表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/54

◆26◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載開始しました。


【◆Intermission◆ 前半のあらすじ&登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/27

◆26◆



 何はともあれ、田舎暮らしである。


 まずは、その晩の寝床が見慣れたベッドではなく、所謂煎餅布団であるという事実から、私たちの田舎体験が始まるのだ。


 アーカイブ情報でしか知らないはずの修学旅行の光景さながら、わくわく顔で二人分の布団を敷きつつ、ミルミラは嬉しそうに語りかけてくる。


 「とりあえず、優しそうなお婆ちゃんで安心しました。それにしても、長い間の運転、お疲れ様でした。大変でしたね。あの車も自動運転だったら良かったのに…」


 「それはないわ、絶対に」


 私は即座にミルミラの考えを否定する。思わず言葉の端に苛立ちが滲んで、語気が強まってしまった事を、僅かに後悔する。


 「拘り、ってやつですか? ドライバーと車の一体感?みたいな」


 「そうじゃなくてね…」


 あの日、通学途中の冬芽たち生徒の列に突っ込んだ車は、自動運転の実験車両だった。


 その車内にいた人物は、私とミルミラがこれまで接してきたのと同じような、所謂高齢者男性というやつで、年相応に僅かな身体機能の衰えも見られる状態という話だった。


 本来なら、そういう人たちの支えになるべき存在が、自動運転機能を初めとしたAI技術のはずである。要するに、ミルミラ自身もその一環で開発された存在に過ぎないのだ。


 しかし、如何に技術の粋を凝らして精巧に設計されたAIであっても…いや、どれ程に優秀な人間であろうとも、完全なる確実性を保証する事など出来はしない。


 事実、冬芽たちは事故に巻き込まれ、実際に最終的に冬芽は命を落とす事になったのだ。


 AI制御の自動運転車両が事故を起こす、という事例は、実のところ、ままある話ではあった。死亡事故を含めた人身事故でさえも、それなりに聞く話ではある。


 それでも、誰だって、まさか身内が巻き込まれるとは想像してはいない。ましてや親しい人物が亡くなる事を常日頃から想定している者など、ほぼ皆無と言って良いだろう。


 AIの開発に関わる身の上だからこそ、私個人にとっても、決して他人事と捨て置く事の出来ない事案である。妹云々以前に、社会的な道義的責任の一端を自覚せねばならない立場ではあるはずだ。


 AI制御の車に実の妹を殺されておきながら、そのAI技術の結晶ともいえるミルミラに同情し、或いは個人的な執着を窺わせて、その延命を考えて行動するなど、傍から見れば滑稽この上ない状況ではないだろうか。


 「冬芽はね、自動運転の車に突っ込まれたのよ。だから正直、AIの全てを無条件で信用するなんて…」


 そこまで口にして、私ははっと息をのむ。


 それは絶対に言ってはならない言葉ではないのか。例えるなら、実の娘に『お前は信用できない!』と冷酷に言い放つ母親のようなものだ。


 「ワタシ、秋穂さんに信用されていない…ですかね? アンドロイド側の立場としては、『人間という生き物は、案外いい加減な存在だから、くれぐれも注意して接しなさい』っていうのはあるんですが、それは何ていうか、信用とか信頼とかとは、何か違いますよね?」


 「あぁ、うん、どうなのかな…。私、やっぱりちょっと疲れている、のかも知れないわね。ごめんなさい、ミルミラ…」


 私はどうにかそれだけを口にすると、目を伏せて視線をミルミラから逸らして俯いてしまう。


 次の瞬間、私の身体は、小さいながらも力強い腕の中で抱き締められていた。


 「大丈夫です。大変な時に困っている誰かを助けるのが、ワタシたちアンドロイドの役目です。少なくとも、ワタシは秋穂さんを信じていますよ。ワタシの中の冬芽さんが、ちゃんとそう言っていますから…」


 「あり、がとう…。アンタはやっぱり、ちっちゃいお母ちゃんだ」


 そして私は、咳を切ったようにわんわんと声を上げて泣き出した。もう自分でも止める事が出来なかった。我ながら見っとも無いと思いつつ、子供のように泣きじゃくっていた。


 ミルミラは何時までも、ぎゅっとそんなダメな私を抱き締めてくれていた。


挿絵(By みてみん)



◆27◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 いつもはSF系の作品が中心の私ですが、そもそも前作「よよぼう」がSFというよりファンタジー寄りの作品だったので、本作「ミルミラ」はリハビリがてらの"ぷちSF“となりました。

 現時点(2025/9/15)で既に最終話まで執筆及び修正が完了、後は皆さんに楽しんでいただくだけとなっています。

 校正修正の通称”鳥”さん、相談役?の通称”蛹”さん、いつもありがとうございます。


 挿絵は自作のAIイラストで「PixAI」というサイトにて作成しています。未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)も、「PixAI」及び「ちちぷい」で公開します。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ