導きのシロうさぎ
あと、何回、この満月を見られるのだろう。
オレンジ色から白色に塗り変わる満月。
私に魔法が使えたら、どんなシナリオなのか、結末までの選択肢を見せてほしい。
「結果なんて、やってみなきゃわかんないからいいんだ。だから、がむしゃらに頑張れるし、我慢もできる。そうやって生きるって、大変だし見た目かっこ悪いかもしれないけど、俺はそうやって生きてる奴がかっこいいって思っている」
「ぶー。結果が不明確なのは今どき古いです。根性論で人は動きません」
「今どき、じゃなくてそれ、お前の気持ちだろ?一般化はよくないぞ?結果、じゃなくて目標って考えたらどうだ?」
「目標面談みたいです」
「長く生きていれば、みんな思うことは一緒なのかもな」
ほら、と抱き寄せてくれるシロさんと「生まれ変わる月」を見ています。
「このアウトドア用の椅子、かなりいい感じですね」
「だろ?2人で座るからさ。ちょうどいいサイズ探したんだ。今の時期だと虫除けスプレーだけだとちょっと頼りないから、高さが欲しかった」
「前の椅子はゆったりとしたひとり用ですからね」
「うさぎ姿は身体的には楽なんだけど、こういう時はやっぱカッコつけたいじゃん?」
ちょっと怖い顔になってますが、こういう時のシロさんは照れてるのだとわかってます。
「あー、まーその。綺麗だな」
「はい。月が綺麗ですね、シロさん」
「ああ、まるでお前みたいだな」
な!?まさかの返しが!!
「ん?どうした?顔、真っ赤じゃん?」
やられた。く、悔しいですが、やられてしまいました。とってもいい笑顔のシロさんは楽しそうに私を引き寄せながら、倒れ込みました。シロさん、重くないのか、不安になります。
・・・さっき、シロさんお手製の肉じゃがをいっぱい食べてしまいました。これが、ジャガイモはほくほくだし、しゃきっとしたインゲンに小さめに切られたにんじん、脂身多めな豚肉がご飯ドロボウな一品です。
「豚肉は予め、炒るんだよ。その油でにんじんとジャガイモを炒めておく。にんじんが小さいのはお前が食べないからだ。出汁はしっかり取ることで塩分を減らしても味があるし、塩が薄いからこそご飯が進む、ってお前、肉だけ食べようとしてただろ!!」
「いやー、お肉美味しくて。つい」
「野菜食べろ!」
「あ、でもきょうの野菜炒めはおいしかったです」
「あれは鶏ガラスープで包む炒め煮だからな。肉の味しないとお前の食いつきがよくないし」
「いつもありがとうございます」
「どういたしまして、お姫様」
静かな夜に、2人きり。
「これだと、満月、見られないんですが」
「ほら、こうしたら俺しか見えないから不安にならないだろ?俺はお前みたいな月を見ながら、お前を感じてる」
周囲を明るく照らす月は見えないけど、上機嫌なシロさんの心臓の音は真っ暗な夜陰の中でも導いてくれる合図に感じて、ゆっくりと目を閉じてみる。
ずっと、この人と一緒にいたい。
だから、シロさんと一緒にいる結果が欲しいのです。




