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平穏なよろこび

なんか、どっかで見たことある気がするけど、よく思い出せない。


「なんだよ?どうした?」

「もう、仕事中です!」

「でもお前、携帯いじってるし。ヨギボーに座ってるし」

「・・・休憩は大切です」


ちょっとだけ、休憩していただけです。

シロさん家は広いし、家具も素敵だし、ぬくぬくしやすいのがいけません。


「俺様がいれば、世界中どこでもテレワーク!」

「会社のVPNに入れれば大丈夫だとは思いますけど、普通に出社日あるんですっ!」


無駄にふわふわな胸元を強調しながらガッツポーズを決めるグレーなうさぎのシロさん。


「もちろん、送り迎えしてやル」

フフンと鼻息荒くも、勝ち誇った感じでドヤってます。


「シロさん」

かわいい。つい、むぎゅっとしてしまう。


「だからずっと、一緒ナ」

急にスリスリとキュリンされるとまず負ける。あったかくて、やわらかい。


・・・隙あらば膝に乗ってくるうさぎさんによるテレワーク妨害な未来が見えます。


「オシゴトアリマス」

そうです。とりあえず、頑張ってシロさんを引き離します。くっ、手がシロさんの艶やかな毛並みから剥がれません!なんという魔法!


「秘密保持からもテレワーク中はシロさんに会えません。シロさんだってお仕事あるでしょ?私がどっちを選ぶかわからない以上、もう1人がめちゃくちゃ貧乏でどうしょうもない人だったら私が仕事してないとかあり得ない訳でして」

「現実的でドライなオマエは嫌いじゃねーけど、もう俺でいいジャン?俺と一緒にいろんな場所行ってサ。うまいモん食ったり、友達つくってサ、いっぱい話をしテ、いろんなことにチャレンジしようゼ?綺麗なものをいっぱい見せてやル。ずっと一緒にいヨう、死が2人を分つまで。死んでも俺にはお前だけダ」

「シロさん。私はシロさんが後悔した人じゃないんです」

「わかってル。アイツのことは終わったコト。病気でお前が好きになったのはそうだと思ウ。けどサ、それでも、コノ気持ちは嘘じゃない」


自分のハートを小さな指で指しながら、こういうときに限って、真面目に真っ直ぐ私の目を見て話すシロさんはズルい。これでは何も言えません。


「お前のハートが知りたい。聴くんじゃなクて、聞かせてくれヨ」

そっと、私の心臓に左耳を当てる愛しい人。


「私もシロさんと一緒にいたいです。出来るだけ。前のことは知りませんが、今のシロさんが好きです」

「俺も、今のお前を愛していル」

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