取り戻した永遠
「おい!待て!」
なんでこんなに危なっかしいんだ!
「大丈夫ですって!・・・あー・・・」
ぼちゃん
言わんこっちゃない。やっぱり転んだか。
「お前、毎年、池とか川で何人死んでると思ってんだよ?危ないって言ったらあぶねーの」
水面から引きづり上げるとぶーたれた顔してる。
仕方ねー。膨らんだ頬を突く。
「ぷっ。って、何するんですか!?」
「バカ!怒ってんのは俺だ!お前が怪我したらどうすんだよ!」
全く、人の気も知らないでやめろよ、たく。
こいつが「もうすぐ初夏!なので棚田が綺麗なはずです!」とか、随分と不思議なチョイスをするから知り合いの農家に頼んで見に来た。
確かにすごく綺麗だ。秋には一面金色だろうが、今の季節だと豊かな緑色が青い空に揺れている。
「きれー」
「ほんとだな」
太陽の下で笑っているお前は綺麗だ。
こんな現実感のないお前を見ていると、過去の記憶が視界を掠める。
ずっと、どこか遠くを眺めていた「あいつ」。
どうにかしたかった。一緒に逃げたかった。こうして笑い合っていたかった。
だけど、そんなこと出来る力も何もなくて。
その最期まで、ずっと「あいつ」を見ていた。
「あ、あっち、なんかありますよ!」
「ん?あ、おい、走るな!このあたりは用水路とかあるんだ!!」
服まで濡れたこいつを、着替えさせるために借りた家まで戻る。全く。落ち着きがないやつ。
ん?ばーか。そんなことで嫌いにならねーよ。心配はするけど。だったら、心配させんなよ。
「シロさん?」
「風邪引くから、早く着替えこい。怒っているけど、お前が心配なんだ。わからないか?」
抱きしめて、おでこにキスして終わりにしてやる。
少し遅れて抱きしめ返してくるお前が「今の俺」には1番大切なんだ。だから、不安そうにするなよ。
「なに?脱がせてほしい?」
「違います!着替えてきます」
耳元で囁いてやれば、さっさと消え「きゃー!!」
次はなんだ?
「どうした!!」
「でっかい蜘蛛の巣が!!」
仕方ない。俺の大切なお姫様を助けに行きますか。
あーあ、楽しいな。マジで。




