表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/54

◆12◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆12◆



 別の日には、私たち二人は老人養護施設を訪れ、本来のアンドロイドの開発目的である介助の作業に従事していた。


 どれほどミルミラが愛くるしい外見に作られていても、実際の用途はそういった華々しさとは無縁の、リハビリの補助や日常生活の介助といった地味すぎる重労働である。


 当然ながら、ミルミラのカタログスペックは、戦場のベテラン兵士か土木現場の作業員かというレベルでの身体能力を持っている。それもあって、周囲を過剰に威圧しないような外見に設定されているというのもあるだろう。


 勿論、多数の医療現場で実数として女性の看護師が多いように、母性と慈愛の象徴としての少女的な外見というのもあるだろう。


 実際問題、高圧的な態度の中年男にあれこれ『指図』されるのと、孫娘のような少女から上目遣いに『お願い』されるのでは、どちらがより効果的か、という話なのだから、結論は言うまでもないだろう。


 「おぉ、ミルミル、相変わらず元気だねぇ」


 「はい、ワタシはいつだって元気ですよ。羽柴はしばさんも、今日はお元気そうで何よりです」


 電動車椅子に座ったままでゆっくりと館内を移動している、羽柴という老人に声をかけられ、ミルミラは笑顔で愛嬌を振りまく。


 この施設の多くのお年寄りたちは、先日の小学生たちとは別の意味で、ミルミラに親しみをもって接してくれている。


 本来あるべきアンドロイドの使命というか、目的というか、そういったものに的確に順応しているのだから、ミルミラは優秀という事になるのだろう。私の荒れた生活のフォローが彼女の主任務ではないのだから、評価すべきはこちらの成果なのである。


 「ミルミルを見てると、孫を思い出して元気になるわ。いつも来てくれてありがとうね」


 別の老婦人からも感謝の言葉をかけられ、ミルミラは照れくさそうな仕種で笑顔を浮かべる。


 「あっ! ちょっ!」


 次の瞬間、ミルミラの表情が一気に驚きに変わる。


 「こら、ダメじゃないですか、そういう事をされたら、アンドロイドでもセクハラなんですよ?」


 どうやら老人男性の一人にお尻を触られたらしい。当然ながら大いに問題のある行動には違いないのだが、相手が機械なら構わないだろう、という心理になってしまうのもわからなくはない。


 「いいじゃないか、減るもんじゃなし」


 「減るんですよ? 簡単に触れないからこそ、有難みがあるんです。毎度毎度ホイホイ触られては、貴重性がぐぐーんと減っちゃうんですよ」


 機械のお尻『を模したボディ形状の膨らみ』がどれほど貴重なものなのかはわからないが、実際、数百万円クラスの貴重品である事は事実だ。人間の少女のお尻とは違う意味で、おいそれと触れていい代物ではない。


 「ロボのくせに、お前さんには恥じらいってもんがあって良いなぁ。うちの娘も孫も、恥じらいどころか、儂を睨んで引っ叩いてくるってもんよ。スキンシップも何もあったもんじゃない」


 「他の女の人の嫌がる事は、絶対しちゃダメですよ? 天国に行けなくなっちゃいますからね。せっかく天国に行ったら触りたい放題なんですから、もうちょっとだけ我慢ですよ」


 「ほう、天国は触りたい放題なのか、そりゃ初耳だ」


 老人はそう言って豪快に笑う。私もそんな話は初耳だ。いったい何処から出てきた話なんだろうか。


 「天国に行くのは人間の特権なんですから、無駄にしちゃダメですよ」


 確かに天国などというものがもしあったとしても、アンドロイドであるミルミラには無縁の場所なのだろう。データは無に還れば無でしかないのだ。


 「それじゃ、あの世ではお前さんには会えんのか。ちょっと寂しい話やなぁ。今のうちにたっぷり触って、あの世の土産にするとしよう」


 「ダメです!」


 老人の軽口に呆れたようなミルミラの受け答えが可愛らしい。まさに孫娘とお爺さんの会話だ。


 いつの日か、数多くのアンドロイドたちがこのような日常を繰り広げる事になるのだろう。私たちは今、その第一歩を歩んでいるのだ。


挿絵(By みてみん)



◆13◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ