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◆24◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆24◆



 思えば、誘拐犯より人質のほうが賢いというのも笑える話だ。まるで何処かの子供探偵を攫ってしまった間抜けな犯罪者の如き展開だった。


 とりあえずの目的地として、私は祖母の家を訪ねてみる事にする。


 都合の良い事に、母方の祖母にあたる人物が私と冬芽の姉妹をえらく気に入ってくれていて、しかも口の堅いかなり信頼のおける関係だった。もし仮に、こんな場所まで私たちの捜索のために連絡が来る状況になっても、そう簡単に喋ったりはしないだろう。


 その祖母が東北北部の山の中でひっそりと暮らす小さな小さな町がある。所謂限界集落というやつだった。


 それでも日本という国は素晴らしく、電気水道ガス等のインフラ設備はしっかりと整っている。要するに、こんな鄙びた片田舎でも嘗てはそれなりに賑わっていたという証なのだろう。


 高速道を離れた私たちは、下道ののんびりとした街道筋を延々と走り抜き、時折休息を挟みつつも、日が暮れる頃にはどうにかこうにか目的地に辿り着く事ができた。


 その途中、ミルミラは生まれて初めて見る田舎風景に、自分たちの置かれている立場を忘れて感動の声を上げ、大きな目を輝かせながら車窓を食い入るように眺めていた。


 まさに、都会っ子の田舎暮らしデビューといった感じである。


 愛車の窓を大きく開けて、大自然の澄んだ空気を車内に招き入れる。田舎特有の何とも言えない緑と土の匂いが、私たちの周囲に纏わりつくように流れてくる。


 「何だか空気が全然違いますね。ワタシは呼吸しなくても問題はありませんが、何となく深呼吸をしたくなっちゃいますね」


 ミルミラは嬉しそうに言う。


 きっと心の何処かで膨れ上がっていく不安な気持ちを覆い隠すべく、優秀なミルミラのAIが必死に抗っているのだろう。彼女に感情と呼べるものがあるとしたら、の話ではあるのだが。


 そもそもその感情や思考があるとして、それは元を辿れば、冬芽の抱えていた内なる思いが、ミルミラという機械装置を通じて表面化したものなのではないか。だとすれば、それは果たして『ミルミラの感情』と言って良いものなのだろうか。


 まぁ、私を含めた普通の人間でさえ、『お前のその気持ちはいったい何処から来たんだ?』という根本的で根源的な疑問に答えられないのだから、アンドロイドにそれを問うても仕方のない話ではある。


 「言っとくけど、これからはここが本拠地になるんだから、逆に都会の空気なんて当面お預けよ? リオンモールはおろか、多分、近くにコンビニだって無いんじゃない?」


 そうミルミラに言い聞かせながら、私は更に細い山道をくねくねと愛車で辿っていく。


 「ワタシなら、水道水と太陽光と、それから家庭用の電源さえあれば問題ありませんよ。まぁ、定期メンテナンスを受けられないのは少し不安ですが」


 「そこだけ聞いてると、まるでニートの仙人ゲームオタクみたいな生活ね。流石に私は水だけじゃ生きて行けないわ」


 「人間って本当に不便ですよね」


 「ケーキが食べられなくなっちゃう、って泣いてたのは何処の誰よ?」


 「うー!」


 そんな馬鹿馬鹿しくも微笑ましい会話を続けながら、私はふと考える。


 確かに今後、ミルミラの機械的なメンテナンスを受けられないのは困ったものだ。例えるなら、通院必須の持病を抱えたままで、医師のいないド田舎で暮らすみたいな感覚だ。万が一の時に頼れる者は誰もいない。


 「ほら、着いたわよ。ここが当面の拠点、私たちの秘密基地って処ね」


 心の奥に纏わりつく不安感を強引に振り払うように、私は一見の古民家の前で愛車を止めた。


 辺境地域の古民家は、多少は古びてはいるものの、それなりにしっかりとした造りで、僅かながらの風格と威厳を漂わせながら佇んでいる。


 「うわぁー、これが昔話の絵本に出てくるお家なんですね」


 「いや、まぁ、間違っちゃいないんだけど、別にナントカ長者とかって事はないからね」


 喜んで盛り上がっている興奮全開のミルミラを制して、私は玄関脇の頼りない呼び鈴のボタンに、そっと手を伸ばした。


挿絵(By みてみん)



◆25◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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