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◆23◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆23◆



 これは誘拐ではない。強いて言うなら、窃盗若しくは業務上横領だ。愛犬の散歩に出た飼い主が、そのまま飼い犬と一緒に行方不明になるみたいなもんだろう。だって、肝心の愛犬が家に帰りたくないって言うのだから、仕方のない話だ。


 当面の逃避行というか、逃亡生活というか、に必要な最低限の物だけを小さな愛車に押し込んで、私は行く先の知れない旅に出発した。


 勿論、助手席にはミルミラを乗せて。


 とりあえず北を目指すとは言ってみたが、何か明確な理由などありはしない。


 単純に考えて、東京を出るなら北か西かという選択になるが、都市の連なる西側は人混みに紛れる事は出来ても、監視カメラや目撃者も多い事だろう。それに比べれば、北は良くも悪くも田舎で、人も監視カメラも希薄な気がする。


 上手い具合に山奥の鄙びた町にでも滞在できれば、どうにか隠遁生活を送れるだろう。アンドロイドの分際で仙人のような暮らしとは妙な話だが、それもまた良しといったところだ。


 今の時代、どんな辺境でも一定の集落であれば、電気と水くらいのインフラ関連は問題ない。贅沢さえ望まなければ、何とかなるだろう。住めば都とは良く言ったものだ。


 そこまで考えていたはずなのに、勢いに任せて高速道に乗ってしまう辺りが、迂闊で無計画な間抜けの私らしい。


 わざわざ好き好んで監視カメラのある場所を選んで走る必要などないはずだ。別に急ぐような旅ではない。時間なら文字通り腐るほどあるのだから。


 「結局、ワタシ、逃げ出しちゃいました。悪い子になっちゃいましたね…」


 夜の高速道特有の繰り返し過ぎ去っていく街路灯に、ストロボ効果で何度もその物憂げな表情を照らされながら、そう自虐的に呟きかける助手席のミルミラに対して、私は何ひとつかけるべき言葉を持ってはいなかった。


 例えば、この助手席に座る少女が妹の冬芽本人だとしたら、そしてこのまま姿をくらませば生きていけるのだとしたら、誰だって迷う事無く逃亡生活に諸手をあげて賛同するだろう。


 しかし残念ながら、この少女は冬芽本人ではない。性格的に良く似た傾向がみられるとしても、所詮は作り物の機械人形なのだ。


 逃亡を試みる根拠、つまり彼女の感情とか思考とかすら、存在が曖昧だ。その決意の程でさえ、単なる気の迷いなどではなく、何処か致命的なバグの結果から導き出された可能性すらあるのだ。


 もしそれが致命的なバグであるのなら、それは保護者兼教育係である私の責任かもしれない。そういう事なら、私の選ぶべき道はひとつしかない。


 「いい事、ミルミラ。今から私は誘拐犯になる事に決めたの…。俗に言う『人攫い』っていう訳よ」


 「はい? ワタシ、人じゃありませんよ? それを言うなら、『ロボ攫い』じゃないですかね…」


 私の発言があまりにも突拍子も無い話だったからなのか、ミルミラは真顔でそう答える。


 「それは百も承知よ。いいから、アンタは私の大事な人質なんだから、誘拐犯の言う事はちゃんと聞かないと、殺されて埋められちゃうんだからね」


 「ロボ質…ですか? 殺されるって、つまり破壊されるって意味ですか? それなら根本的に、動機と行動が矛盾しているじゃないですか…」


 確かにそうだ。ミルミラの言うとおりである。


 ミルミラを失いたくないがために一緒に逃げ出したのだから、逃亡先でそれを破壊するというのは、行動原理が大きく矛盾している。


 人間同士の愛憎劇なら、愛するが故に手にかけたという斜め上の展開もあるだろうが、宝物が好き過ぎて破壊するという話は聞いた事がない。


 「とりあえず、まずは位置情報の自動送信機能を切りなさい。アンタは天然のGPS端末みたいなもんなんだから」


 「それは、出発する時に既に切ってありますよ。ワタシは位置情報を送信しながら逃亡するような『うっかりさん』じゃないですから」


 そう、この抜け目のないしっかり者のアンドロイドは、常に私の二手三手先を進んでいるのだ。


 「上出来よ、流石は自慢の賢い娘ね」


 そう言いながら、私は目の前の高速道の出口へと愛車の進路を向けた。


挿絵(By みてみん)



◆24◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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