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オレンジ色の霜月

「ちょ!マジさみーんすけど!」

「あ、おはよう。体調どうよ?」


半野外な街の整備工場。入り口が全開なバラックの中で適当に腰掛けてたむろしている奴らに声を掛ける。


先週、風邪ひいて動けなくなってた。

一人暮らしだとこういう時に不安になる。


「あー、まあなんとか。絶!好!調!とは言わないけど、それなりですね」

「一人暮らしだと大変だろうに」

「あ、そいつ女いっぱいなんで、心配無用っすよ?オヤジさん」


オヤジさんは屈んで、バイクをいじっていた。


元ワークスのオヤジさんは俺のレースの師匠だ。

「会社の仕組み」にぼやいて、不貞腐れていたときに評価実験部の叩き上げ課長だったオヤジさんに出会って、一緒に仕事していく中で、その背中に惚れた。


古いって言われても「ダメなものはダメ」と立場に関わらず言う。もちろん、相手の立場に合わせて伝える場所や言葉は変えるが、価値基準はしっかりしていて動かなかった。


気さくとは言えないが、しっかりと「芯」のある「大人」であり、知識や経験を惜しみなく伝えていく姿は「先生」だった。


「教えることで学ばして貰っている」「気が付いてないだけで、お前からもいっぱい刺激を貰っているし、学ぶことがいっぱいなんだよ、ロク。ありがとな」


そんなオヤジさんを慕って、集まった友人達。

オヤジさんがワークスの評価技術屋をやったあと、定年退職して街の整備工場で働き始めたのを聞いた俺たちはオヤジさんを中心とした有志連合を作った。


「オヤジさん、いい仲間がいるね」


そう言って貸してくれた整備工場の一角から始まった俺たちは、今ではワークスのすぐ下の位置が定位置になるほどだった。


「あの時、ロクが疫病になったときの社内の絶叫はドドンパを超えましたね」

「絶叫マシンで声がでないだろうが、それじゃ」

「いやー、危なかった。社内中の女性が家を探しだそうとしましたからね」


「独身から既婚まで」「女性から男性まで」「いやいや、新入社員からシニアパートナーまで」「あー、あのアイドル好きの新しい役員のおばさま、総務に聞いたらしいですね」「なんだよそれ、知らねー」


あんだと?俺も知らなかった。

見舞いというか、荷物を届けてきたのはいつもの主任だ。あの子は俺に興味がないし、ビジネスライクだから、非常に良い。


「まあ、なんにせぇー、寒くなってきたから気をつけてな」

オヤジさんが振り返りながら立ち上がって、すれ違い様に俺の肩を叩いた。にっ!と笑い返す。


「オヤジもな!」

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