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苛立つ。
俺を見向きもしない彼にイライラが募る。
相変わらず見続ける悪夢から逃れることができる、ただひとつの安全な場所。
永遠の避難所になってくれるはずの彼は、ひたすら俺を避ける。
そのくせ、他のアルファとは親しくしている。
愛しいはずなのに憎しみが湧いてくる。
ならば、力ずくで手に入れるのみ。
己の安寧のためならば、何だってやってやる。
彼が受け入れてくれるまで待とうと考えていた。
しかし、時間はない。
夢の中の首は、あと1メートルまで近づいてきている。
幸福は己の手で掴み取るのだ。
彼を迎え入れるための巣を用意しよう。
未来永劫続く絆で結ばれる、彼との愛の巣を。
完全体の運命の番になるのだ。