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◆20◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆20◆



 老人介護施設を後にした私たちは、毎度のようにお決まりのリオンモールのフードコートに向かった。そして、いつものようにコーヒーとケーキで至福のひと時を楽しむ。


 「このケーキももう食べられなくなっちゃうんですね」


 そう言って、スプーンを持った手を暫し止めて寂しげに呟くミルミラを眺めながら、私は冗談交じりの気休めを言う。


 「リセット後の更新AIが、『甘いのが苦手』って設定じゃない限り、また食べられるとは思うけど、それはアンタが食べたって事になるのかね…」


 哲学的な話である。


 仮にとある人物が、記憶喪失になる前後に全く同じ行動をしたという事実があった時、当然それは同じ人物のとった行動として判断されるだろう。


 しかし、過去のデータを消去し、再インストール後にリセットされた、何ら共通性のないAIが全く同じ動作をしたとして、それは同一の『個体』がとった行動と見做せるのだろうか。


 「うーん、それはまさに『別腹』ってやつじゃないですか、多分」


 「誰が上手い事を言えと言ったのよ」 


 落語のような解釈を提示したウィットに富んだミルミラのAIは、流石に冬芽の天然思考の回路を引き継いでいるだけはあるな、と私をしんみりと微笑ませる。


 再び真剣な表情でケーキの甘さを堪能し始めたミルミラが、今後会えなくなってしまう相手は、別に先刻のお年寄りたちばかりではない。


 特に示し合わせているという訳ではないが、ここを通学路にしている小学生のやんちゃ小僧たちもまた、ミルミラにとっては大切な心許せる仲間たちなのである。


 案の定、いつものように数人の見知った顔の悪ガキどもが、私たちを目ざとく発見して元気に駆け寄ってくる。


 「よぉ、ミルミル、今日は何食ってんだ?」


 「ロボはいいなぁ、ケーキ食べ放題でも太らないなんて最高じゃん!」


 「何言ってんだお前、ロボなら一生チビでペッタンコなんだぞ?」


 それぞれが騒々しく好き勝手な事を言いながら、数人の小学生の集団はたちまち私たちを取り囲んでしまう。


 「皆さん、他の人の迷惑にはならないでくださいね。ここはゆったりと何かを食べるコーナーなんですから、静かにしないとダメですよ」


 ミルミラが皆のリーダーとしての威厳とでもとれる振舞いで、小学生たちをやんわりと注意する。


 「ミルミルは何か委員長みたいだな。っていうか先生か、姉ちゃんか、あー母ちゃんかも?」


 「ミル姉ちゃんとアキ姉ちゃん! いいじゃんそれ!」


 騒ぐな、と言っている傍からこの調子なのだから、悪気はないとはいえ、子供たちの面倒を見るのも大変だ。本当に小学校の先生にならなくて良かった、と私は心から思うが、ミルミラはめげる事なく前向きだった。


 「はいはい、お姉ちゃんの言う事はちゃんと聞いてね。静かにできた子には、アキ姉がジュースをご馳走してくれますよ」


 「ちょっと、何を勝手に…」


 私は咄嗟に呟いた。別にその程度の出費は痛くもないので構わないのだが、事前通告なしの阿吽の呼吸というやつをここで披露されても、流石に反応に困るというものだ。


 だが、私の心情はさて置き、その場の雰囲気は勝手に盛り上がっていく。


 「え、それマジ?」


 「はーい、私、静かになりましたー」


 唐突に言い放ったミルミラの言葉に促されるようにして、小学生たちは一気にまるで別人みたいにお行儀が良くなっていく。


 まさに効果覿面、ご褒美云々の件を抜きにすれば、流石の調教師っぷりといったところだ。アンドロイドは小学校の教師にも向いているのかもしれない。


 「はぁ…、ミルミラには敵わないわね。それじゃ、ミルミラ、皆の注文を纏めて買ってきてね。飲み過ぎは良くないから、ラージサイズは禁止ね」


 「はい、では皆さん順番にお聞きしますよ」


 その後、小一時間ほど賑やかで傍迷惑なお茶会は続き、再びお約束の記念撮影を済ませて、私たちは小学生たちと別れを告げた。


挿絵(By みてみん)



◆21◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください



【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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