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切り離された胴と首が転がる空間に漂う血のにおい。
剣に伝わる、たった今切り落とした首の感触。
異様に静寂で研ぎ澄まされた空気。
前世の記憶のいち場面として捨て置くことは、繰り返し見るにつれて不可能となった。
あの日を迎えるまでは、俺は王として上手くやっていたはずだった。
彼さえ傍にいれば何もいらない。
王なんてなりたくなかった。
国のことなんかどうでもいい。
宰相が王冠を持って俺のところにやってきたのは、彼と共に国を出る手はずを整えた直後だった。
彼と共に居られるなら、王になってやってもいい。
以来、本当の気持ちを隠して王を演じた。
あの日までは。