ターキッシュコーヒーの占い
「・・・・」
沈黙って痛い。
シロさんが口をきいてくれません。
ずっと、そっぽ向いてます。
何も言わずにお家まで帰ってきました。
「シロさん」
何も言わなくても、聞こえてしまったのでしょう。
ずっと一緒にいたいと言いながら、別の人にときめいてしまったことに、とても罪悪感を感じています。
「シロさん・・・」
ベージュ色のソファの上で黙っているシロさんを後ろから抱きしめたまま、じっとしています。
本当に驚きましたし、偶然です。
でも、シロさんを裏切ってし
「お前は悪くナい」
振り返ったシロさんが抱きしめ返してくれる。
「ごめン。整理が付かなかった」
「シロさん。ごめんなさい」
「気にすんナ。別に何もなかったんだロ?」
人型に戻って、そのまま押し返えされてしまいました。ぎゅってしてくれます。
「油断してた。時間までまだあると思っていた」
「はい。私もです」
「そいつ、どんなやつだった」
「ワイルド系なイケメンさんでした!同業他社の大手のエンジニアさんです」
「・・・俺もむかしはイケメンっていっぱい言われてた。いまでもご近所のマダムには好評なんだ」
「分類が違うイケメンでした。謹んで訂正させて頂きます」
こいつ、とおでこをくっつけて、ぐりぐりするのはやめてください。うさぎ姿なら「so cute!」な可愛いうさぎさんですが、人型だとシロさん、月が似合うイケオジなので、ほんのちょっとだけどうしたらいいのかわからないのです。
「でも、あの人、近づくどころか握手すらなかったです」
「・・・そうか」
シロさん。心臓がきゅっとして、シロさんの首筋に頭を埋めます。
「大丈夫。ずっと一緒にいるためにも、「選定」が始まったらとっとと済ませよう」
まだ時間はいっぱいあるからさ。
柔らかな笑顔をくれる、温かくて優しい月明かりのようなシロさん。この人のことだけでよかったのに。
だけど、あの出会いから、どこか陰のある太陽を感じさせるロクさんのことが、脳裏から消えないのです。




