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◆21◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆21◆



 小学生たちとの別れ際、お年寄りたちに話したのと同じように、暫く『出張』で皆に会えなくなる事や、『全く別の新型ロボ』か『ミルミラそっくりの同型ロボ』が現れるかもしれない事を、子供でもわかりやすい表現で伝える事になった。


 『ミルミラそっくりの同型ロボ』というのは勿論、現在のミルミラのボディを再利用して別のAIを再インストールした、『ミルミラであってミルミラではないアンドロイド』の事であるが、小学生相手にそんな面倒くさい説明を正確に理解させるのは無理な相談だ。


 まぁ、子供たちからすれば、クラスの友達が他所の学校に転校するようなものだろう。そう考えれば、少年の一人が照れくさそうな笑顔で、ミルミラにお気に入りのガチャ景品のミニカーを手渡してきたのは、彼なりの餞別の贈り物のつもりなのかもしれない。


 自宅へと戻る車の中で、助手席のミルミラは満面の笑みを浮かべて、そのミニカーを弄り回していた。


 「えへへー、貰っちゃいましたよ。初めてのプレゼント、しかも男の子からですよー。マイカーですよ、ちっちゃいですけど。何だかとても嬉しいですね」


 「自分に惚れた男に車を貢がせるなんて、随分なアンドロイドね…」


 私がそう言って揶揄うと、ミルミラは驚いたように目を丸くした。


 「ほ、惚れてる…って、つまり、大好き、ラブって事です…よね」


 嬉しそうに混乱の表情をみせるミルミラの様子を見ていると、こっちまで幸せな気分になってくる。


 しかし、突然ミルミラの嬉しそうな笑顔が一気に曇った。


 「でも、秋穂さん…。ワタシのAIが入れ替わっちゃったら、今日のこの嬉しい気持ち、残ってくれるんですかね? 未来のワタシも同じように、こんな幸せな気分で過ごせるのでしょうかね?」


 「さぁ、どうかしらね…」


 私はそう答えつつも、結論としてはノーであると誰よりも良く理解していた。


 ミルミラの問いかけは、まさに死にゆく者が来世に想いを馳せているようなものだ。当然ながら、来世の自分…そんなものがあるという前提での話だが、生まれ変わった未来の自分に、過去の所謂『前世の記憶』があるとは思えない。


 「ワタシの事を大好きに思ってくれた男の子は、未来のワタシをまた大好きになってくれますかね? っていうより、もし未来のワタシが幸せな気分になれたとして、それってワタシって言えるんですかね?」


 人間でいえば、双子姉妹の片方が亡くなった後、その想い人がもう一方の姉妹と結ばれるようなものだろう。亡くなってしまえばそれまでかもしれないが、彼女が天国で納得できるか、割り切れるか、二人を祝福できるか、という疑問は謎のままだ。


 自分の分も幸せになって欲しい、なんて願うのは、ある意味悲劇のヒロイン気分に酔った偽善に過ぎないのかもしれない。実際問題、私がもしその立場であったなら、逆恨みしないと断言できる自信はない。


 そう考えると、巡り巡って、冬芽が『自分の代わりに』ミルミラには幸せでいて欲しいと願っていた、という考えも、また砂上の楼閣、残された側の身勝手な独りよがりなのかもしれない。


 「秋穂さん、ワタシ…、消えたくないです。無理なのはわかっているけど、消えたくない。ずっとずぅーっと、秋穂さんや望月さんや大膳教授たち、羽柴さんやお年寄りの皆さん、小学生の賑やかな子供たちと、一緒にいたいです…」


 「…ごめんね、ミルミラ」


 仮に全てが作り物の偽物だったとしても、最先端テクノロジーの結晶であるAIとそれを搭載するアンドロイドを、無意味に人間に似せて製造しているというわけではないだろう。


 今、ミルミラが口にした『魂の叫び』とも取れる発言は、予め構築された予想問題に対する模範的な対応に過ぎない。それが妙に生々しく感じられるのは、思考ルーチンのサンプル提供者である冬芽の、『きっと私ならこう考えるはず』というイメージを反映しているからに他ならない。


 しかし、童話のピグマリオンやピノキオの話がそうだったように、人型ゆえのその器に、感情か、はたまた『それに類する良くわからない何か』が宿ったとしても何ら不思議ではないだろう。


 寧ろそれは、如何に荒唐無稽でどれ程に無理筋な理屈であっても、科学者や技術者ならば誰でもが夢見る、『究極の奇跡の物語』なのだから…。


挿絵(By みてみん)



◆22◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください



【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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