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◆13◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆13◆



 更に数日後、私とミルミラは、研究施設の別室で行われている、新型アンドロイドの起動試験に立ち会っていた。


 『カテリナ』と命名されたその新型アンドロイドは、ミルミラより若干年上の少女、中高生くらいの印象のボディを持っていた。身体のラインも、思春期の少女を模してふっくらとした丸みを帯びた女性的な感じを受ける。


 メンテナンス中のミルミラと同様のスリップ姿から覗く、敢えて褐色肌を意識した健康的な肢体は、想像以上に艶めかしく魅惑的で、少なくとも現時点ではそういう機能はないはずだが、当然、その手の『産業的分野での需要』にも十分応えられるような仕上がりだった。


 「このコが、ワタシのイモウトなんですね。カテリナちゃん…」


 研究室の壁一面に広がる観察窓に興味津々に張り付いたまま、ミルミラはそんな独り言を呟く。


 アンドロイドの『妹』というのも妙な話だが、まぁ、起動順に姉妹機と認識するなら、そういう事になるのだろうと、私は納得する事にした。


 「カテリナのほうがボディサイズは大型だけど、そういう事になるのかもね」


 「どうしてワタシのほうが小さいのですか? 普通は技術が進歩すると逆に小型化されていくものではないですか?」


 ミルミラはそう疑問を投げかける。その素朴な疑問に答えたのは、一連のアンドロイド実験の責任者でもある大膳教授だ。


 「ミルミラは賢いね。そう、同じ機能を維持するなら、進歩の歴史は小型化の歴史でもある。それは間違いではない。でも、人型のロボット、つまりアンドロイドに関しては、各関節部にかかる荷重とそれを駆動するための出力は、小型のほうが有利になる。だから最初は小さく低出力で実証実験を始めて、次第に大きくしていく方が合理的なのさ。実際の医療や介護、災害救難活動なんかでは、ある程度の大きさがあった方が便利だからね」


 「成程です。つまり、ワタシを拡大したカタチが、カテリナちゃんなんですね」


 ミルミラは納得したように笑顔を浮かべる。姉の威厳なのか、その表情は何処か誇らしげだ。


 「それに、カテリナは将来の大量生産を考慮したモデルで、単機当たりのコスト面や信頼性を重視した設計になっている。つまり、事実上のワンオフ機であるミルミラは、カテリナが今後どれだけ大量生産されても、世界でたった一人きりの「お姉ちゃん」という事になるね」


 大膳教授の説明を遮るように、女性研究員のよく通る声が冷静に起動実験の状況を告げていく。


 「実験機材四号、カテリナの起動を確認。全て異常ありません」


 まだ各種のメンテナンス用コードが全身の様々な箇所に接続されたまま、カテリナは傾けられた専用ベッドからゆっくりと起き上がる。


 瞼を瞬かせてぎこちなく左右に首を振ると、ガラス越しに自分を見つめているミルミラの存在に気がついたようで、小さく首を傾げた。


 「ミルミラ、カテリナの事が気になるなら、中に入って挨拶してくるといい。ちゃんとお姉ちゃんらしくお願いするよ」


 「はいっ!」


 大膳教授の提案を受けて、喜び勇んで鉄砲玉のように駆け出したミルミラは、慌ただしくガラス扉の向こう側に進んでいった。


 そしてミルミラは、目の前の自分よりひと回り大柄な『生まれたての妹』に向かって、にこやかに笑顔を浮かべながら語りかけた。


 「こんにちは、カテリナちゃん。ワタシはアナタのお姉ちゃん、ミルミラです。初めまして、そしてよろしくね」


 「ミルミラ、カテリナ、オネエチャン…」


 カテリナはまるで不思議なものに出会ったかのように小首を傾げながら、ミルミラを見つめていた。


 「はい、そうですよ。お姉ちゃんです」


 「ミルミラ、オネエチャン…」


 ミルミラが大きく頷くと、カテリナはその『姉』の両脇に手を伸ばし、優勝カップを掲げるような仕種で、ミルミラを軽々と持ち上げてみせた。


 「あっ! ちょっ!」


 珍しく慌てふためくミルミラの様子に、その場にいた皆が思わず笑い声をあげていた。これではどちらが姉なのか、判断できないだろう。


 立場は逆だが、幼い頃の私が初めて冬芽に出会った時も、同じような反応をしていたのかもしれない。ふと、そんな気がした。


挿絵(By みてみん)



◆14◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください



【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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