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◆17◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆17◆



 その晩、私とミルミラは諸手続きを両親に任せ、一度自室に戻る事になった。


 私は再び車を走らせながら、心ここに在らずといった奇妙な感覚に陥る。まるで現実感がない夢の世界に、私とミルミラだけが取り残されてしまったかのような感触は、言葉で表現するのは難しい。


 「ワタシ、結局言えませんでした」


 重苦しい沈黙に包まれた狭い車内で、ミルミラがぽつりと呟きを漏らす。


 「ワタシのデータ消去とリセットの話、本当は二人のご両親にお話ししなくてはいけなかったんですよね。そしてきちんとお別れを…」


 「それは言わなくて正解じゃない? この上更にもう一人、娘を失くすなんて話は、残酷過ぎるもの…」


 私はそう答えるが、果たして何が正解なのかなんてわかるはずもなかった。


 「こんな事を考えました。冬芽さんが目を覚まさなかったのは、ワタシがいるからなんじゃないか、って。同じ思考パターンが世界に二つ存在してはいけないんじゃないか。だから冬芽さんが目覚めないんじゃないか、って」


 伏し目がちの視線で、助手席に座るミルミラの小柄な身体が更に小さく縮こまっていった。


 理屈的にはありそうな話ではある。もっとも証明のしようのない似非科学かオカルトかといった内容ではあるが。


 神の与えた命を人間が勝手にコピーしたのなら、もはやオリジナルの存在に価値はないだろう、というのは神様視点ではありなのかもしれない。まぁ、神様とやらがいる前提での話だが。


 「アンタ、AIのくせに随分哲学的な、小難しい話をするわね。アンドロイドでも神様の存在とか、運命論みたいな話を信じてる、ってわけ?」


 「さぁ、どうなんですかね…。神様が創造主なら、ワタシの神様は人間という事になりますからね。さらにその上の上位存在なんて、想像もできませんよ」


 ちょっと考えるような素振りを見せるミルミラは、曖昧に答える。


 「でも、ワタシにとっての神様、つまり人間だって完璧じゃないのは、秋穂さんを見ていればわかります。もし人間が完璧な存在だったら、ワタシたちアンドロイドやAIはきっと要らないでしょう?」


 何やらかなり遠回しな表現で私はミルミラに馬鹿にされているらしいが、事実である以上反論はできない。


 「じゃあきっと、偉大なる神様とやらも、全然完璧なんかじゃないからこそ、人間なんてものを創ったのかもしれないわね」


 「神様もきっと寂しくて、話し相手が欲しかったんですよ、多分」






 やっとの思いで自室に辿りついた私は、着替えもそこそこにベッドに大の字になって寝転んだ。


 身体中から力が抜けていく。緊張の糸が途切れるというのは、まさにこういう状態を指しているのだろう。


 「あー、早速だらしないじゃないですか、秋穂さん。せめてちゃんと着替えてくださいよ」


 「うー、本当に煩いお母ちゃんだわ。っていうか、本当に冬芽に叱られているみたいね…。もう二度と、冬芽もミルミラも私を叱ってくれなくなっちゃうのね」


 ベッドに転がっている屍のような私を見咎めて、早速ダメ出しをしてくるミルミラの声が、何処か鬱陶しくも心地よい。


 「永遠に誰かに叱って貰いたい、っていうのは良くわからない心境ですね。理解し難いです。マザコンですか、マゾなんですか?」


 「ミルミラも『M』で始まるから、ひょっとするとそうなのかもね…」


 投げやりな思いつきで私が返答すると、ミルミラは私の倒れこんでいるベッドにそっと近づいて、端っこのほうにちょこんと座る。


 「秋穂さん、短い間ですがお世話になりました。多分記憶は消去されちゃうと思いますが、きっと忘れません。そんな気がします。それから、ワタシがいなくなっても、ちゃんと規則正しく頑張ってくださいね」


 それは唐突の別れの挨拶だった。ミルミラの誠心誠意をこめた、サヨナラの宣言だった。


挿絵(By みてみん)



◆18◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください



【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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