壁に飾られた肖像画
「へー。じゃ、はじめまして」
なんでしょう。この無駄に太陽が似合うイケメンは。
笑顔が眩しい。ちょっと、鬱陶しいぐらいに全力でかっこよさが振りまかれています。
短髪黒髪。男性らしい顔立ちです。甘さはあまりなく、全体的にすっきりした印象。
背もとても高い。屈んで私に目線を合わせてくれるだけで、心臓が耳の真横にきたみたいです。野太い系の笑顔。
「あ、わりい。まだ時間じゃないんだけど、たまたまなんかこっちの方な気がしたんだよね」
全面ガラスの吹き抜け。秋の柔らかな日差しが差し込む硬質で温かい石灰石のカフェテリア。
「というか、どうやってここに!?」
お巡りさん、こっちです!!
「え?普通にここ、うちの会社のカフェなんだけど」
そうでした。今日は業界団体のセミナー。会場は持ち回りで各社を回っています。疫病が手を変え品を変えて流行する度に中断していたので、久しぶりに他社様にお伺いしました。
うちより大きな会社様。カフェも綺麗だし会社内にスタバがあります!休み時間にうきうきしながらケーキを食べていたら、顔を覗き込まれました。
そう、もう1人は、まさかの同業者さんでした。
「あ?いや、別に俺はメカ屋だから同業ではないかな?バッグオフィス系の仕事って難しそうじゃん?」
「人の気持ちが読めるってあなたもうさぎさんですか?」
勝手に正面に座ってきました。
だけど、なんだろう?この人の笑顔、怖い。こんなに楽しませてくれようとしているのに。
「あー、ごめん。怖いよな。まだ会う予定もないのに、今の恋人さんとの関係壊す間男登場とか」
悪いな、とバツが悪そうに謝ってくれるこの人はすごくイケメン。男が惚れる男、みたいな一本気な人みたいです。あり得ないぐらいに「いいオトコ」。
謝ってくれるこの人を見たこの会社の皆さんに刺されないか不安になってきました。
「すいません。突然だったので」
「いや、こっちこそごめん。あと俺は猫だな。とらねこ。直感はまず外れないし、透視ができる。見れるのは壁の向こうだけじゃなくて気持ちや未来も見れる」
「あとはチャームですか?」
「そうそう。ごろにゃーんって言えばチュールがわんさか降ってくる」
招き猫の手しながら「なんてな?」と言ったこの人がもうひとりの「運命の人」。明るい笑顔と爽やかで。影があるから光が美しいことを教えてくれた人。




