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月色のシャンパン

「ああ、別に簡単なつまみ的な準備でいい。必要ならケータリング取るから」

「お店に行きます?」

「いや、特別な準備とかする仲じゃないんだ。友達が家に来た、ぐらいでいい」

「難しいラインですね。私ならお店に行っちゃうので」

「あー、まあ、いつもの夕飯程度で頼む」

「特別な準備はいらないって感じですね?」

「ああ、うん。頼んだ」


まさかのシロさんからの「お願い」。

ちょっと、頑張って「だから!頑張んねーでいいから」

「じゃあ、ぼちぼちと頑張ります」


「な、こいつかわいいだろ?」


シロさんは完全に酔っています。

あまりシロさん、お酒強くないんです。本当は私の方がお酒は強かったりします。


スープは好評でした。

「これ、すっごく飲みやすい。疲れた時に良さそう」

「風邪引いた時に飲みたい」

「コンソメタイプのスープも美味しいんだ」

そっと自慢を口にするこの人に、思わず照れてしまいます。


「・・・っぶはっ!?あはは!!惚気?!」

「・・・くっ、ごほごほっ!!」


お2人同時に吹き出しました。


「ぶはは!あなたが若い子にくびったけとか、あーおかしい。ぷっ」

「ごめん。あのね、この人、悪気はないんだ」

「うっせ!!笑うな!!」


本当に仲良さそうです。釣られて笑ってしまいます。

「気にしてません」「そう?無理しないで言ってね」


次はメインディッシュ、というかシメの五目ごはんなのですが、お腹空いてなさそうです。


「そうなんだよー。結構、食べ過ぎた。君の料理、手料理だなぁって」

「美味しかった。ありがとう」

「なら、お土産におにぎりにしますね」


ちょっと、席を立っておにぎりを作りに行きます。


「で、あの子、どうするつもり?」

「人聞きが悪いな。どうこうもねえ。ともに生きていく」

「少し調べたんですけどね」

「頼んで悪かった。ありがとう」

・・・

「ふーん。もうひとり、か」

「前の時もそうだった。あいつにはもうひとりいた。だからな」

「どうやってわかったんですか?」

「あいつの魔法、望む未来に至るすべ、やり方を知る魔法なんだ。だから、確認した」

「代償、高かったんじゃない?」

「まあな。あいつがそれなりに負担してくれたから、これで済んだ」


心臓の上の小さなしるし


「あの子が手に入らなかったら、死ぬってかなりリスキーじゃない?」

「あいつとは縁が切れる。なら、あいつがそれを知ることはない」

「バカですか?」

「まあな。かっこいいだろ?」


・・・

お土産用のおにぎりは用意出来ました。

あとはデザートでしょうか。


今夜はチーズプレートに手作りの葛切りです。

葛切りは作る手順は簡単ですが、練り上がるタイミングが難しいのです。白色から透明に変わる直前、7割ぐらいで火から下ろします。余熱で透明まで練り上げて冷やして完成です。


「手伝いにきた」

「あ、すいません。ありがとうございます」

「これなに?」

「悪いな、ひとりで準備させて」

「葛切りです。いえ、みなさんといて楽しいです」


シロさんが言っていた「みんなと過ごす楽しさ」。

広がる「友達」。


とても楽しいです。

ありがとう、シロさん。

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