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◆10◆

【まえがき】


 「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新予定の、連載形式の小説作品です。

 2025/8/11より連載中です。


【作品のあらすじと登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n7496ks/1

◆10◆



 次の日、私とミルミラは、動物園やら水族館やら美術館やら博物館やらで、ひたすら楽しい時間を過ごしていた。


 これも立派な教育課程の一環であり、幼年期に不可欠な所謂情操教育というものである。もっとも、アンドロイドに対する教育に、果たしてそんなものが必要なのか、という疑問は残るのだが。


 何にせよ、無邪気に笑うミルミラを見ていると、保護者兼監督者という立場を忘れて、私も十分な幸福感を味わう事ができた。


 こういった何でもない日常の出来事が、将来的にミルミラのようなアンドロイドが実用化された場合の、利用者側の心の癒しになっていくのだろう。そのように考えれば、今のこの時間も決して無駄ではないはずだ。


 「今日はいろいろ見ましたね。データベースで検索するのと、実際に見たり触れたりするのとでは、やっぱり何か違いますよね。不思議な感覚です」


 確かにそうであろう。このご時世、現代のネット社会では、ありとあらゆるものがデジタルデータとして保存され、世界の何処からでも自由にアクセス可能な状況にある。


 小中学生は勿論、幼稚園児からご老人まで、いつでも誰でも様々なものを見たり聞いたり体験したりできるのだ。当然、デジタル構造の極致ともいえるアンドロイドにとっては、普通の人間以上に容易くアクセスが可能なはずだ。


 だが、実体験の伴わないデータの羅列は、果たして真の知識と呼べるのだろうか。個人的には甚だ疑問である。


 例えば、街角で良く見かける愛犬の散歩風景について考えてみる。


 ネット上には多種多様なイヌ科の生物が写真付きで解説されている。しかしそれはドーベルマンだったりチワワだったりであって、愛すべきポチでもハチでもないのだ。


 ましてや実際に犬に触れあって、吠えられ、舐められ、跳びつかれ、場合によっては噛みつかれたり、散歩用のリードごと引きずられたりしてこそ、自分自身の身体全体で『犬』を体験する事で初めて得られる、データ化できない何かを得られるというものである。


 「そうね、実際の世界は狭いようで広くて、そして広いようで狭いものよ。いろいろな人がいて、いろいろな動物がいて、変な機械や建物、奇妙な風景もいっぱいあって、意外と人生飽きないものよ」


 私はそう答えながら、ミルミラの『人生』について考えてみる。


 本来なら、機械であるアンドロイドは無限の寿命を持っているはずだ。しかし、実験機材にすぎないミルミラは最長五年でリセットされる運命だ。


 いわば、この世に生を受けた瞬間に余命五年と宣言された新生児のようなものかもしれない。いや、寧ろリセット当日のその運命の瞬間まで、何事もなく健康的に過ごせるのだから、考えようによっては収監された死刑囚のような状況なのかもしれない。


 そこに人間的な恐怖の感情があるかどうかはわからない。そのような感情があるのだとしたら、彼女たちにとって、私たち開発側の人間は血も涙もない存在に映るかもしれない。


 「うーん、ワタシが量産されたら、そういう経験も個体間で共有できるんでしょうかね? 今のワタシは、自分で経験したものの他には、僅かに冬芽さんの知識と経験があるだけですけど…」


 「その時は…」


 私は言い淀む。


 ミルミラを量産する事は物理的には十分に可能だろう。勿論、採算性の課題もあるだろうが、千単位、万単位で大量生産できるなら、それさえも解決可能な問題だろう。


 しかし、その量産型のミルミラには、正確に言えば、量産されたミルミラの各個体には、今のミルミラの記憶データはほぼ引き継がれないはずだ。徹底的な情報精査の末、『不要なサンプルデータ』である冬芽の冬芽たる部分に関する情報は、綺麗さっぱり削除される事になるだろう。


 その時のミルミラは、果たしてミルミラなのだろうか。いや、恐らく機体固有の個体愛称すら『ミルミラ』ではないかもしれない。


 「いつか、沢山のワタシの姉妹たちと一緒に、大好きな『困ったお母さん』の話ができたら嬉しいですね」


 その時が訪れたら、彼女たちの共通記憶の片隅に、私のデータが僅かでも残っているのだろうか。


挿絵(By みてみん)



◆11◆ に続く


ご意見ご感想イラスト等もぜひお寄せください


【あとがき】


●ご注意

 この作品、「ミルミラ~ココロとキオクの輪舞」は、原則的に毎週月~金曜日の朝10:00に更新する、連載形式の小説です。


 初めまして&こんにちは、真鶴あさみです。


 本来はSF系作品を中心に創作活動中の私ですが、前作「よよぼう」が学園ものだった事もあり、ハードなSF作品に急に路線変更するのは厳しいと感じ、中間的な色合いの本作品を始める事になりました。


 現時点(2025/8/9)で既に最終話まで執筆完了しており、主な修正も終わっています。挿絵が出来次第、順次連載していく予定ですので、よろしくお願いします。


 今回の挿絵は自作のAIイラストになっています。「PixAI」というサイトで作成したもので、未採用イラストやプロンプト(呪文)、LoRA(補助用雛形)もそちらと、同じくAI画像生成投稿サイト「ちちぷい」で公開予定です。


 ご意見ご感想、イラストなど、お寄せくださると嬉しいです。



■「PixAI」(https://pixai.art/ja/@manazuru72000/artworks)、及び「ちちぷい」(https://www.chichi-pui.com/users/user_uX43mFCS2n/)にて、AIイラストを試験公開中。「ミルミラ」「よよぼう」関連以外もあります。

「PixAI」では「ミルミラ」の主要キャラのLoRAも公開予定です。


■個人HPサイト「かれいどすこーぷ」(https://asami-m.jimdofree.com/)に掲載予定ですが、ほぼ放置中


■TINAMI(http://www.tinami.com/)に掲載予定ですが、絶賛放置中


■X(旧Twitter)もあります(@manazuru7)

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