろ起きてくださいねっ!」


 夢か幻か、まだ半分寝ている私の微睡んだ視界の片隅から、先刻の記憶とは別の少女の声が聞こえてくる。こちらの声のほうが僅かに幼く、少し舌っ足らずな言い回しが印象的に感じられた。


 「ほらほら、早く起きないと、また教授に叱られちゃいますよ?」


 「あー、うん…。只今起動準備中…、暫くお待ちく…」


 「あ、ほら! そこで二度寝しちゃダメですよぅ!」


 私はようやく現在の状況を認識し、ぼんやりしたままの頭の中から夢の中の出来事を追い出していった。


 「おはよ…う、ミルミラ…。アンタはいつも早いわね…」


 「はいっ! ワタシの待機状態からの復帰時間は五秒ほどですし、指定の起動時刻は午前六時ですから…」


 私が『ミルミラ』と呼んだその少女は、満面の笑顔を浮かべながら自分についての詳細情報を解説していく。


 「誰よ、そんなクソ朝っぱらからアンタを叩き起こすバカは…」


 「何を言っているんですか? まだ寝ているんですか? 設定したのは、秋穂さん、あなたご自身じゃないですか? それもお忘れですか?」


 まぁ当然の話だろう、忘れているはずもない。目覚まし時計を買ってきたら、とりあえず起きる時間を真っ先に設定するのは当たり前の話である。


 たとえそれがあまりにも高性能すぎて、自ら布団を引っぺがしてでも容赦なく設定者を叩き起こす、無慈悲で饒舌な自立歩行の少女型目覚まし時計だったとしても、だ。


 「あー、忘れた、そんな昔に設定した事実なんて、綺麗さっぱり忘れたわ…」


 「一度、本格的にメモリーの精査をされたほうが良いのでは?」


 冗談なのか本気なのか判断に困る提案を発しながら、ミルミラは真剣な表情を浮かべる。そのままじっと私の寝起きの間抜け顔を覗きこみ、僅かに小首を傾げる。


 「とりあえず、出発までの残り時間は既に三十分を切っていますので、早めのお支度をよろしくお願いします」


 「え、うわぁ! ヤバいじゃない、何で起こしてく…れたよね、さっき…。あはは…」


 今更のように慌てふためく私に突き刺さる、ミルミラの冷たい視線が痛い。


 「人間というのは、つくづく不便ですよねぇ。毎日決められた時間に起きられずに、何度遅刻しても修正ができないなんて…」


 「いや、何ていうか、正論なんだけど、そこは個体差っていうか、私がズボラなだけっていうか…、とにかく痛いからそれ以上言わないで…」


 確かに人工知能を内蔵した人型ロボット、所謂アンドロイド、ミルミラは女性型なので、正確にはガイノイドという分類になるのだが、そういったモノたちと比較してしまえば、当然ながら人間の生活リズムの不規則さや不安定さは、限りなく致命的な大欠陥ともいえるだろう。


 「でも、そんな人間の皆さんがワタシを造ったというんですから、何というか、驚きですよね」


 「トンビだってね、たまにはタカを産む事もあるのよ…」


 私は咄嗟に思いついた事を無意識に口にしながら、勢いよくベッドから飛び起きると、いつものように洗面所に向かい、トイレと洗顔をさっさと済ませる事にした。


挿絵(By みてみん)



◆3◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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