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◆11◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆11◆



 淡々とした日常の中で、着々とミルミラの経験値は溜まっていく。勿論、ある日突然、レベルの上昇告知のファンファーレが鳴るなんていう事はないが、傍から見ても、恐らく当人にしても、実感は伴っていると思われる。


 元々が人間の苦手な作業、気の向かない作業、過酷な作業などに従事するために作られたのがアンドロイドである。医学的な治験の分野以外では、それこそ何でも人間代わりを務め得るだろう。


 研究施設での退屈な雑用でさえ、たった一言の文句さえ言わずに粛々と片付けていく。しかも高効率と正確性を兼ね備えつつ、人間よりもかなり時間短縮が期待できる。


 人間社会が、とりわけ日本社会が高齢化を問題視して久しいが、労働力不足を自動化して無人で補うには限度があるだろう。


 人間というものは感情の生き物である。心がある以上、安心感や満足感、幸福感を得たいと願い、そのためには他者との関係性や接触が欠かせない。


 であるなら、自動化を担う機械たちの当然目指すべき方向性として、容姿や表情を直接観察でき、言葉の抑揚や微妙な手の仕種などで意思を表現してくれる存在である事は極めて重要になってくるだろう。


 故に、機械でありながらコミュニケーションが可能な体のいい奴隷代わりとして、アンドロイドが寛容をもって人々に受け入れられ、便利に使い倒されるのも納得がいくというものだ。


 何しろ、彼らは現状の一切の道具、工具、器具から乗り物に至るまで、ありとあらゆる物を、無加工のままで人間同様に器用に使いこなす事ができるのだ。更に必要とあらば、人間以上の力強さと精密作業を同時に実行できるだけの能力を秘めている。


 それに加えて、不平不満を言うでもなく、贅沢な食事も必要なく、深刻な病気も怪我もない。挙句の果てに、労働の対価を過剰に要求する事さえないという、まさに万能なる完全無欠の存在なのだ。


 私の目の前に座って黙々と作業を続ける、小学生か中学生かといった趣の機械仕掛けの少女でさえ、その気になれば私を一捻りで制圧、いや、研究施設そのものを丸々支配下に置く事さえ容易いだろう。


 何処ぞの高名な科学者が『ロボット三原則』などという、人間にとって非常に都合の良すぎる理屈を並べてくれたおかげで、最低限の倫理回路は世界中の全てのアンドロイドに搭載されてはいるが、それさえも気休めにしかならないだろう。


 十二分に高度な教育を受けたはずの、何不自由ない生活を送る分別のついた『いい大人たち』が、ある日突然に道を外したりするのだから、アンドロイドにそれを防ぐような『教育』をするのは不可能に近い相談だろう。


 結果的に、『たかが人間風情が…』などと彼女たちに思われても仕方がない程度には、我々は致命的に無力なのだ。


 「どうしたんですか、秋穂さん。さっきから手が止まっていますよ?」


 「あー、いや、うーん…。アンタさ、夜中にいきなり私を襲ったりしないわよね…」


 「はぁ、何ですか、それ? ワタシにそんな機能はないですよ? 秋穂さんは襲われたいんですか?」


 途端に呆れ顔になってまじまじと私の顔を覗きこむミルミラの瞳が、まるで変質者を見下すような視線を投げかける。


 「あ、ちが…、そういう意味じゃなくて…」


 「とにかく、今日中にこれを終わらせないといけないんですから、秋穂さんもちゃんと手伝ってくださいね。サボりは厳禁です」


 そう言って再び手を動かしはじめるミルミラは、本当に良くできた娘、賢すぎる妹のような存在だった。


 ご主人様である私に対して、『手伝え』とか『サボるな』とか、まるで主従が逆転したかのような錯覚に陥る態度である。だがそこに悪意は欠片も存在しない。


 「はいはい、ホントにちっちゃな母ちゃんだわ…」


 私も再び退屈な単調作業に戻りながら、そうぽつりと呟いた。


挿絵(By みてみん)



◆12◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください



【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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