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◆27◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載開始しました。


【◆Intermission◆ 前半のあらすじ&登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/27

◆27◆



 明くる日から私たちは本格的な田舎暮らしに突入した。


 とはいえ、特にこれといって何が変わるものでもない。多少の不便さとその代わりの長閑さが、独特の不思議な空気感をもたらしてくれるだけの話である。


 ミルミラにとっての珍しい追加作業といえば、昔ながらの井戸から水を汲み、広い庭の大きな池にそれを流して、ついでに鯉の餌を撒いて様子を見る程度の事だ。


 都会暮らしでは、せいぜいが良くて水槽の熱帯魚くらいしか生きた魚を見る機会は無いだろうから、ミルミラにも多分きっと貴重な経験になるはずだ。


 「ロボの嬢ちゃん、井戸にゃ気ぃつけんだぁ。たまぁに転げ落ちて、ぴーぴー泣いとる子もおるでなぁ…」


 玄関先から祖母が身をのり出して、三人目の孫娘を心配するように、優しくミルミラに声をかける。ミルミラはぺこりと小さく頭を下げると、元気いっぱいに手を振って返事の代わりにする。


 祖母も勿論、冬芽が先日亡くなったという事は知っている。それ故に、アンドロイドであるミルミラを冬芽の生まれ変わりのように思って、実の孫娘のように扱ってくれているのだろう。


 外見上は全くと言って良いほど人間の少女と区別がつかないのだから、逆にロボらしく扱ってくれと言っても、却って困惑するだけだろう。ここは自然体に『孫がまた増えた』程度の認識のほうが、お互いに気を遣わなくて済みそうだ。


 昔話に出て来そうな木製の桶に、溢れそうな程の井戸水を汲んで、ミルミラは頼りない足取りで庭の池へと運んでいく。その光景を私はハラハラしながら見守っていた。


 まるで落語の怪談小噺に出て来そうな雰囲気の、昔ながらのつるべ井戸である。危ないといえば危ないのだが、田舎の子供にとっては慣れっこな代物である。


 当然ながら普通の生活用水には、ちゃんと真っ当な水道水が供給されている。台所の蛇口を捻れば、安全な水は十分に確保されている。それでも、家庭菜園や池の水、家によっては家畜の世話に要する大量の水や、大規模な農業用水に、井戸は欠かせない貴重な水源だ。


 勿論、全ての家が一軒につきひとつの井戸を持っているという贅沢な造りという訳ではない。そこは田舎特有の寛容さというか、良くも悪くも長年に渡って続く村の掟というか、自分の家の敷地であっても、半分は共有財産、公共施設のようなものである。


 毎月の水道代など必要ないのだから、空いていれば好きに使っても、誰からも文句は言われない。それがたまたま祖母の家の敷地にあるというだけの話だ。


 額に薄っすらと汗を浮かべながら…、と言いたいところだが、生憎アンドロイドは汗をかかない。よろよろと危なげな足取りで辿りついた池の畔で、自分の許に寄ってくる沢山の鯉の群れを興味深げに眺めながら、ミルミラは井戸水の桶に混ぜた餌を池にゆっくりと注ぎこむ。


 鯉たちが一斉に餌を求めて殺到する。その様子がますますミルミラの興味を引いたようだ。


 「うわぁ、元気ですねぇ…。思わずワタシも一緒に泳ぎたくなっちゃいます」


 「アンタの防水機能なんて、『とりあえず雨やシャワーなら大丈夫』程度の気休めなんだから、池に落ちたら絶対錆びるわよ?」


 私は呆れたように呟く。しかし内心では、ミルミラが笑顔である事が嬉しく思えていた。


 アンドロイドに感情は、というのはさて置いて、たとえそれが作られた紛い物であったとしても、憂い顔より笑顔のほうが、何倍も何十倍も見ていて気分が良いものだ。


 出来る事なら、これからもずっと一緒にこの笑顔を見つめていたい。


 それが社会的には決して許される事のない行為であり、既に私たち二人は、その危ない橋を渡り始めているのだと理解しながら、それでも、それが唯一にして最も正しい行為なのだ、と心の奥で固く信じていた。


挿絵(By みてみん)



◆28◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 いつもはSF系の作品が中心の私ですが、そもそも前作「よよぼう」がSFというよりファンタジー寄りの作品だったので、本作「ミルミラ」はリハビリがてらの"ぷちSF“となりました。

 現時点(2025/9/15)で既に最終話まで執筆及び修正が完了、後は皆さんに楽しんでいただくだけとなっています。

 校正修正の通称”鳥”さん、相談役?の通称”蛹”さん、いつもありがとうございます。


 挿絵は自作のAIイラストで「PixAI」というサイトにて作成しています。未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)も、「PixAI」及び「ちちぷい」で公開します。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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