間話:観月会
「ほら」
「ありがとうございます」
今日は新月、中秋の名月の裏側です。
星が綺麗に見えるからと、シロさんとお庭で観星会をしています。
お庭は中央前方に家があり、裏庭中央に少し小さい、だけどとても温かく感じられる木があります。
その木のそばでバーベキュー中です。
「こういうのやると、ほんと鍋奉行だよね」
「肉いらないな?」
「えー。じゃあ、仕切り屋?」
「いってっこと、変わんねーだろ!!」
「あ、ごめん、火かき棒貸してくれる?」
「すいません」
「いや、ちょっと火力強いよね」
今回もご友人たちさんがやってきましたが、それぞれにさらにご友人たちを連れて来られました。
さらにシロさんのお子様まで来ています。
「はじめまして」
「あ、はい。はじめまして」
なんと私とほぼ変わらない年齢。
灰色うさぎさんのグレーさは、留まるところを知りませんでした。
「うちの親父のどこを気に入って下さったのですか?」
「なんでしょうね。優しいところですかね?」
「正直言って、あの人怖いでしょ?すぐに黙るし」
「まあ、でも私の話をきちんと聞いてくれるんで。優しいですね」
シロさんのご家族事情を教えてもらってはいましたが、いざ当事者とお話するととても緊張します。ちょっとお母さんと呼んでもらうにはお互いに困惑しかありません。
「ん?お前ら食べてるか?皿出せ、皿」
「食べてます」「俺も」
「あはは、そっちの2人の方がお似合い〜」
「いい度胸だ」
「冗談、本当に冗談」
「あ、すいません。肉ください」
「ん?ああ、ほら」
素晴らしい空気読み感。咄嗟にお皿の上にあったお肉をパートナーさんに渡して、止めに入りました。あの方も心読みさんでしょうか?
そうして、集まった方々と語らいながら、気がつくと辺り一面が星になっていました。温かい木を背に座っていると闇が炎と星あかりを区切るキャンパスになった一枚絵の世界に入り込んだようです。
何故か「シロさん」みたいな全てを受け止めてくれる優しい木の温もりに、そのままこの意識を預かって貰いました。




